会社設立時の「資本金」を決めるときの6つのポイント - 節税や実務に役立つ専門家が監修するハウツー - 税理士ドットコム

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会社設立時の「資本金」を決めるときの6つのポイント

資本金とは?

資本金(出資金)とは、会社が事業を営むために出資を受けた資金のことです。

たとえば、株式会社の場合であれば、株主(出資者)に対して株券を発行し、その株券と引き換えに現金などを受け取ります。この受け取った資金を「資本金」といいます。

この資本金は貸借対照表(B/S)の純資産の部の表示科目であり、「貸方」に記載します。純資産の部は、「資産の部」から「負債の部」を控除して算出される差額概念であり、だれにも返済する義務の無い会社の資金となります。

また、借入金や社債といった負債を「他人資本」というのに対して、資本金は「自己資本」ともいいます。

現金出資と現物出資

1株いくらが妥当?

1株あたりの金額は原則として、自由に決めることができます。

一般的には、1株あたり1万円or10万円に設定することが多いです。なぜなら、「金額が高すぎると資本金を増やしたいときに株式を購入できない」可能性があり、一方で「金額が低すぎると株式の管理が煩雑になる」からです。

また、株式を発行する際の注意点に「発行可能株式総数」というものがあります。これはその会社が発行できる株式の上限数のことです。これは、登記事項として法務局に登記され、登記簿謄本にも明記されます。

そして、定款で株式の譲渡制限を設けて非公開会社として譲渡制限を設けている場合にも、登記事項として法務局に登記され、登記簿謄本にも明記されます。

資本金は使ってもいいの?

資本金は返済する必要がないお金であり、企業が自由に使えるお金です。よくある勘違いで、資本金は使うことができないという認識がありますが、そうではありません。

かつては「払込みをしたお金は1か月間使えない」というルールがあったのですが、現在は会社設立後であればすぐに使えるようになっています。

ただし、「事業のために使うお金」であるため、会社の事業以外には使用できません。経営者個人の生活費が必要であれば、「役員報酬」として処理することになります。

会社と経営者とは法律上では別人格です。経営者といえども、会社のお金を個人的な目的で使うことは許されません。

資本金は変更することができる

資本金は事業を始めてからでも増やす(増資する)ことができます。また、融資などを利用する方法もあるので、無理に設立時に資本金をたくさん用意しなくても大丈夫です。

ただし資本金額は登記事項に該当するので、これを変更したときは法務局への変更登記手続きが必要となるのを忘れてはいけません。変更登記に際しては、登録免許税などの費用が発生することになります。

増資したい場合は、株式会社であれば新たに株式を発行すればよく、その方法には「株主割当増資」「第三者割当増資」「公募増資」があります。この違いは「誰が新株式を引き受けるか」にあり、詳しくは以下のとおりです。

  • 株主割当増資:既存株主に対して新株式を引き受ける権利を与える方法
  • 第三者割当増資:特定の第三者にも新株式を引き受ける権利を与える方法
  • 公募増資:不特定かつ多数の投資家にも新株式を引き受ける権利を与える方法

増資の流れ

  1. 株主総会決議で募集株式発行を決定
  2. 株主に増資(募集株式発行)の通知
  3. 株主からの申込み及び出資金の払込み。現物出資であれば引き渡し
  4. 法務局にて資本金、発行株式総数の登記変更

また、欠損金(赤字)の補填や節税対策を目的として、資本金を減らす(減資する)ことも可能です。

減資の流れ

  1. 株主総会決議
  2. 株主総会での決議
  3. 債権者保護手続(減資公告や催告)
  4. 法務局にて資本金、発行株式総数の登記変更

なお、変更後の資本金の額によっては、納める税金に大きく関わってくるため、注意が必要です。また、資本金額という登記事項を変更すると、登記簿謄本に変更の事実が半永久に記載されることになりますので慎重な検討が必要です。

そのほかの影響としては、消費税の納税義務が免除されなくなったり、住民税の均等割が高くなったりします。さらに、資本金が1億円を超えると法人税法上、「大法人」になってしまうので、中小法人に認められている各種優遇税制も使えなくなります。

資本金を変更する際は、税理士とよく相談してから決めることをおすすめします。

“資本金1円で設立できる”はほんと?

