税理士に決算申告を依頼するメリットや報酬の相場
決算申告とは、各会社の会計期間における収入と支出を元に、利益や損失を算出し、1年間の業績や財務状況を明らかにする手続きのことです。決算業務で作成した決算書を受けての申告書作成、さらに法人税や消費税など納める税金の計算、支払いをするまでを指します。
作成しなければならない書類が多岐に渡るため、税理士などの専門家の手を借りて対応するのが一般的です。なお、税理士に決算業務を依頼する際には、決算申告のみ依頼する場合と、顧問契約を結び、決算申告も合わせて依頼する場合があります。
- 決算申告の税理士報酬の相場は?
- 今の税理士の決算料が高いから、税理士を変えたい。
- 決算申告だけではなく、顧問契約をするメリットは?
ここでは「決算申告のみを依頼する場合」と「顧問契約と合わせて依頼する場合」のそれぞれの費用の相場と、メリット・デメリットについて紹介します。
目次
税理士への依頼は「決算申告のみ」か「顧問契約」がある
法人の決算申告は、企業の成績表である「決算書」と、税金を申告するめの「申告書」などの書類を作成し、会社が定めた事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内に行う必要があります。決算から税務申告までの業務は、書類の多さや手続きの複雑さなどを考えると、税理士に依頼するのが安心です。
決算を税理士に依頼する際によくある相談のひとつが「決算申告だけを税理士に依頼するのは損か得か」というものです。確かに決算申告のみ依頼したほうが費用は安くて済むのが一般的です。ただし会社によっては、決算のみの依頼ではなく、顧問契約を結んだほうがいいケースもあります。
それぞれにかかる費用やメリット・デメリットを考慮した上で、適した方法を選択しましょう。
決算申告のみを依頼する場合の税理士報酬の相場
まず、顧問契約を結ばずに、決算申告業務だけを依頼した場合について説明しましょう。
決算期を迎え、会社で作成してきた1年分の帳簿や会計ソフトのデータを税理士に渡して、決算申告書を作成してもらうという流れが一般的です。
その場合に税理士に支払う報酬は、会社の売上規模などにもよりますが、15万円~25万円が相場となります。
また、帳簿の作成や会計ソフトへの入力などもしておらず、経費などの計算から帳簿付けも含めて依頼するケースもあるでしょう。
さらに、会社によっては源泉徴収票の作成や年末調整、法定調書、償却資産申告書なども合わせて依頼するケースもあります。
このように、帳簿の作成から税理士に依頼する場合や、その他の業務も合わせて依頼する場合は、その分の作業も発生するため追加で10~20万円ほどがかかることが一般的です。
もちろん、依頼する業務が多く煩雑になるほど金額は高くなります。
決算申告のみを依頼するメリット・デメリット
前述したとおり、決算申告を依頼するといっても、業務の範囲はさまざまです。依頼内容にもよりますが、共通するメリット・デメリットとしては次の点が挙げられます。
【メリット】報酬が安い
決算申告のみ単発で依頼することで、顧問料などの固定費がかからないため、費用を安く抑えられることがいちばんのメリットといえます。
起業したばかりで売上げが不安定な会社からすれば、税理士への報酬を月に数万円~年間数十万円も支払うことは大きな負担となります。
たとえば顧問契約料が月額3万円とすれば、固定費は年間で36万円、決算料が5ヶ月分とすれば15万円が別途発生します。
決算申告だけを契約する場合は、この固定費を大きく削減できることが最大の魅力です。
【メリット】毎月のやり取りが不要
決算申告だけなら、税理士と定期的なやり取りを行う必要ありません。やり取りに時間を避けない場合や、税務的な相談を頻繁に行う必要がない場合などは、決算申告だけを依頼する方法もあるでしょう。
ただし、決算申告を税理士に依頼し、決算処理を行う過程では、仕訳や帳簿に不明点がある場合は、税理士とのやり取りが発生しますので、注意しましょう。
【デメリット】効果的な節税対策ができない
効果的な節税対策のためには、日頃からの対策を行っていることが重要です。ところが決算業務のみだと、年に1度だけ会社の状況を見ることになるため、節税対策を充分に行うことができません。
また、決算申告後に税務調査が行われたとしても、顧問契約がないと対応できない可能性などもあるので、こちらもデメリットとなり得るでしょう。
決算申告のみの依頼に適した会社は?
