ふるさと納税の返礼品に課税判決!無税で返礼品をもらったらいけないの?
確定申告

ふるさと納税を活用して、全国の美味しい食べ物や特産品を受け取ることを楽しみにしている人も多いだろう。ところがある日突然、税務署から「税金がかかる」といわれたら……。そんな驚きの判決が、2025年5月に最高裁で確定した。
2年間に、ふるさと納税を通じて返礼品490件(寄付総額約660万円)を受け取った女性に対し、税務署は返礼品が「経済的利益」であり、一時所得として課税対象になると通知。女性はこの返礼品課税を不服として税務署を提訴した。
2024年2月に横浜地裁が税務署を追認する司法判断を下し、女性は高等裁判所に控訴するも同年12月に棄却。さらに最高裁も上告を退けたことで、2025年5月に最終的に敗訴が確定。各自治体に照会し、返礼品の調達価格を約280万円と算定し、40万円超の追徴課税を決定した。
なお、ふるさと納税の返礼品は、総務省が定めた寄付金額の3割以下の価格にするという「3割ルール」がある。税務署の算定では約4割の評価額であったことから、女性は「返礼品の価値は3割で算定すべき」と訴えたが退けられた形だ。
また横浜地裁は「納税者は各自治体に対し、調達価格を確認するなど適正な時価を把握したうえで申告する必要がある」と指摘した。
この判決により、多額のふるさと納税を行う場合は注意が必要なことがわかるが、そもそもふるさと納税の返礼品は課税の対象になるのだろうか。三宅伸税理士に聞いた。
●ふるさと納税の返礼品は、原則「一時所得」の対象に
――ふるさと納税の返礼品は、課税対象となるのでしょうか。課税対象となる場合、いくら以上の返礼品を受け取った場合に課税の対象となるのでしょうか。
ふるさと納税の返礼品は、原則として「一時所得」として課税されます。
「一時所得」とは懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金等の臨時的に得た収入の事を指します。
一時所得は臨時収入であることや、少額であれば課税の対象にしないことで事務負担を軽減する目的から、年間の一時所得の合計額が50万円以下であれば課税されません。税法上、一時所得は以下の計算式で計算します。なお実際には、50万円を控除した残額の2分の1に対して所得税が課せられます。
・収入金額-必要経費-特別控除(最高50万円)
会社員(ふるさと納税以外で確定申告が不要な方)の場合、ふるさと納税による返礼品の価額(収入金額)が90万円以下であれば、確定申告が不要で課税されません。
一方、会社員以外の方や、副収入がある方の場合は、返礼品の時価合計が50万円を超えると課税となる可能があります。
●保険の解約返戻金など他の一時所得と合算して計算
――ふるさと納税の返礼品の価格では課税対象外となっても、ほかの一時所得があることで、返礼品も課税対象となるケースもあるのでしょうか。
その通りです。
ふるさと納税の返礼品単体では、一時所得としての課税対象額が50万円未満であっても、他の一時所得(保険の解約返戻金、懸賞金等)と合算した結果、年間の一時所得の合計額が50万円を超える場合は、返礼品の分も含めて課税対象となる可能性があります。
このため、ふるさと納税の返礼品に限らず、1年間に得たすべての一時所得について把握・記録しておくことが重要です。
●該当する人は、寄付前に返礼品の評価額の確認が必要
――この裁判では、返礼品の3割ルールが適用されず、自身で適正な時価を把握することが求められました。ふるさと納税の返礼品のみで課税対象となるケースは希かとは思いますが、該当する人はどのように対応すればいいでしょうか。
税務当局は今回の裁判で、自治体に返礼品の評価額の調査を行ったとのことです。これを受けて、今後は利用者自身が返礼品の市場価格を、自治体や関連情報を通じて確認・記録することが求められます。
ふるさと納税は、地域貢献の善意に基づく制度であり、利用者に過度な自己責任を求めるのは酷とも言えますが、課税の公平性の観点から理解できる部分もあります。
また今年の10月からは、寄付者に対するポイント等の付与制度が禁止される見込みです。そのため、今年は寄付のタイミングにも注意が必要です。
これらにより柔軟性は失われる一方で、制度の透明性や公平性が向上する可能性もあります。今後は寄付前に返礼品の内容や評価額を十分に確認し、適正な時価の把握と記録を行うことが重要になってくるでしょう。
【取材協力税理士】
三宅伸(みやけ・しん)税理士
大阪府立大学経済学部卒業後大手リース会社勤務。クラウド会計の導入をすすめ、インボイス制度や電帳法にも対応できるストレスフリーな事務環境を提供。常にお客様の立場に立って考え共に成長していくことをモットーに法人及び個人の会計税務、起業支援、相続等と幅広く活動している。また、無申告や税務調査のサポート対応も行っている。
事務所名 :三宅伸税理士事務所
事務所URL:https://miyake-tax.jp/