起業で必要な許認可とは?許認可事業の「一覧」と「手続き」のまとめ
事業内容によっては、事業を始める際に「許認可」の手続きが必要な場合があります。そこでこのページでは、具体的にどのような手続きが必要なのかという基礎知識と、許認可が必要な主な事業を一覧にまとめました。
起業を検討している個人事業主の方や会社設立を検討している方は、自身が始めようとしている事業に許認可が必要かどうか確認しておきましょう。
目次
許認可とは?
許認可とは、警察署や保健所、都道府県などの行政機関に対し、申請して得ることができる許可等を指します。
事業を行う際にも許認可が必要となることがあり、そうした事業を「許認可事業」といいます。許認可事業に該当するにも関わらず、必要な許認可を取得せずに営業を行うと刑事罰が科せられたり、営業停止になることもあります。
たとえば法人の場合、許認可申請に登記簿謄本が必要となるため、設立登記が終わったあとに申請手続きを行うのが一般的です。また、あらかじめ定款に事業目的を記載しておく必要もあります。
そのため、事業を始めるときは、事前に許認可についても把握した上で計画的に進めるようにしましょう。
なお、許認可の効力に期限が設けられているものもあるため、定期的に更新が必要な場合があります。期限を過ぎるとその業務を続けることができなくなるので、期限についてもあらかじめ認識し、更新の申請は余裕を持って行いましょう。
許認可が必要な事業の一覧
許認可が必要な主な業種とその許認可を管轄する行政機関、窓口は以下の通りです。
業種 | 所轄行政機関 | 窓口 |
---|---|---|
建設業 | 都道府県・国土交通省 | 都道府県・国土交通省 |
電気工事業 | 経済産業省 | 経済産業省・都道府県 |
解体工事業 | 都道府県 | 都道府県 |
酒の製造業・販売業・卸業 | 税務署 | 税務署 |
ガソリンスタンド | 経済産業省 | 経済産業局 |
倉庫業 | 国土交通省 | 運輸局 |
運送業 | 運輸局 | 運輸局 |
タクシー業 | ||
リサイクルショップ・古本屋などの中古品販売、中古自動車販売 | 公安委員会 | 警察署 |
貸金業 | 都道府県・財務局 | 日本貸金業協会都道府県支部 |
質屋 | 公安委員会 | 警察署 |
不動産業 | 都道府県・国土交通省 | 都道府県 |
有料駐車場業 | 市区町村 | 市区町村 |
ホテル・旅館 | 都道府県 | 保健所 |
飲食店・喫茶店・弁当販売などの飲食店業 | ||
菓子・パン・惣菜などの食品製造業 | ||
パチンコ店・麻雀店・ゲームセンター・キャバレーなどの風俗営業 | 公安委員会 | 警察署 |
保育所 | 都道府県 | 市区町村・都道府県 |
私立学校 | 都道府県・文部科学省 | 都道府県・文部科学省 |
病院・診療所 | 都道府県 | 保健所 |
マッサージ業 | ||
薬局・ドラッグストア | ||
介護事業 | 都道府県 | 都道府県 |
探偵業 | 公安委員会 | 警察署 |
インターネット異性紹介業 | ||
警備業 | ||
自動車運転代行業 | ||
労働者派遣業・職業紹介業 | 厚生労働省 | 労働局 |
自動車分解整備業 | 運輸局 | 運輸局 |
理美容業 | 都道府県 | 保健所 |
クリーニング店 | ||
映画・演劇・音楽などの興行場運営業 | ||
ペットショップ | 都道府県 | 保健所・動物愛護センター |
旅行業・旅行代理店業 | 都道府県・観光庁 | 都道府県・観光庁 |
【業種別】許認可取得に必要な要件
各事業の許認可を取得するための手続きや要件、各行政機関の詳細説明ページなどまとめて紹介します。
建設業
建設業を行うには、許可を受けるために、事業開始前に本店所在地を管轄する都道府県へ申請手続きを行います。なお、2つ以上の都道府県に営業所を設ける場合は、本店を所管する国土交通省の地方整備局に手続きを行います。
適切な経営管理責任体制を有すること、社会保険への加入などが要件とされます。
電気工事業
電気工事業を行う場合には、主任電気工事士を選任することなどを要件し、事業を開始する前に経済産業省へ登録が必要です。
申請先は営業所の状況により下記のとおり3つに分かれます。