2006年に新会社法が施行されたことで、資本金1円でも設立可能になりました。

それまでは、有限会社であれば300万円以上、株式会社であれば1,000万円以上の、資本金とする現金の払い込みが必要だったので、資金面でのハードルが大きく下がりました。

しかし、あまりにも資本金が少なすぎるとビジネスを行う上で支障が出やすいので、注意が必要です。あとから増資できるとはいえ、設立時に資本金が1円だと以下のようなデメリットがあり、現実的には1円で設立するのは難しいケースがほとんどです。

  • 運転資金を確保できない
  • 融資が通りにくくなる
  • 口座開設ができないことがある
  • 事務所や店舗が借りられないことがある
  • ペーパーカンパニーと間違われる

また、株式会社の設立費用だけでも少なくとも約24万円が必要になるため、実際問題として「資本金1円で会社を設立するのは難しい」といえます。

中小企業の資本金の平均はどれくらい?

「中小企業実態基本調査(平成28年度決算実績)」によると、中小企業の資本金の合計が「約18兆5800億円」であることが分かります。また、同調査の母集団数は「約313万企業」なので、平均額を算出すると「約593万円」となります。

これはあくまで平均値であり、多くの中小企業は設立時の資本金額を「100万円~300万円程度」に設定しているようです。

また、それぞれの企業ごとに適切な資本金額は異なりますので、目安として参考にしてみてください。

資本金を決めるときの6つのポイント

実際に資本金を決定する際には、「事業、融資、取引、税務、許認可」など、さまざまな観点を考慮すべきです。

特に注意するべきポイントを6つに分けて解説します。

【1】設立後数か月分の運転資金を用意する

資本金は運転資金(元手)になるので、設立費用に加えて「設立後数か月分の運転資金」を用意しておきましょう。

会社設立時の費用には、設立費用(定款認証料や登録免許税など)、事務所契約費用(敷金・礼金など)、事務用品(パソコン・机など)などがあります。また、運転資金(ランニングコスト)には商品仕入代金などがあるので、自社に必要な資金を計算してみましょう。

ここで注意を要するのは、運転資金をどのようにして見積もるかです。実務では、商品の販売から販売代金の回収までの営業サイクル(ない場合は、不足する一部を借入金などでまかなうことになります。

期間)に基づいて、準備すべき運転資金を見積もります。下記の例では3か月と仮定しています。

具体的に説明すると、ある会社の開業費用が100万円で、毎月のランニングコストが80万円だったとします。そのとき、この会社で用意すべき資本金は以下のように計算できます。

資本金340万円 = 開業資金100万円 + ランニングコスト80万円/月 × 3か月分

このように、当面の運転資金と開業資金を確保するという資本金の決め方があります。

もしも全額を自己資金で準備できない場合は、不足する一部を借入金などでまかなうことになります。

【2】節税対策のために「1,000万円未満」にする

資本金額によっては、税務上の優遇を受けることができます。

特に法人設立直後は、なるべく手元に運転資金を残しておきたい期間です。そのため、特別な事情がない場合は、以下の「節税対策の観点」を踏まえて資本金額を決めるとよいでしょう。

消費税の納税義務が最長2年間(2営業期間)免除される

資本金が1,000万円未満の場合は、設立初年度の消費税を納める義務が免除されます。なお、以下の要件を満たすと、翌年度も消費税の納税義務が免除されます。

  • 特定期間の課税売上高が1,000万円以下の場合
  • 特定期間の給与支払額の合計額が1,000万円以下の場合

法人住民税(均等割)の金額が変わる

資本金額は法人住民税(均等割)にも影響します。

具体的にいうと、東京都にある会社で資本金が1,000万円以下の場合は「7万円」ですが、1,000万円超1億円以下の場合は「18万円」です。このように資本金が1,000万円を超えてしまうと、法人税の負担も大きくなってしまうのです。

法人設立時の登録免許税の金額が変わる

法務局で法人の設立登記の申請をする際には、登録免許税を納めることになります。

この登録免許税は、「最低15万円」または「資本金額に対して0.7%」です。たとえば、資本金額が3,000万円の法人であれば「3,000万円 × 0.7% = 21万円」となります。

