相続税申告の税理士報酬はいくら?料金実例や加算されるケースを紹介
(監修:税理士法人シグマパートナーズ 堀内 太郎 税理士)
相続税申告を税理士に依頼する前に、報酬について知っておきましょう。
というのも、料金の安さだけで税理士を選ぶと、かえってコストがかかることもあるからです。
そこで【実際の料金例】を交えて、相続税の税理士報酬について解説します。
目次
【実例を紹介】相続税申告の税理士報酬

相続税申告の税理士報酬について、「具体的にいくらかかるか」は気になるところでしょう。
そこでまずは、税理士ドットコムの<税理士紹介サービス>に寄せられた10万件のご相談の中から、実際に相続税申告を税理士に依頼した方の料金実例を紹介します。
実例1 相続税申告 報酬 41万6000円
相続した財産:不動産数件(賃貸住宅1件含む)、預貯金、有価証券/総額 約4,000万円
「税務申告自体が初めて」ということで、税理士紹介サービスにお問い合わせくださった埼玉県のお客様です。報酬金額と依頼業務を契約前にしっかり確認し、納得した上で経験豊富な税理士を選択されました。
実例2 相続税申告 報酬:105万6000円
相続した財産:預貯金、有価証券+不動産(土地、賃貸住宅、居宅)/総額 4,500万円 ※不動産含まず
申告期限が1か月後に迫る中、お急ぎで税理士を探していた東京都のお客様です。相続内容が複雑な上にスピード対応が求められたため通常より高めの報酬金額となりました。
実例3 相続税申告 報酬:50万円
相続した財産:不動産(居宅)、預貯金、自動車/総額 8,000万円
宮城県にお住まいの方より、相続人であるお母さまに代わってお問い合わせくださいました。高齢のお母さまでも安心しておまかせできるよう、ご自宅から近い税理士事務所をお選びになりました。
実例4 不動産評価表作成料:5万円
相続財産:不動産(土地)ほか
千葉県のお客様より、土地の評価のみをお願いしたいとのお問い合わせです。申告は自身で行うものの、相続された土地の評価の算出ができないとのお悩みでした。複数の候補の中から不動産関連の資格を持っている税理士に、不動産評価表作成のみをご依頼した契約となりました。
相続税申告の一般的な相場金額
相続税申告の基本報酬は、相続財産額の0.5~1%の金額がひとつの目安です。相続財産額が高額になるにつれて、このパーセンテージが低くなる傾向にあります。
おおよそ、以下のように税理士報酬の金額を定めている税理士事務所が多いようです。
相続財産額 | 税理士報酬 |
---|---|
~5000万円 | ~50万円 |
5000万円~7000万円 | 25万~70万円 |
7000万円~1億円 | 35万~100万円 |
1億円~3億円 | 50万~150万円 |
3億円~5億円 | 90万~200万円 |
5億円~10億円 | 150万~300万円 |
10億円~ | 要相談 |
しかしながら、前述の報酬実例でもわかるように、実際の金額は各ケースによって大幅に差があります。
相続税申告の税理士報酬はどう決まる?高くなる5つのケース
税理士報酬には規定がなく、相続財産の金額に基づいて決まる場合がほとんどです。
ただし、相続税の計算が複雑になる場合は、さきほどの基本報酬に「加算(追加)報酬」が上乗せされることもあります。
税理士報酬が高くなる具体例として、以下の5つのケースが挙げられます。
相続人が複数人いる場合
相続人の人数が多いほど手続きが増えることから、報酬が加算されることがあります。
相続人2人目以降、1人あたり基本報酬✕10%前後が加算されるケースが多いようです。
相続財産に土地がある場合
土地は場所や形状などの実態により評価額が異なります。正しく評価するためには調査に時間と手間がかかるため、報酬が加算される可能性があります。
土地がある場合は、1利用区分ごとに4〜6万円程度加算されるケースが多くなっています。なお、不動産鑑定士に調査を依頼した場合は別途鑑定料が必要です。
非上場株式がある場合
上場株式は市場で取引されている価格で評価できます。一方で非上場株式は市場で取引されておらず、会社の規模や業績に応じて評価額が決まるため計算が複雑です。そのため報酬が加算される可能性があります。
非上場株式がある場合は、1社につき15万円程度加算されることもあります。
申告期限まで時間がない場合
