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【実例付き】「事業目的」を決めるときのルール・ポイント・注意点

監修: 松本 献 税理士

事業目的とは

事業目的とは、「何をしている会社か」を概略として表したものです。

これは定款の作成に必要なほか、法務局へ登記する際の登記事項となっています。そのため、会社を設立登記する際には、事業内容を何にするかを決める必要があります。

また、会社は登記簿謄本などの情報によって社会的に評価されます。そのため、特に第一期の決算書が無い新設法人にとって事業目的は、とても重要なものとなります。

銀行の中でもメガバンクは特に厳しく、事業目的が原因で口座開設や融資を断られるということもあるのです。

事業目的を決めるときのルール

事業目的に何と書くかについての法律はありませんが、適切ではない内容にしてしまうと登記が認めらず、手続きがやり直しになってしまうことがあります。

また、事業目的に記載していないことは原則行うことができませんので、会社設立の手続き後に追加・変更するには、定款・登記の変更手続きが必要となります。この際には手数料が発生します。

こうした手間や出費がかからないためにも、基本的なルールをしっかり抑えておきましょう。

使用できない文字がある

会社の目的に使用できる文字は、原則「ひらがな」「かたかな」「漢字」の日本語の文字に限られています。アルファベットなどは使用できません。

たとえば「PC販売」「HP作成」など、一般に知られていると思われるアルファベットも、「パソコン販売」「ホームページ作成」などと、日本語の表現に置き換える必要があります。

ただし、「Tシャツ」や「IT」のように、アルファベットが入っていても一般名詞として知られていて、日本語の表現に置き換えられないものは例外として認められます

これらの表記の判断は難しいので、必要に応じて法務局や専門家に相談すると良いでしょう。

適法性・明確性・営利性が必要

会社の事業目的には、「適法性」「明確性」「営利性」が必要です。

まず適法性とは、法律や公序良俗に反してはならないということです。たとえば、誘拐・詐欺、麻薬などの違法薬物の売買といった犯罪行為などを事業目的に定めることはできません。

明確性とは、誰が見ても理解できる分かりやすい言葉を使うということです。一般の人に理解できない明確性に欠けるものは事業目的にできません。業界用語や専門用語などは分かりやすい言葉に置き換えるようにします。

営利性とは、利益を生み出す目的でなければならないということです。なぜなら、会社は利益を上げ、それを株主などに還元することが本分だからです。(※非営利法人についてはこの限りではありません。)

そのため、会社の事業目的すべてがボランティア・寄付といった非営利活動だけになってはいけません。

ただし、あくまで事業目的には営利性が必要となるだけで、会社自体のボランティア活動、つまり社会貢献が制限はされることはありません。

事業目的を決めるときのポイント

基本的なルールが理解できたところで、次は内容を決めるときのポイントを確認していきます。

同業他社の事業目的を参考にする

事業目的にしたい内容が決まっていたとしても、具体的にどう書けばいいか、どこまで盛り込むべきかの判断はなかなかつかないものです。

そういった場合は、同業他社の事業目的を参考にするのがおすすめです。具体的な調べ方については、以下のような方法があります。

  • 同業他社のホームページを確認する方法
  • 登記情報提供サービスを利用する方法(有料)
  • 法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する方法(有料)

実際の登記事例から事業目的を検索できるほか、組み合わせを紹介しているホームページもありますので、参考にしてみると良いでしょう。

将来行う事業も含める

設立時にはじめる事業とは別に、今後手がけたい事業があるなら、事業目的に含めておきましょう

事業目的にない事業を行うことは民法上では法律違反となり、追加や変更をするには、定款や登記事項の変更登記手続きが必要になります。

つまり、将来手がけたい事業を前もって記載しておくことで、登記変更の手間とコストを省くことができるのです。

なお、事業目的に記載されていても、必ずその事業を行わなければならないわけではありませんので、将来行う可能性のある事業を含めて記載するのが良いでしょう。

許認可の申請を視野に入れる

たとえば、製造業や不動産業、人材派遣業、旅行業、飲食業など、行政機関からの許認可を取得しなければ営業できない事業もあります。

許認可の手続きは、法務局で設立登記を完了した後に所轄行政機関に申請しますので、その申請前に事業目的として登記されている必要があります。

ですから、許認可が必要な事業を行う場合には、事業目的の記載方法について許認可申請先の行政機関に事前に相談しておくと安心です。

「前各号に付帯または関連する一切の事業」と入れる

「前各号に付帯または関連する一切の事業」という文言をいれることによって、関連する事業も含めることができます。

実際のところ、「付帯または関連」がどの範囲まで示しているかの明確な決まりはありませんが、少しでも関連があれば、目的の範囲に含まれると思って問題ありません。

実務では必要になる一文なので、事業目的の一番最後に入れておきましょう。

事業目的を決めるときの注意点

ここまでの内容を抑えておけば基本的には大丈夫ですが、内容によっては融資に影響するものや、登記が認められない場合もあるので、以下の点にも注意しておくと良いでしょう。

