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事業承継税制とは?改正後の要件やメリット・デメリットを解説

事業承継税制という、事業承継にかかる税負担を軽くするための制度があります。この特例制度を利用すると相続税や贈与税が免除されたり、納税猶予が受けられることになります。

事業承継を考えている経営者は、自社株を後継者に譲ったときにかかる税金について理解しておくことが大切です。この記事では、法人における事業承継税制の概要や適用要件などを解説します。

目次

事業承継税制とは

経営者が亡くなって相続人が株式を相続すると相続税が、生前贈与によって後継者が取得するときには贈与税が課税されます。

「事業承継税制」は相続や贈与によって株式等を取得した場合にかかる相続税・贈与税の納税猶予が受けられる制度のことです。

中小企業庁のホームページによると、日本企業の実に99.7%は中小企業が占めており、日本経済の根幹を支えていますが、一方では後継者に課せられる多大な税負担の影響から、事業承継がスムーズに進まず、会社の存続に支障が出ることが問題となっていました。

そこで、株式等を後継者に移転する際に発生する贈与税や相続税の納税を猶予することで、中小企業の事業承継の円滑化を図ろうというのが、事業承継税制が導入された主な目的です。

事業承継税制は「経営承継円滑化法」の制定にともない2009年に創設されましたが、制度利用の要件が非常に厳しく、活用しにくいと言われていました。

このような状況を受けて、2018年の税制改正により、適用要件が大幅に緩和された特例措置が設けられました。

2018年税制改正による変更点

今回10年間の時限措置として設けられた「特例措置」と、改正前の「一般措置」との主な違いについては以下のとおりとなります。

 特例措置一般措置
対象株数全株式総株式数の最大2/3まで
納税猶予割合100%贈与:100%
相続:80%
承継パターン複数の株主から最大3人の後継者複数の株主から最大1人の後継者
相続時精算課税の適用60歳以上の者から20歳以上の者への贈与60歳以上の者から20歳以上の推定相続人・孫への贈与

本記事では、主に「特例措置」について解説していきます。

相続時精算課税制度との併用について

「相続時精算課税制度」とは、60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子または孫に対し贈与した場合に、総額2,500万円までが非課税になる制度です。

贈与の方法としては基本的に、1年間で合計110万円まで非課税となる「暦年課税制度」もありますが、受贈する非上場株式等以外の財産が110万円以上ある場合には、こちらを適用することもできます。

これまでの一般措置では「受贈者が20歳以上の推定相続人や孫」といった親族の場合のみ適用可能でしたが、今回設けられた特例措置では、第三者に対する贈与でも適用が可能になりました。

これにより、後継者を親族に限定する必要がなくなり、さまざまな可能性を考えて事業承継できるようになったのです。

ただし、贈与者となる先代が亡くなり相続が発生したときには、相続時精算課税制度を利用して受贈した財産に対し相続税が課せられることになります。このとき、受贈者が第三者だと相続税の基礎控除は適用されません。また、相続税の2割加算が適用されてしまう点には注意しましょう。

事業承継税制のメリットとデメリット

業績のよい中小企業の場合、株式の価値は業績に比例して高い評価額となるため、突然相続が発生すると、後継者は多額の相続税を負担しなければなりません。

相続税は「現金一括納付」が原則なので、納税できるだけの現金が準備できていないと、事業承継がスムーズに進まず、最悪の場合廃業という可能性も出てきます。

事前に事業承継税制を使った生前贈与をすれば、相続税が節税できるだけでなく、対象となる株式に対する贈与税が猶予されますし、将来的に相続が発生すれば、猶予されていた贈与税は免除になるという大きなメリットがあります。

事業承継税制を利用することで、事実上、株式にかかる贈与税や相続税は100%免除されるため、後継者にかかる納税負担を大幅に軽減できるのです。

一方で、事業承継税制は制度が開始してから間もなく、また、利用するための要件が細かく規定されているため、精通している専門家が少ないという懸念があります。

さらに免除が取り消された場合には当初の納税額に加え、利子税も納めなくてはならないというリスクもあります。その場合、本制度を利用せず納税した方が結果的に納税額が少なくすむ可能性もありますので、十分に検討してから申請しましょう。