- 営業所を1つの都道府県にのみ設ける場合:都道府県
- 2つ以上の都道府県に営業所を設ける場合
a)産業保安監督部(※)の区域は同一:産業保安監督部
b)産業保安監督部の区域も複数にまたがる:経済産業省
※産業保安監督部 : 経済産業省の地方支分部局で全国9か所に設置されている
解体工事業
解体工事業を行うには、事業開始前に工事を行う場所を管轄する都道府県に申請を行い、解体工事業の登録を受ける必要があります。解体工事施工の技術管理者の選任などが要件とされます。
なお、解体工事業の登録業者が請け負えるのは、請負金額が1件500万円未満の解体工事です。500万円以上の解体工事を請け負う場合には、建設業の許可が必要となります。
酒の製造業・販売業・卸業
酒類に関した事業において、製造をする場合は製造免許が、販売などを行うには販売業免許、卸業を行うには卸売業免許がそれぞれ必要です。事業開始前に税務署へ申請手続を行います。
ただし、レストランなど飲食店で酒類を提供する場合にはいずれの手続きも不要です。
ガソリンスタンド
ガソリンスタンドを運営する場合には、経済産業省への揮発油販売業者登録を受けるために、事業開始前に地方経済産業局を窓口として申請手続きを行います。給油所ごとに品質管理者を選任するなどの要件を満たす必要があります。
倉庫業
倉庫業を行う場合には、国土交通省の倉庫業法に基づく登録を受けるために、事業開始前に地方運輸局を窓口として申請手続きを行います。保管する物品に応じた倉庫施設の基準をクリアした倉庫であること、倉庫ごとに倉庫管理主任者を選任すること、などの要件を満たす必要があります。
運送業
トラックなどで荷物を運ぶ運送業は、一般貨物自動車運送の許可を受けるために、事業開始前に運輸局へ申請手続きを行います。法令試験の実施や書面審査などを行う必要があります。
タクシー業
タクシー事業を行うには、一般乗用旅客自動車運送事業の許可を受けるために、事業開始前に運輸局へ申請手続きを行います。申請書の提出後、基準に適合していると認められれば許可が得られます。なお、法人または個人でタクシー事業を行う場合では、審査基準が異なるので注意しましょう。
リサイクルショップ・古本屋などの中古品販売、中古自動車販売
中古品販売を行うリサイクルショップ・古本屋・骨董屋などは、公安委員会から古物商の許可を受けるために、事業開始前に警察署を窓口として申請手続きを行います。営業所ごとに管理者を選任する必要があり、許可申請の処理が完了するまで約40日ほど要するとされています。
なお、中古自動車の販売を行う場合には、古物商の許可と合わせて、都道府県または市区町村への自動車引取業の登録申請が必要です。
貸金業
貸金業を行う場合には、事業開始前に営業所がある日本貸金業協会都道府県支部を通じて、都道府県または財務局に申請を行い登録を受ける必要があります。所在地を確知できる営業所があること、貸金業務取扱主任者を選任することなどが要件とされます。
質屋
質屋は公安委員会から質屋営業の許可を受けるために、事業開始前に警察署を窓口として申請手続きを行います。営業所ごとに許可が必要です。
不動産業
宅地や建物の売買、賃借の代理などの不動産業を行うには、宅地建物取引業法の規定により、事業開始前に都道府県または国土交通省より宅地建物取引業の免許を受ける必要があります。
事務所を設ける都道府県が1つのみの場合には都道府県知事、2つ以上になる場合に国土交通大臣が免許権者となります。
いずれも提出先窓口は各都道府県の宅地建物取引業免許事務担当課です。
有料駐車場業
不特定多数の人が利用できる有料の駐車場業を営む場合など、その駐車場が特定の条件に該当するときには、施設の要件を満たした上で、工事着手前に市区町村へ駐車場設置の届出を行う必要があります。さらに事業開始後10日以内に市区町村へ管理規程の届出を行います。
不特定多数の人が利用できる場合に対象となるため、月極駐車場のように利用者が限定される場合には対象とならず、届出は不要です。
ホテル・旅館
ホテル・旅館・民宿などの旅館業を行う場合には、都道府県から旅館業の許可を受けるために、営業開始前に保健所を窓口として申請手続きを行います。その形態に応じた施設要件などを満たす必要などがあります。