相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から起算して10か月以内」と規定されています。この期限を過ぎてしまうと「延滞税」などのペナルティが課されることもあります。
そのため申告期限が迫るタイミングで依頼すると、税理士は急いで手続きを行わなければならず、通常よりも料金が高くなることが考えられます。
少しでも税理士費用を抑えたいのであれば、なるべく早いタイミングで税理士への相談を検討するのがよいでしょう。
書面添付制度を利用する場合
書面添付制度とは、申告書を作成する過程で実施した作業内容、確認した資料、判断基準などを記載する書面を申告書に添付する制度です。
この制度を利用する場合、税理士によっては5万円程度の追加料金が発生することもあります。
書面添付をすることで、税理士が税務当局の調査目線で被相続人の財産を厳しく精査し、相続税申告を行ったことを示すことになります。
そのため税務調査の対象になりにくくなるといわれていますが、その分精度の高い書類を作成しなくてはならず、税理士の作業負担が増えるため費用が加算されることがあるのです。
税理士報酬に関する注意点
相続税の申告を税理士に依頼する際には、以下のことにも注意しましょう。
税理士報酬は相続財産から控除できない
被相続人の債務や葬式にかかった費用であれば、相続税の計算において相続財産額から差し引くことができます(債務控除)。
しかし、税理士に支払う報酬は相続財産から差し引くことができませんので注意しましょう。
税理士報酬をだれが負担するかを決める
相続人が複数人いる場合でも、できれば1人の税理士にまとめて依頼するようにしましょう。相続人それぞれが別の税理士に依頼すると、同じ相続に対する申告にも関わらず内容が異なってしまう可能性もあり得るからです。
複数の相続人に対し税理士が1人となると「税理士報酬はだれが支払うか」が懸念されますが、負担割合などに特に決まりはありません。
相続人が平等に負担するか、相続した財産が多い人が負担するかなど協議して決めましょう。
報酬金額だけで税理士を選ぶのはNG
報酬は安ければ安いほど嬉しいですが、「正確な申告書」を作成してもらうためには、金額だけで税理士を決めるのはベストではありません。
たとえ報酬金額を安くおさえられたとしても、「まったく節税できていなかった」「申告ミスで追徴課税を支払うことになった」という事態になってしまっては、結果的にコストが高くなる可能性もあるのです。
そこで重要なのが、「相続税申告に強い税理士かどうか」という視点です。
相続税に強い税理士を選ぼう
令和2年度の相続税申告件数は約12万件なのに対し、税理士登録者数は約7万9,000人となっています(※)。単純計算だと、税理士1人あたりの相続税申告件数の平均は年間1.5件程度ということです。
そのため、年間数十件以上の申告を継続して行っている税理士であれば、相続税申告の実績が豊富であると考えられます。
そのような税理士であれば「小規模宅地等の特例」などの制度を活用して適切に節税対策を講じてくれたり、将来の二次相続を見据えた提案など、総合的なアドバイスを受けることができるでしょう。また、実績の少ない税理士よりも申告内容の正確性が高いことが期待できます。
- 相続税に強い税理士の選び方 - 5つのポイントや相談すべきタイミング
- 「小規模宅地等の特例」で相続税評価額が80%減!適用要件や計算方法を解説
- 「二次相続」で相続税が高くなる?!その理由や対策方法とは?
- 相続税を節税するための対策6つ〜正しく効果的な方法とは?
※参考資料:国税庁WEBサイトより
税理士選びでお悩みの方へ
相続税申告は一生に何度も経験することではないため、税理士を自力で探したり、依頼すべきかを見極めることが難しい場合もあるでしょう。
税理士報酬の目安を知っておくことが税理士選びの基準のひとつになりますが、ただ安い・高いだけで判断するのは得策ではありません。
「相続税に詳しい税理士を探したい」「顧問税理士を探したい」など税理士選びでお困りの方は、税理士ドットコムの<税理士紹介サービス>までお問い合わせください。経験・実績豊富なコーディネーターがご要望に合う税理士をご提案します。
予算が気になる場合は<税理士の費用・料金相場>を参考に、おおよその料金を把握しておくとよいでしょう。
税理士選びでお悩みなら税理士ドットコムにご相談ください

※ショッパーズアイ調べ 2020年6月調査