中小法人の税制優遇が受けられる

法人税法では資本金額などによって、「中小法人」と「大法人」に分けられます。そして、中小法人に対しては税率や税制面において、さまざまな優遇措置が設けられています。

代表的な優遇措置には、以下のようなものがあります。

  • 法人税の軽減税率が適用される(法人税率が23.2%から15%になる)
  • 交際費の特例が受けられる(最大800万円まで交際費を全額損金計上できる)
  • 少額減価償却資産の特例が受けられる(30万円未満の減価償却資産を一時償却できる)

原則として資本金額が1億円以下であれば「中小法人」と扱われるので、資本金を設定する際にはこのポイントにも注意するとよいでしょう。

【3】融資の面も考慮する

あまりに少ない資本金額(1円〜数万円)で設立すると、債務超過になりやすいと判断されてしまい、融資が受けづらくなってしまう可能性があります。

しかし金融機関が融資額を判断するのは、あくまで企業の収益力です。いくらなら返済可能かを見極めて、その収益力に見合う融資を行なっていますので、資本金が少ないから融資が受けられないというわけではありません。

資本金額が少ないと、運転資金が確保できないだけでなく、融資にも影響するかもしれないなど、ある程度のリスクがあるということを覚えておきましょう。

債務超過とは

負債の総額が資産の総額を超えている状態のこと。資産をすべて売却しても負債が返済できない状態をいう。

【4】許認可が必要な事業はそれを優先する

事業内容によっては許認可が必要なものもあり、その要件に「資本金額に関する項目」が含まれている場合も多くあります。たとえば、以下のような事業です。

  • 一般労働者派遣業:基準資産額が「2,000万円以上」であること
  • 一般建設業:自己資本が「500万円以上」であること
  • 旅行業:基準資産額が「300万円~3,000万円以上」であること

さらに、許認可を受けるためには「事務所に関する項目」や「責任者に関する項目」などを満たす必要もあります。

そのため、あらかじめ「許認可が必要か」「その要件は何か」などを把握しておき、それに合わせて資本金額を決める必要があります。

【5】対外的な信用力なども考慮する

資本金はその会社の資金力を表すため、一般的には金額が多い方が「会社の信用力は高い」といえます。

一般的に、「資本金1円」と「資本金1千万円」の会社では、後者の方が信用できそうと感覚で思う方が多いのではないでしょうか。

このことは、特にBtoBビジネスにおいては影響が出ることがあります。BtoBビジネスでは取引を始める前に「与信」を行って、取引先の信用度を確かめることがあるからです。そのため、「資本金額がビジネスチャンスにも影響する」ということも覚えておきましょう。

【6】経営者自身の生活費とのバランス

多くの方は、自分で必要資金を用意してから起業しているかと思います。

そのときに、出資金と手元に残すお金のバランスを考えておくことが大切です。しばらく売上がないので役員報酬を支払えないなど、生活費の心配があれば、生活費を多めに残しておくとよいでしょう。

迷ったら「創業計画書」を作成する

資本金をいくらにするか迷ったときや創業後に融資を受けたいときは、「創業計画書」の作成をおすすめします。

創業計画書を作ることで、頭の中で漠然としていたビジネスプランをより明確にすることができます。また実際に融資を受けるためにも必要になるので「創業計画書(事業計画書)」の作成を検討してもよいでしょう。日本政策金融公庫が使用している創業計画書のひな形なら、ネットから簡単に入手できます。

創業時の資金計画は、「運転資金」+「設備資金」=「出資金」+「借入金」となります。ちなみに日本政策金融公庫の創業融資の実績を見ていると、創業企業について貸付の限度額を500万円程度に設定する傾向が見られます。

また、税理士などの専門家に相談するのもおすすめです。さらに、会社設立の手続きや会社設立後の税務などに関する悩みや疑問がある場合は、税理士がワンストップで解決してくれることもあります。

おわりに

資本金は自由に決定することができますが、あまりにも少ないと事業に支障を来たす恐れもあります。また、金額によって税金や税制面にも影響するため、その点も踏まえた上で慎重に決めることが大切です。

資本金や会社設立について税理士に相談したい場合は、「会社設立に強い税理士」を選ぶとよいでしょう。

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