なお旅館業営業者以外で、住宅に人を宿泊させて宿泊料を受け取り、宿泊日数が1年間で180日を超えないものは住宅宿泊事業(いわゆる民泊)となります。この事業を行う場合には、都道府県に住宅宿泊事業の届出をする必要があります。
飲食店・喫茶店・弁当販売などの飲食店業
レストランなどの飲食店や喫茶店を営むには、都道府県から許可を受けるために、事業開始前に保健所を窓口として申請手続きを行います。食品衛生責任者の資格を持つ者がいることや施設要件などを満たす必要があります。
菓子・パン・惣菜などの食品製造業
食品の製造業を行うには、都道府県からその食品製造の許可を受けるために、事業開始前に保健所を窓口として申請手続きを行います。食品衛生責任者の資格を持つ者がいることや施設要件などを満たす必要があります。
また、製造から販売までを行う場合には、飲食店営業の許可も必要となることもあります。
パチンコ店・麻雀店・ゲームセンター・キャバレーなどの風俗営業
パチンコ店・麻雀店・ゲームセンター・キャバレーなど風俗営業に該当する事業を営むには、公安委員会から風俗営業の許可を受けるために、事業開始前に警察署を窓口として申請手続きを行います。それぞれの営業内容に応じて要件がありますので確認しておきましょう。
なお、飲食を提供する場合には、飲食店業の許可を保健所から受ける必要があります。また、酒類を提供する飲食店を深夜営む場合や、性風俗関連の営業を行う場合には、営業開始前に警察署への届出が必要となります。
保育所
保育所の運営を行うには、事業開始前に都道府県の認可を受ける必要があります。
まず市区町村に事前相談を行い、次に事前協議を行うための書類を提出します。事前協議の受理を受けて、都道府県へ設置認可申請を行います。設置認可を得ることで事業を開始することができます。
認可を得るためには、保育士などの職員数や施設要件などを満たす必要があります。
私立学校
私立学校の運営を行うには、事業開始前に学校法人としての認可を受ける必要があります。
私立大学および私立高等専門学校は文部科学省、私立高等学校以下の学校については都道府県で認可の申請を行います。
所轄庁に申請を行うと、私立学校に必要な施設・設備を満たしているか、経営に必要な財産を有しているか、管理運営などの審査が行われます。
病院・診療所
病院や診療所の開設には、都道府県からの許可を受けるために、開設した日から10日以内に保健所を窓口として開設届を提出します。医師免許を持つ者がいることや一定の施設要件を満たす必要があります。
なお、施設の構造設備等が基準に適合している必要があるため、計画段階で保健所に事前相談を行いましょう。
マッサージ業
マッサージ業については、その施術内容などによって手続きが異なります。
治療を目的とするあんまマッサージ指圧、はり、きゅう、柔道整復をその施術内容として開業する場合には、開業後10日以内に保健所を窓口として都道府県への届出を行います。あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師などの該当する資格を持つ者がいることやその施設について一定の要件を満たすことが必要とされます。
なお、これらのマッサージ業を行う場合には、看板やホームページなどの広告に関して広告制限が定められています。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律や医師法違反にならないように、表現には十分注意しましょう。
一方、以上に該当しない整体や足つぼなどを施術内容とする場合には、現時点では資格や法律がなく、資格や手続きは必要ないため、誰でも開業することができます。
薬局・ドラッグストア
薬局を営むには、都道府県から薬局開設の許可を受けるため、事業開始前に保健所を窓口として申請手続きを行います。薬剤師の免許を持つ者がいることや一定の施設要件を満たす必要があります。
介護事業
介護保険法に基づく介護事業を行うには、都道府県の指定・許可を受けるために、事業開始前に申請手続きを行います。介護サービスの内容によって提出書類や要件は異なります。
探偵業