誰でも閲覧できる

事業目的は登記簿謄本に記載されていて、取引先や金融機関、株主など誰でも簡単に取得することができます。この点は、個人の住民票や戸籍謄本が個人情報保護法などで守られているのと大きく異なります。

そのため、事業目的は利害関係者にも見られるものだと意識して、信用を落とさない内容・文章表現にすることが求められます。

ただし、基本はあくまでも会社の概略を表すものなので、細かすぎるのは適しません。

融資に影響する事業目的がある

事業目的によっては金融機関からの融資が受けられない、または受けにくいものがあります。融資の対象外になりやすいといわれているのは、以下の業種です。

  • 金融・保険事業
  • 性風俗関連産業
  • 延滞金の取り立て業・集金業
  • 不動産投資事業

これらの業種の場合は、事業目的への書き方などにご注意ください。

7個程度にまとめる

定款の事業目的の数に制限はないので、設立登記の申請時にはいくつでも記載して登記できてしまいます。

ただし、あまりにも事業目的の数が多すぎると、世間からは「この会社の本業は何?」と思われてしまいます。

そのため、事業目的は「7個程度」に抑えて、本業と関連事業に絞るようにしましょう。7個にこだわるのは、登記簿謄本の見た目、そして登記簿謄本が1枚に収まる可能性が高いからです。

特に創業後すぐに融資を受ける場合など、金融機関の融資担当者が定款を見た際「怪しい会社だ」と思われてしまい、融資を断られる可能性もあります。

将来手がける可能性があるものは、事業目的に入れてもいいのですが、やる予定の全くない事業を記載することは、誤解を招く原因となります。

融資を受ける可能性があるときや内容に不安があるときは、会社設立に詳しい専門家に、事前に相談することも検討してみてください。

業種ごとの事業目的の実例

次に、「業種別の事業目的の実例」と「許認可が必要な事業に関する注意点」を解説します。

不動産業(宅地建物取引業)

不動産業の事業範囲は広く、不動産の売買や賃貸、経営、管理・メンテナンス、仲介、コンサルティングなどがあります。

また、不動産の種類も、マンション、工場、駐車場などさまざまです。事業目的を作る際は、これらを組み合わせると良いでしょう。

「宅地建物取引業(宅地や建物の売買・交換などをする仕事)」を行う場合は、事業目的に「宅地建物取引業」「不動産の売買、賃貸及びその仲介」と記載しましょう。

なお、営業をするには、国土交通大臣または都道府県知事で宅地建物取引の免許を受ける必要があります。

事業目的の実例

  • 宅地建物取引業
  • 不動産の売買、賃貸、斡旋及び管理
  • 不動産に関するコンサルティング
  • マンション、工場、店舗、その他不動産の経営及び管理

人材派遣業(労働者派遣事業)

人材派遣業は正確には「労働者派遣事業」といいます。

以前は「一般労働者派遣事業」と「特定労働者派遣事業」に分かれていましたが、2015年の労働者派遣法の改正により、「労働者派遣事業」のみになりました。

人材派遣業をはじめるには、労働局に許可を受ける必要があります。事業目的に「労働者派遣事業」と書いていないと許可が下りない可能性もあるので、忘れずに記載しましょう。

事業目的の実例

  • 労働者派遣事業
  • 有料職業紹介事業
  • 人材派遣業及び人材教育訓練業務

保険代理店

保険には生命保険、損害保険などがあるので、事業目的には自社で扱う保険の種類を記載します。

なお、保険事業をはじめるには、保険会社と「代理店業務委託契約」を結ぶ必要がありますが、その際、保険会社は「事業目的」を確認して契約をするか判断します。

事業目的の内容によっては契約できない場合もあるので、可能であればあらかじめ保険会社に、事業目的の記載について問題ないかどうか、確認しておくことをおすすめします。

事業目的の実例

  • 生命保険代理事業
  • 損害保険代理事業
  • 損害保険代理及び生命保険募集業
  • 自動車損害賠償保障法に基づく保険代理業

旅行代理店

旅行代理店は「旅行業者代理業」となり、以下のような事業目的となります。なお、旅行代理店をはじめるには、自治体への登録が必要です。また、ツアーなどを企画する場合は、別途旅行業者の登録をしましょう。事業目的には「旅行業」と書く必要があります。

