「非公開会社」とは?「株式の譲渡制限に関する規定」を定款に定める6つのメリット

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「非公開会社」とは?「株式の譲渡制限に関する規定」を定款に定める6つのメリット

著者: 山田 大悟 税理士

会社を設立する場合、事業に関すること以外にも、会社の形態や出資などのさまざまなことを決定し、定款に記載する必要があります。

自分で会社設立の手続きをしているという方の中には、現在定款を作成しているものの、「株式譲渡制限会社」「非公開社」「公開会社」など、知らない単語が多く、意味がわからないという話もよく聞きます。経営者になる場合、これらの要素はとても重要になります。そこでこの記事では、中小企業に多い「非公開会社」について解説いたします。

目次

非公開会社(株式譲渡制限会社)とは?

非公開会社は「株式譲渡制限会社」とも呼ばれます。

教科書的な言い方をすれば「すべての株式を定款で譲渡制限している会社」ということになりますが、これだけではイメージが沸きにくいかと思います。

株式の譲渡制限とは、株主が保有している株式を売買などの手段で譲渡する際に、売手と買手の合意だけではなく、会社側の承認が必要となることをいいます。

つまり、非公開会社の場合、株主が保有している株式を売却しようとした際に、勝手に売ることができず、誰にどのくらい売るかについて、会社側の承認を取らなければならないのです。

公開会社との違い

これに対して公開会社は、一部の株式でも「譲渡の制限をつけない会社」のことをいいます。つまり数量は別として、株主が会社の承認なしに自由に譲渡できる株式がある会社が公開会社にあたります。

公開会社=上場会社ではない

誤解されることが多いのですが、上場会社と公開会社では意味が異なります。

前述の通り公開会社とは、株主が会社の承認なしに自由に譲渡できる株式を発行している会社のことをいいます。

一方で上場会社とは、公開会社の中でもその会社の株式が自由に売り買いできる場所(証券取引所)で売買されている会社をいいます。

たとえば、東京証券取引所に上場している会社であれば、資金を用意すれば証券会社を通じて簡単に株式を保有できますが、上場していない近所の中小企業だと、公開会社であっても株式を入手できる手段がないため、株主となるのは困難です。

非公開会社の6つのメリット

次に、非公開会社になるメリットについて解説します。

役員の任期が延長できる

役員の任期を通常よりも長く設定することができます。

通常であれば、会社法により取締役は最長2年・監査役は4年と任期が定められているため、任期満了のたびに役員の退任、就任、登記の変更などの手続きを行う必要があります。

しかし非公開会社では、任期を最長10年まで設定することができるため、役員の任期満了に伴う手続きを簡略化し、コスト削減が可能になります。

取締役会の設置義務がない

取締役会を置く必要がなくなります。

取締役1人ということも可能なので、取締役会がなければ、意思決定手続きもその分、簡略化することができます。

株主総会の招集期間が短縮できる

株式会社の場合は会社法の規定により、株主総会の招集を総会の日の2週間前までにしなければならないと定められています。

一方、非公開会社の場合、招集は総会の日の1週間前までにすればよいと定められています。なお、取締役会を設置していない場合は、定款に定めることにより、1週間よりもさらに縮めることが可能です。

第三者からの乗っ取りを防ぐ

オーナー兼経営者にとって、非公開会社の一番のメリットは、会社の株式を意図しない者に持たれる可能性を減少できるということです。

株式会社の株式とは、会社の最高意思決定機関である株主総会での影響力そのものであり、第三者に株式を大量に保有されてしまうと、会社が乗っ取られてしまうこともあります。

この点、非公開会社であれば、株主が会社の株式を譲渡する場合、会社の承認を得ることが必要となるため、誰が株式を保有するかという点に、会社の意思を反映させることができるのです。

相続による株式の分散が防げる

株主から第三者へ譲渡についての制限だけではなく、株主の相続を原因とした株式の分散にも対応することができます。

具体的には、定款に「相続その他の一般承継により、会社の株式を取得した者に対し売渡請求ができる旨」の内容を定めます。

これにより、たとえば株主が死亡し相続が発生した場合に、その取得者に対して相続により取得した株式を、会社に売るように請求を行うことができます。

売渡請求を受けた株式の取得者は、価格は別として、この売渡請求自体を拒否することはできません。そのため、会社としては株主の相続による株式の分散に備えることができます。

なお、実際に売渡請求を実施するとなると、株主総会の特別決議が必要であったり、価格についての協議が必要であったりと、さまざまな手続きが必要となります。

また会社による株式の取得については、自己株式の取得となり財源規制等を受けるため、売渡請求について具体的に検討する場合には、専門家へ相談されることをおすすめします。

「株式買取請求権」という権利がある

株主が株式を譲渡しようとする際、会社の承認が必要となることはすでにご説明済みです。

では、仮に株主が会社に株式の譲渡について承認を求めた際に、会社側が拒否した場合はどうなるのでしょうか。

この場合、会社側はその株式を自ら買い取るか、または買い取ってくれる別の誰かを指定する必要があります。これを「株式買取請求権」といいます。ある意味、譲渡を制限されている株主に対する救済措置的な制度といえるでしょう。

非公開会社になるには

非公開会社になるには、「譲渡による株式の取得について会社の承認を要すること」、という内容を定款に記載することが必要となります。

これは、「株式の譲渡制限に関する規定」と呼ばれており、定款にこの規定があるかどうかにより、公開会社と非公開会社は区別されることとなります。

仮に、株式譲渡制限を付けない場合、会社側が意図しない人物が株主となる可能性があります。中小企業には株主またはその親類が役員として経営を行う、いわゆる同族会社が多いのですが、会社側が意図しない人物が株主となることで、経営に混乱が生じる可能性が出てきてしまいます。

「株式の譲渡制限に関する規定」の記載例

定款には、以下のように記載します。

(株式の譲渡制限)
第◯条 当会社の株式を譲渡により取得するには、取締役会の承認を受けなければならない。

譲渡の際の会社側の承認機関については、「当会社の承認を要する」ではなく、取締役会や代表取締役、株主総会の承認を必要とするという例もあります。

このように具体的に定めておけば、第三者が会社の登記簿や定款を見たときに、株式を譲渡する際に誰の承認が必要かが分かりやすくなります。

あとから公開会社になることは可能?

いったん非公開会社として設立したものの、会社上場を検討し始めたなどの理由で公開会社に変更する必要が出てくる場合があります。その場合は一定の手続きを踏むことで、公開会社へと変更することができます。

具体的には、定款記載事項の変更となるため、株主総会の特別決議が必要となります。株主総会の特別決議では、行使できる議決権の過半数を有する株主が出席し、なおかつ出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成がなければ否決になります。この特別決議により定款を変更することで、公開会社へと変更することができます。

なお、公開会社になると、先述の非公開会社におけるメリットを受けることができなくなり、取締役会や監査役を設置する必要がでてきます。

また、公開会社となるために株式の譲渡制限の規定を廃止すると、会社法の規定により自動的に現在の役員の任期が満了となるため、役員の退任と新役員の就任の手続きも同時に必要となります。

このほか、非公開会社あれば発行可能株式総数に上限はありませんが、公開会社については、会社法により発行可能株式総数はすでに発行している株式の4倍までが上限とされているため、現状の登記を確認し、必要に応じて登記を変更しなければなりません。

このように、公開会社へと変更した場合は、さまざまな手続きが必要となるということを覚えておきましょう。

おわりに

公開会社、非公開会社というのは、定款作成における重要な要素となります。

作成したのちに、こうすればよかったと後悔しないよう、専門家に事前に相談しておくことをおすすめいたします。

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