贈与税・相続税の納税猶予及び免除について

都道府県知事の認定を受けている非上場企業において、会社の後継者が株式の全部または一部の贈与を受けて事業を承継する場合は、贈与税の全額が納税猶予を受けられます

また、猶予を受けている間に先代経営者が死亡した場合などには、納税猶予されている贈与税の納付が全額免除されることになります。

さらに、経営者が亡くなり、会社の株式の全部または一部を後継者が相続し、事業を承継する場合は、相続するすべての株式に対して本来納付すべき相続税の全額が納税猶予を受けられます

制度の適用後、非上場株式等を保有し続けている間は納税が猶予されます。ただし、後継者が代表を退くなど一定の条件に当てはまる場合には猶予された税額に加えて利子税を併せて納付しなくてはなりません。

猶予が受けられなくなるケース

事業承継税制が適用できた場合でも、そこから5年間については一定のルールを守っていかなければなりません。主なルールとしては以下の通りです。

  • 後継者が会社の代表者としてあり続ける
  • 後継者が自社株式を保有し続ける
  • 会社の雇用の8割を維持する(5年間の平均。業績悪化などの例外は除く)

ルールが守れなくなった場合は、猶予されていた税金に利子税(年利0.8%)も含めて納税しなければなりません。

また、5年経過した後についても自社株式については引き続き保有し続けなければならず、途中で売却した場合は、猶予されていた税金の納税が必要です。ただし、利子税については免除されます。

猶予対象となる納税額の計算方法

実際に猶予対象となる納税額の計算は贈与税・相続税それぞれで以下のように計算します。

贈与税における猶予税額の計算方法

<ステップ1>
1年間で贈与を受けたすべての財産の価格を合計し、その合計額に対し贈与税額(A)を算出。

<ステップ2>
贈与された財産が本制度の適用を受ける非上場株式等のみと仮定し、贈与税額(B)を算出。この(B)の金額が納税猶予が認められる贈与額となります。

なお、相続時精算課税制度を併用する場合には、特別控除額の2500万円を差し引いた金額に20%の税率をかけて算出します。

<ステップ3>
(A)から(B)を差し引いた税額については通常通り申告期限までに納付します。

相続税における猶予税額の計算方法

<ステップ1>
課税価格の合計額に対する相続税総額のうち、後継者が相続した財産の課税価格に対する相続税額(A)を算出。

<ステップ2>
相続した財産が本制度の適用を受ける非上場株式等のみと仮定し、後継者の相続分に対して相続税額(B)を算出。この(B)の金額が納税猶予が認められる相続税額となります。

<ステップ3>納税する相続税を計算する
(A)から(B)を差し引いた税額については通常通り申告期限までに納付します。

事業承継税制の適用要件

事業承継税制を利用するためには、次の適用要件をすべて満たしていることについて、「都道府県知事の認定」を受ける必要があります。適用要件は贈与税と相続税とでそれぞれ異なります。

贈与税の納税猶予及び免除

対象要件
会社の要件・非上場会社である
・中小企業基本法の中小企業(※1)である
・資産管理会社や風俗営業会社に該当しない
・常時雇用している従業員が1人以上いる
・直前の事業年度の総収入金額が0ではない など
後継者(受贈者)の要件・会社の代表権を有している
・20歳以上である
・役員等の就任から3年以上経過している
・後継者および後継者と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有している
先代経営者(贈与者)の要件・会社の代表権を有していた
・贈与時に会社の代表権を有していない
・贈与の直前において、贈与者及び贈与者と特別の関係がある者で決済数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多く議決権数を保有していた
担保の提供・納税額に見合う担保を提供すること
(特例を受ける対象株式等のすべてを担保として提供してもよい)