申請手続きはいずれも自治体に行いますが、「第1種旅行業(国内・海外のツアー企画ができる業者)」のみ、申請先が観光庁となっています。

事業目的の実例

  • 旅行業者代理業
  • 旅行業法に基づく旅行業者代理業
  • 旅行業法に基づく旅行業及び旅行業者代理業
  • 旅行及び観光に関するコンサルティング

旅行業が追加される例

  • 旅行業
  • 旅行業法に基づく旅行業

飲食業

飲食店の場合は、事業目的があまり細かくなりすぎないことが重要です。

中華料理、イタリヤ料理、ファミレス、居酒屋など細かい内容ではなく、「外食事業」などと総称する表現を使うが一般的です。

なお、飲食店をはじめるには、管轄の保健所で「飲食店営業許可」を取得する必要があります。

事業目的の実例

  • 外食事業展開
  • 飲食店、レストラン、カフェ及びバーの経営
  • 飲食店事業の運営業務
  • 仕出し弁当の製造、販売
  • 飲食店の経営、企画及び経営のコンサルティング

インターネット業

インターネット業にはさまざまなビジネス形態があるので、自社の事業内容にあったものを記載しましょう。

インターネット業自体は、基本的に行政機関の許認可は必要ありません。ただし、中古品を扱う場合は「古物商免許」が、お酒を販売する場合は「通信販売酒類小売業免許」が必要になります。

事業目的の実例

  • インターネットによるウェブ広告事業
  • インターネットによる商品の通信販売
  • インターネットに関するコンサルティング事業
  • インターネットのウェブコンテンツの企画・製作・運営
  • インターネットを利用した情報提供サービス
  • インターネットメディア事業の展開
  • インターネット上のショッピングモールの運営及び管理

事業目的の変更や追加方法

事業目的を変更したり、追加する際には、「株主総会の開催」、「登記申請手続き」の2つの手続きを行います。

なお、会社設立時には公証役場の「定款の認証」が必要ですが、変更や追加の場合は必要ありません

STEP1:株主総会で事業目的変更案を決議する

事業目的の変更や追加をするには、まずは株主総会を開き、定款変更(目的変更)の決議を行ないます。過半数を超える株主が出席した上で、出席株主議決権のうち3分の2以上の「事業目的変更案の賛成」が必要となります。

なお、法務局に「株主総会の議事録」を提出する必要があるので、忘れずに作成しておきましょう。あわせて、変更後の新定款も作成して下さい。

STEP2:法務局で定款変更の登記手続きをする

次に、法務局で定款変更の申請手続きを行います。手続きまでの期間は意外と短く、株主総会で決議されてから2週間以内(本店所在地の場合)に、本店所在地を管轄する法務局で行う必要があります。

そのため、総会後はスムーズに「株式会社変更登記申請書」を作成し、手続きを進めましょう。なお、変更手続きの際には、登録免許税が3万円かかります。

事業目的を変更しないと罰則はある?

結論からいうと、事業目的にない事業を行ったとしても、刑事罰や行政罰を受けるようなことはありません。

しかし、場合によっては「取引が無効」になり、取引先や自社への損害が発生する恐れもあります。

そのため、事業目的の追加・変更が必要な場合は早めに手続きを行うようにしましょう。

おわりに

今ご紹介したルールや注意点を守って作成したつもりでも、法務局で内容を指摘されたり、手続きに不備があれば、「希望していた会社設立日に間に合わない」などの事態を招きかねません。

法務局や行政機関へ相談に行く時間がない、ほかにも雑務があってそこまで手が回らないという人は、会社設立を専門家に全て丸投げしてしまうことも考えましょう。

設立手続きを専門家に依頼すると、面倒な手続きが短縮できて、スムーズに事業を開始することができるメリットがあります。

ただし、会社設立の専門家でも、行える業務の範囲や得意分野は異なります。迷ったら紹介サービスを利用してみるのもおすすめです。

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