会社の機関設計はどのように決める?基本的なパターンやポイントを解説
会社を設立するにあたって、誰がどの役員を何年やるのか、取締役会を設置するかどうかなどの「機関設計」が必要となります。
どのような機関設計が必要になるかは、会社法に定められており、会社の形態によって異なります。
そこでこの記事では、株式会社設立時の機関設計に必要な基礎知識やポイントについて解説します。
目次
機関設計とは?
会社の「機関」とは、会社の意思決定や業務執行の権限を持つことを法律により定められた取締役や株主総会などを指します。
具体的には、取締役・監査役・会計参与などの役員、株主総会・取締役会・監査役会・委員会などが会社の機関に該当します。
これらの機関について、どの機関を何人設置するかを決めることを「機関設計」といいます。
機関の種類と役割
機関の種類と役割はそれぞれ以下のとおりです。
取締役
取締役とは、会社の業務執行、つまり会社を経営・運営していく役割を行う機関で、任期は原則2年までです。
発起人とは異なり、法人や過去2年以内に特定の罪を犯した人などは取締役になることはできません。また、会社を代表する権限を持った取締役のことを代表取締役といいます。
取締役会
取締役会とは、すべての取締役で構成される、会社の業務執行の決定や取締役の業務執行を監督する機関です。
任意で設置される機関ですが、取締役会を設置するときには、監査役と3人以上の取締役の設置が必要となります。
なお、公開会社の場合は必ず取締役会の設置が必須になります。
株主総会
株主総会とは、株主で構成される、会社の最高意思決定機関です。株式会社の方針・組織・運営などの重要な事項を決定します。
監査役
監査役とは、取締役や会計参与の業務執行や会計を監査する機関です。
任意で設置する機関ですが、取締役会を設置する場合などには設置が必須で、任期は原則4年までです。
取締役と同様に、法人や過去2年以内に特定の罪を犯した人などは監査役になることはできません。
監査役会
監査役会とは、すべての監査役で構成される、会社の監査報告の作成や監査方針の決定などを行う機関です。
任意で設置する機関ですが、大会社(資本金が5億円以上か、負債総額が200億円以上)では設置が必須となります。
監査役会を設置するときには取締役会が必要で、3人以上の監査役を定め、そのうちの半数以上を社外監査役、1人を常勤監査役とする必要があります。
会計参与
会計参与とは、取締役または執行役と共同で損益計算書や貸借対照表などの計算関係書類の作成を行う機関です。
会計参与は株式会社に任意で設置する機関で、任期は原則2年までです。
会計監査人
会計監査人とは、会社の計算関係書類などの監査を行う機関です。
会計参与が会社の一員として計算関係書類を作成するのに対して、会計監査人は第三者として会社が作った計算関係書類を作る役割です。会計監査人は任意で設置する機関ですが、大会社は設置が必要となります。任期は原則1年までです。
委員会
委員会とは、取締役会において選任される執行役が権限委譲を受けて業務執行を行う機関です。執行役がより広範囲な業務の執行ができるようにするための制度で、取締役などの職務執行の監査を行う監査委員会、取締役などの報酬を決定する報酬委員会があります。
設置は任意ですが、各委員会を設置するときには、過半数の社外取締役が必要です。
機関設計をするときのポイント
次に、会社を設立するときの機関設計で抑えるべきポイントを解説します。
取締役は1人以上を選出する
株式会社では1人以上の取締役が最低限必要となります。
取締役は株主(発起人)から選ぶことも、外部の人から選ぶことも可能です。自身が中心となって会社を設立する場合は、株主兼取締役となって自由に経営を行うことになるでしょう。
一方、外部の人から取締役を選ぶ場合には、株主として出資し、経営は取締役に任せることになります。このときには、株主の考えが経営に反映されないこともあるでしょうから、株主の中から数人を取締役に選んでおくことも一つの方法となります。
代表取締役と監査役の選出は取締役会次第
代表取締役と監査役の設置は、取締役会を設置するかどうかによって異なります。
- 取締役会を設置しない場合
監査役の設置は不要となり、取締役が複数いるときには全員が代表権を持つことになるため、経営に支障をきたさないように、1人を代表取締役に選任すると良いでしょう。 - 取締役会を設置する場合
監査役の設置と、1人以上の代表取締役を選任することが必要となります。
取締役会の設置で機関が異なる
取締役会を設置するかどうかは任意となります。取締役会を設置することによる機関の違いとメリット・デメリットは以下のとおりです。
取締役会を設置 | 取締役会を非設置 | |
---|---|---|
監査役 の設置 | 必要 | 任意 |
取締役 の人数 | 3人以上 | 1人以上 |
代表 取締役 | 1人以上の選任が必要 | 取締役全員に代表権・ 特定の者を選任することも可 |
業務の 執行権限 | 代表取締役・執行権限 を与えられた取締役 | 各取締役 |
株主総会 の権限 | 法定事項・定款に 定めた事項の決議 | 会社の一切の事項の決議 |
メリット | ・株主総会を行わず、迅速な意思決定ができる ・対外的な信用力が上がる ・取締役の独断による経営を防ぐことができる |
---|---|
デメリット | ・役員数が増えるためその人員確保が必要 ・役員報酬の支払いによるコスト増 ・株主総会招集手続きなどが簡略化できない ・取締役会の定期的な開催、議事録作成・保管が必要になる ・株主総会で計算関係書類などの添付が必要になる |
会社を設立する段階において、株主と取締役が全く同じ場合や、自身が株主・経営の中心となる場合には、取締役会の設置は不要です。株主と取締役が異なる場合や、知人などと複数人で共同経営する場合には取締役会の設置を検討すると良いでしょう。
株式の譲渡制限で役員の任期を伸ばせる
役員の任期は、期限が切れるごとに株主総会または取締役会の手続きを行い、登記申請が必要となります。
ただし、非公開会社であれば、定款に定めることでそれぞれの役員の任期を10年まで延長することができるため、めんどうな手続きを省くことにつながります。反対に、2年以内に短縮することも可能です。
株式会社(非公開会社)の機関設計のパターン
中小企業の一般的な機関設計は以下のとおりです。会社を設立する際の参考にしてください。
2人以下で起業する場合
1人または2人で起業する場合に必要なのは、株主総会と取締役で、最小限の構成となる基本的な機関設計です。取締役会と監査役は設置できません。
上記に加えて、監査役を設置することもあります。
3人以上で起業する場合
2人以下のときと同様に、株主総会と取締役の設置で設立できます。取締役会を設置する場合は3人以上の取締役と、監査役や会計参与が必要になります。取締役と監査役の兼任はできないため、3人では人が足りなくなってしまいます。
上場を目指す場合は公開会社となって、取締役会と監査役の設置が必要になりますが、設立当初から設置する必要はありません。
おわりに
創業時には、取締役会を設置せず、取締役を1名以上設置し、株式の譲渡制限を設けて、役員の任期を長くして定款に定めるケースが多いのではないでしょうか。
どういった機関設計をするのが良いかは、設立時の人数などケースによるので、迷った際は、会社設立が得意な税理士に相談してみるのもよいでしょう。
もっと記事を読みたい方はこちら
無料会員登録でメルマガをお届け!