前述したメリット・デメリットを踏まえて、次の2つに当てはまる会社は、スポットでの決算申告の依頼に適しているといえるでしょう。
1.売上が少ない小規模な会社
まだ起業したばかりで売上が不安定だったり、事業が小規模で売上も少ない企業が、顧問契約をしたことによって、経営が圧迫されてしまっては本末転倒です。
事業が小規模なうちは、決算申告の内容もそれほど複雑ではないため、決算申告のみの依頼でもさほど問題がない可能性があります。
経理スタッフを雇い、税務申告書までを作成するなど、税理士へ依頼する業務を減らして、コストカットをしている会社もあります。
2.申告書作成以外は全て自社でできる
経営者も含め、経理ができる人がいれば、決算申告のみの依頼でも良いといえるでしょう。
一昔前までであれば、経理や会計業務のほとんどが手作業であり、専門的な仕事であるため、簿記の深い知識が必須でした。ところが現在では、会計ソフトの普及により、簿記の知識があまりない人でも簡単に記帳などの会計業務を行うことができます。
そのため、日頃の会計・経理業務は自社で行うことができるなら、税理士には決算申告に絞って依頼してもいいでしょう。
顧問契約がある場合の決算申告の税理士報酬相場
次は、顧問契約を結んだうえで決算申告業務をしてもらう場合について説明しましょう。
毎月もしくは数ヶ月に1度、作成した帳簿を税理士にチェックしてもらう、または税理士に帳簿を作成してもらい、年度末を過ぎた段階で税理士が決算申告書を作成するという流れが一般的です。
報酬相場は、会社の売上規模などにもよりますが、月額顧問料の4~6ヶ月分が相場となります。年間の売上と決算申告の税理士報酬の相場をまとめると、およそ次のとおりとなります。
年間売上 | 税理士報酬(決算料) |
---|---|
1000万円未満 | 10万円〜15万円 |
1000万円以上3000万円未満 | 12万円〜18万円 |
3000万円以上5000万円未満 | 14万円〜21万円 |
5000万円以上1億円未満 | 16万円〜24万円 |
1億円以上5億円未満 | 24万円〜36万円 |
5億円以上 | 要相談 |
こちらはあくまで相場なので、会社の業種や状況、ニーズによっても報酬は変動します。「このくらいの料金にしてほしい」という希望があればその旨を税理士に伝え、その料金で提供できるサービスを提案してもらうという方法もあります。
顧問契約も合わせて依頼するメリット・デメリット
税理士に税金の申告を委任するということは、経営状況や財務状況に加え、自分や家族の資産状況にも踏み込んで話す場面が多々あります。
そうした情報を得ることで、税理士はさまざまな提案をすることができるのです。もちろん守秘義務は税理士法にも明確に定められているため、プライベートが漏れることはありませんが、心情として他人に全てを話すことは、抵抗がある方もいるでしょう。
月々の顧問契約を結び、毎月会うことで、人となりを知ることもでき、お互いの経験や心情を話すことでより深い信頼関係が築けます。この信頼関係がより良い税務業務に繋がり、税理士の能力を最大限に発揮できるのです。
これらに加えて、税理士と顧問契約を結ぶメリット・デメリットとしては、次の点が挙げられます。
【メリット】節税対策や経営相談ができる
世の中には節税の本、インターネットでも節税情報があふれています。
それらを参考にして節税する方法もありますが、数冊の本やネットの情報だけでは勉強しきれないほど税法は複雑であり、情報も膨大なため、専門家でない個人が調べることには限界があります。
また、時には節税しないほうがいいケースもあります。
例えば、近い将来に設備投資を考えているのに赤字での決算申告をすれば、その後の融資は難しくなります。さらに、可能な費用控除をすべて使いきってしまい次年度以降の税額が急増、これを引き金に倒産してしまうといった危険もあります。
