不動産が相続財産の場合は要注意!相続税の過払い対策をしよう

2015年に行われた相続税法改正により、相続税の基礎控除額が大幅に縮小されたため、相続税の納税の対象となる人が増えています。今まで相続税なんて「人ごと」だと思っていた人でも、相続税を支払う可能性が以前より高くなっているのです。
従来から、相続税は過払いの多い税金であるため、相続税の納税義務者となる人は、過払いに注意しなければなりません。そこで今回は、事前にできる相続税の過払い対策についてご紹介します。
目次
相続税の過払いが発生している原因は土地にアリ
相続税の過払いは、相続財産が過剰に評価されていることにより発生します。特に、土地の評価は複雑であり、ルールも多岐にわたるため、正しく評価されないケースが多くなっています。
評価に差が出やすい土地とは、具体的には以下のような土地が該当します。
- 道路よりも低い土地
- 近隣よりも広い土地
- 間口の狭い土地
- 崖地・傾斜地
- 線路沿いの土地
- 高圧線下地
- 不整形地
- 水路に面している土地
- 山林
- 埋蔵文化財包蔵地
- 忌み地
- 土壌汚染のある土地
上記のような条件の悪い土地は、相続税評価額の減価要因となります。それなのに、減価要因がきちんと反映されず、高いままの評価となっていることがあります。
相続税の過払いは、こういった土地の減額評価が不十分なことが主な原因です。財産の中に複数の土地かある場合は、相続発生時には相続税の過払いに注意しましょう。
過払いを未然に防ぐ3つの対策
それでは、相続税の過払いを防ぐためには、どのような対策を取っておけば良いのでしょうか。ここでは、比較的お金をかけずにできる、3つの過払い対策をご紹介します。
相続に強い税理士を選ぶ
相続税の過払いの原因として多いのは、「相続税に不慣れな税理士が申告していること」。医者にも耳鼻科や皮膚科といった専門分野があるように、税理士にも得意としている分野があります。
ただ、税理士は医者のように「○○科」と専門分野をうたっていないので、依頼する側も専門性が分かりにくいことは事実です。
基本的には、多くの税理士が会計を専門としていることが多く、例えば会社経営に関する税務などで、普段依頼している税理士が相続税に強いとは限りません。そのため、相続税の納税義務のある人は、早めに相続に強い税理士を探し、相続税評価の相談をするようにしてください。
他の専門家による多面的な検討を依頼する
土地を多く所有している人は、税理士だけでなく、不動産鑑定士や土地家屋調査士も加えて相続税評価額を多面的に検討することも必要です。
不動産鑑定士は、普段から土地の評価を専門に行っていますので、減額要素を見落とさずに評価をしてくれます。
特に、道路との高低差や高圧線など、空間的な減価要因は見落とされてしまうケースも少なくありません。また、著しい騒音がある土地や、墓地に隣接した土地なども、減価要因となるにもかかわらず、見落とされることがあります。
土地の減価要因は、慣れないと正しく評価することが難しいので、普段から現地調査に慣れている不動産鑑定士に見てもらうことで、新たに減価要因に気付くこともあります。
また、土地家屋調査士による測量も、過払い対策の一つとなります。
測定してみた結果、公募面積よりも実際の面積の方が小さい「縄縮み(なわちぢみ)」の場合、実測面積で相続税を申告することができますので、公募面積で申告するよりも節税となります。
なお、公募面積よりも実際の面積の方が大きいことを「縄伸び(なわのび)」と言いますが、その場合は、測量した結果によっては、相続税の減額の対象となる面積要件を満たす制度を受けられることがあります。それが「地積規模の大きな宅地の評価」です。
「地積規模の大きな宅地の評価」で減額を受けるには、面積要件として三大都市圏であれば500㎡以上、それ以外の地域では1000㎡以上が必要です。さらに、その他の条件を満たせば、適用される可能性が出てきます。
「地積規模の大きな宅地の評価」が適用できそうにも関わらず、面積が少し足りていない土地は、念のためもう一度測量し直してもらいましょう。
コインパーキングで利用区分を分ける
土地の一部をコインパーキングとし、土地の利用区分を分けておくという対策も有効です。相続税では、土地は一筆(いっぴつ)ごとに評価をするのではなく、利用区分ごとに評価されます。
例えば、角地の広い土地などでは、角の部分だけコインパーキングとし、残りの部分をL字型の不整形の土地とすることで、全体の評価を下げることができます。
そのコインパーキングを一括借上げ駐車場としておけば、賃借権を設定することで評価額を10%減少することができるわけです。
また、広い土地の自宅では、土地の一部をコインパーキングとして、利用区分を分けることで、自宅を残したまま、土地の評価を下げることも可能です。
コインパーキングは大きな投資を伴わず、評価額を下げ、さらに賃料収入を生み出すことができます。アパート投資に気が進まない場合は、コインパーキングで手軽に相続対策を行うのも良いでしょう。
納税済みの過払いは還付請求も可能
なお、一度相続税を納めてしまった場合でも、相続税の申告から5年以内であれば、還付請求をすることができます。
相続税の申告は、相続開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に行います。この10カ月は決して長くないため、中には慌てて申告をする人もいるかもしれません。その結果、実際には土地の相続税評価額を減額できたのにかかわらず、相続税を払い過ぎてしまったということもあります。
そこで、国の方も相続税申告期限から5年以内であれば、内容変更を検討してくれる制度を設けています。5年以内に申告額の訂正を行い、過払いが認められれば、払い過ぎていた相続税が戻ってきます。
相続財産の中で評価に差が出やすい土地を持っていた人は、再検討してみてはいかがでしょうか。
おわりに
今回は、相続税の過払い対策について見てきました。相続税は土地の評価が十分に精査されないことにより、過払いが発生しているケースが多くなっています。
相続税の納税義務のある人・発生しそうな人は、まずは相続専門の税理士に相談することから対策を始めましょう。
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