探偵業を行う場合には、事業を開始する前日までに、警察署を窓口として公安委員会への届出を行います。
インターネット異性紹介事業
インターネット異性紹介事業(出会い系サイト)を行う場合には、事業を開始する前日までに、警察署を窓口として公安委員会への届出を行います。
警備業
警備業を行うには、公安委員会の警備業認定を受けるために、事業開始前に警察署を窓口として申請手続きを行います。区分される警備業に応じて定められた警備員指導教育責任者を選任することなどが要件とされます。
自動車運転代行業
自動車運転代行業を行うには、公安委員会の認定を受けるために、事業開始前に警察署を窓口として申請手続きを行います。安全運転管理者の選任などが要件とされます。
労働者派遣業・職業紹介業
いわゆる人材派遣を事業として営むには、厚生労働省から労働者派遣業の許可を受けるために、事業開始前に労働局を窓口として申請手続きを行います。必要な講習を受けることなどが要件とされます。
一方で、職業紹介業を行うには、厚生労働省から職業紹介事業の許可を受けるために、事業開始前に労働局を窓口として申請手続きを行います。一定額の財産を有することなどが要件とされています。
自動車分解整備業
自動車の整備業は、自動車分解整備事業の認証を受けるために、事業開始前に運輸局を窓口として申請手続きを行います。2級自動車整備士の資格を持つ整備主任者の選任や、定められた事業場・作業機械・作業員の要件を満たす必要があります。
理美容業
理容室または美容室の開業は、保健所を窓口として都道府県知事へ開設の届出を行う必要があります。理容師・美容師の免許を有する者がいることなどが要件です。
また、その施設についても一定の要件を満たす必要があるため、保健所に事前相談を行います。開設届など各種届出書を提出し、施設完成後に検査を受けて構造設備が基準に適合しているかの確認を受ける必要があります。
クリーニング店
クリーニング店を開業するためには、保健所を窓口として都道府県知事へ開設の届出を行います。クリーニング師の免許を持つ者がいること、業務用の機械を1台以上おくことなどの要件も設けられています。
保健所に事前相談を行った上で、開設届など各種届出書を提出し、施設完成後に検査を受けて構造設備が基準に適合しているかの確認を受ける必要があります。
映画・演劇・音楽などの興行場運営業
映画・演劇・音楽・スポーツ・演芸などの興行を行う施設を営業するには、都道府県から興行場の許可を受けるために、営業開始前に保健所を窓口として申請手続きを行います。それぞれの興行場に応じた施設要件などが求められます。
ペットショップ
ペットショップなど動物を取り扱う事業は、営業を開始する前に保健所または動物愛護センターを窓口として都道府県に申請を行い、第一種動物取扱業の登録を受ける必要があります。飼養施設が要件を満たしていること、常勤の動物取扱責任者を選任することなどが要件とされます。
旅行業・旅行代理店業
旅行業は、その業務の範囲によって第1種旅行業者、第2種旅行業者、第3種旅行業者、地域限定旅行業者、旅行業者代理業者に区分されます。
事業開始前に、第1種旅行業者は観光庁での申請前ヒアリングを経て、所轄運輸局へ申請書を提出し、登録を受けます。第1種旅行業者以外は都道府県の担当窓口で申請を行い、登録を受けます。
営業所ごとに旅行業務取扱管理者を選任することや、その区分に応じた営業保証金や基準資産が要件とされます。
事業の適切な運営には専門家のサポートを
許認可が必要な事業にもかかわらず、各種手続きを行わずに営業をはじめてしまうと、営業停止処分や刑事罰を受けることにもなりかねません。
これから始める事業の許認可手続きが不安な場合には、あらかじめ中小企業支援センターの窓口や行政書士、社労士などの専門家に相談しましょう。
また、事業を健全に運営していくにあたっては税理士も心強い味方になってくれます。「経理作業が苦手だ」「税務や会計知識に不安がある」という方は予算との兼ね合いを考えつつ税理士をつけることも検討してみましょう。
※税理士費用の実例、顧問税理士をつけるメリットなどを業種・業界ごとにまとめた記事はこちら
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