税理士であれば、こうした状況や経営方針、税負担のバランスを見ながら総合的な判断が可能です。顧問契約があることから、税理士が会社の状況をあらかじめ把握しているので、効果的な節税対策を行いやすいというメリットがあります。
【メリット】融資対策に有利
銀行や各金融機関は決算書を見て融資をするかどうかを判断します。つまり、決算書が正確であるかどうか、その裏づけが何かを金融機関側は探ります。
そういった申請書類の一部には税理士の署名欄もあるため、自社で作成した決算書よりも、税理士が作成した決算書の方が、格段に信頼性が高くなります。
そして、顧問契約があれば、銀行員が求める書類の提示も素早く対応できますし、毎月の監査による月次の試算表があれば、その信頼性はさらに高まります。
【デメリット】費用負担が大きい
顧問契約を結べば、毎月の顧問料が発生します。
毎月、毎年、固定の費用が発生するため、負担が大きいと感じれば、この点がデメリットとなり得るでしょう。
しかし、企業にとって最適な顧問税理士であれば、節税効果などのメリットが費用負担というデメリットを上回るケースも多くあります。。
顧問契約も合わせての依頼に適した会社は?
前述したメリットデメリットを踏まえて、次の2つに当てはまる会社は、顧問契約も合わせて依頼することがおすすめだといえます。
1.利益が大きい会社
利益が大きくなればなるほど、税理士報酬の負担割合は小さくなっていきます。そう考えると、損益計算書による必要経費の可視化や見直し、節税対策などが、税理士への報酬とは比べ物にならないほど重要な意味を持ってきます。
会社の資金繰りは人の血液に例えられます。血液の循環が悪くなって、体のある部分が悪くなっても気がつかず、倒れた時には手遅れだったという結果は避けたいものです。そのためには定期的に医者に診察してもらい、悪い部分を早期発見してもらうことが大切になります。
税理士との月次顧問契約は毎月の健康診断です。専門家の目で悪い部分を見つけ出し、早期の改善を可能とします。小さなコストで大きな安心を享受することができるのです。
2.経理を担当できる人員がいない
決算申告だけの契約にして、社内で経理をするつもりが、時間に追われて結局丸投げになってしまい、最終的な報酬金額が高くなってしまったというケースもあります。
経理は一昔前よりも簡易になってきてはいますが、作業が煩雑で時間を取られるというデメリットはあります。
もし経営者も含め、経理を任せられる人材がいない場合は、顧問契約をするのが有効です。顧問契約していれば、経営者や社員が指導を受けて経理業務をスキルアップすることも可能です。社内の人員が経理業務に慣れてから、決算申告だけの契約へ変更を検討する方法もあります。
税理士事務所によっては経理支援でしばらくの間、スタッフを派遣してくれる場合もあります。このように顧問契約の方がコストはかかりますが、コスト以上のパフォーマンスと明確な経営ビジョンを会社にもたらしてくれるといえるでしょう。
また、経理は誰にでも任せて良いものではなく、横領などの不正も抑止する必要があります。その点、顧問契約を結んで、第三者の税理士が毎月確認することで、抑止力へとつながる効果もあります。
依頼内容で迷ったら税理士紹介サービスを活用
このように税理士に決算申告を依頼する場合、「決算申告のみ」か「顧問契約」か、どちらが得かは一概に答えがでるものではありません。
会社も税理士も千差万別であり、それぞれに有効な契約形態も千差万別なのです。判断に悩むときは、試しに何人かの税理士にあってみることをおすすめいたします。
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