※1 中小企業とは
中小企業経営円滑化法で定義されている企業で、下記の表のとおり業種ごとに従業員数および資本金の要件があります。

業種いずれかを満たすこと
資本金の額または出資の総額常時使用する従業員の数
製造業・建設業・運輸業・その他3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
小売業5,000万円以下50人以下

適用対象外になる資産管理会社とは

上記に該当する中小企業であっても、不動産を管理することを目的するような資産管理会社については、事業承継税制の適用対象外となります。

ただし、血縁関係のない従業員を5人以上雇用していて、事務所を構えるなど会社としての事業実態があれば例外的に適用を受けられる場合もあります。

相続税の納税猶予及び免除

対象要件
会社の要件・非上場会社である
・中小企業基本法の中小企業(※1)である
・資産管理会社や風俗営業会社に該当しない
・常時雇用している従業員が1人以上いる
・直前の事業年度の総収入金額が0ではない など
後継者(受贈者)の要件・相続開始日の翌日から5か月を経過する日において会社の代表権を有している
・相続開始のときにおいて、後継者および後継者と特別の関係がある者で、総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権を保有している
先代経営者(贈与者)の要件・会社の代表権を有していた
・相続開始の直前において、被相続人及び被相続人と特別の関係がある者で総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、後継者を除いたこれらの者の中で最も多く議決権数を保有していた
担保の提供・納税額に見合う担保を提供すること
(特例を受ける対象株式等のすべてを担保として提供してもよい)

事業承継税制の手続き

事業承継税制の適用を受ける際には、次の流れに沿って手続きを行います。

1)特例承継計画の策定

まずは、事業承継の予定時期や承継するまでの経営の見通し、承継後5年間の事業計画などを記載した「特例承継計画」を策定します。「認定経営革新等支援機関」として認定されている税理士などにその内容を確認してもらい、所見を記載してもらった上で都道府県庁に提出します。

なお、提出可能期限は2023年3月31日までにとなります。

2)経営承継円滑化法の認定を受ける

「特例承継計画」の確認を受けたら、会社、後継者、先代経営者の各要件を満たした上で、「経営承継円滑化法」の認定を受けられるよう都道府県知事へ申請します。

認定の申請期限は贈与・相続でそれぞれ下記のとおりです。

  • 贈与:贈与を受けた年の10月15日〜翌年1月15日まで
  • 相続:相続開始の翌日から5か月後〜8か月後まで

認定には有効期間があり、事業承継税制の特例を受ける贈与税・相続税の申告期限の翌日から5年間となります。

3)税務署へ申告書等の提出と担保の提供

贈与税・相続税の申告期限までに、事業承継税制の適用を受ける旨を記載した申告書等の書類を税務署へ提出します。また、納税猶予される税額および利子税の額に見合う担保の提供が必要です。

申告期限は下記のとおりです。

  • 贈与税:
    贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までに、受贈者の住所地を管轄する税務署に対して申告します。
  • 相続税:
    相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に、被相続人の居住書を所轄する税務署に対して申告します。

4)猶予継続の手続き

事業承継税制による納税猶予を継続させるには、適用後5年間にわたって毎年「年次報告書」を都道府県庁へ提出することと、「継続届出書」を所轄の税務署へ提出する必要があります。6年目以降は3年に一度、「継続届出書」の提出のみ必要となります。

継続届出書を提出しないと、納税が猶予されている税金全額と利子税の納付が必要になりますので注意しましょう。

おわりに

事業承継税制の適用を受けられれば、贈与や相続における後継者への負担なく、円滑に株式を移転させてスムーズに事業承継を進めることができます。メリットの大きい制度ですが、適用を受けるためには事前に要件を満たすための準備が必要です。

事業承継を成功させるためには、税金のことだけではなく、事業承継税制の適用要件や手続きについて精通している経験豊富な税理士の力を借りて、生前から計画的に対策を講じていくとよいでしょう。

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