駐車場経営にかかる税金は?節税対策から土地活用別の比較まで

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駐車場経営にかかる税金は?節税対策から土地活用別の比較まで

監修: 高木 澄典 税理士

土地を手放したいけれどなかなか値がつかない、相続で使う予定のない土地を取得した、など「使わない土地」の処遇で悩むケースがあります。そのような土地を放置してしまうと、固定資産税の負担が重くのしかかってしまうのです。

そこで、不要な土地の活用手段として挙げられるもののひとつが「駐車場経営」です。

本記事では、駐車場経営にかかる税金と節税対策について解説します。駐車場以外の土地活用方法との比較もしていますので、参考にしてください。

目次

駐車場経営の特徴

駐車場経営は高額な初期費用が不要で、修繕費用など維持にかかるコストはほとんどありません。そのため、元手が少なくても比較的簡単に転用できるというメリットがあります。

一方で、アパート経営などと比べると土地の利用効率が低く、収益性で劣ってしまいます。

つまり、ほかの土地活用方法と比べてローリスク・ローリターンであることが、駐車場経営の大きな特徴といえます。

月極駐車場とコインパーキングの比較

駐車場経営といえば、一般的に「月極駐車場」と「コインパーキング」が挙げられます。

月極駐車場を選択するメリットとしては、毎月一定の収入を得られることによる収益の安定性があります。ただし、空き状況が続くと収入が得られなかったり、賃料滞納などのトラブルが発生する可能性があります。

一方でコインパーキングの場合、工事や管理・運営を自身で行うことも可能ですが、専門業者に土地を貸して賃料を得る方法が一般的です。月極型と異なり賃料の取り立てに苦労することもありませんし、立地次第では高収益になることもあるでしょう。

ただし、機械の盗難・破壊などの犯罪リスクや、不正駐車で料金が未収となるリスクがあるのがデメリットです。委託業者を選ぶ際には、そのような犯罪対策のサポート体制がしっかりと整っているかどうかを確認しましょう。

駐車場経営にかかる税金

次に、駐車場経営にかかる税金について解説します。

所得税

駐車場経営では、収入から経費を差し引いた金額(所得)に対し所得税が課されます。この場合の所得は総合課税に該当し、給与所得など他の所得と合算した金額に応じて、5%から45%の7段階に区分された税率がかけられます(累進課税制度)。

所得税の速算表

参照:国税庁|所得税の税率

固定資産税

固定資産税とは、土地や建物などの固定資産や、機械備品などの償却資産を1月1日時点で所有している者に対して課税される地方税です。

納税額は、次の計算式によって算出され、毎年4月から6月にかけて市区町村から納税通知書が届くので、これに従って納税することになります。

固定資産税 = 課税標準額 × 標準税率(1.4%)

標準税率は自治体によって異なりますが、ほとんどが1.4%となっています(市区町村によっては最大0.3%の都市計画税が上乗せされます)。つまり固定資産税の金額は、課税標準額によって大きく左右されるということです。

なお、課税標準額は土地と設備部分で算出方法が異なります。

土地にかかる課税標準額

土地の課税標準額は、固定資産税評価額が基準となります。固定資産税評価額は、国税庁や全国の市区町村などにより、一部を除く全国の道路に付けられた、1㎡あたりの評価額(路線価)に面積を乗じて算出します。

固定資産税評価額 = 路線価(㎡)✕ 面積(㎡)

住宅用地の場合、上記で求めた固定資産税評価額の1/6または1/3が課税標準額となりますが、駐車場として使用する土地(雑種地)は固定資産税評価額がそのまま課税標準額となるため、住宅用地と比較すると土地の固定資産税は高くなります

(参考)地目と課税標準額
地目課税標準額
宅地住宅用地小規模住宅用地
/住宅用地で住宅1戸につき200㎡以下の部分
固定資産税評価額 × 1/6
一般住宅用地
/住宅用地で住宅1戸につき200㎡を超える部分
固定資産税評価額 × 1/3
非住宅用地商業地など住宅用地に該当しないもの固定資産税評価額
雑種地駐車場、ゴルフ場、遊園地、運動場など固定資産税評価額

駐車場の設備部分にかかる課税標準額

土地に以下のような設備を設置した場合は、評価額が一定額を超えると固定資産税の課税対象になります。

  • アスファルト舗装
  • センサー式停車機
  • 外灯
  • フェンス
  • 屋根
  • 機械式駐車場
  • 車止め

これらの設備のうち、取得費用が10万円以上のものを償却資産といいます。償却資産の評価額の合計が150万円を超えると、評価額に1.4%を乗じた固定資産税が課されます

駐車場経営に必要な設備は、規模にもよりますが200〜300万円程度の設備投資が一般的なので、固定資産税の負担はそれほど大きくはありません。

さらに、償却資産の評価額は次の計算式によって毎年取得費用から減額されていくので、固定資産税の負担は年々軽くなっていきます。

✓初年度:償却資産の評価額 = 取得費用 × (1 − 減価率 × 1/2)
2年目以降:償却資産の評価額 = 前年度の償却資産の評価額 × (1 − 減価率)

消費税

土地の譲渡や貸付に関しては、消費税が非課税になります。そのため駐車場として土地を貸し付けた場合も同様に、消費税は非課税です。

ただし、以下のように駐車場の管理を行ったり、建物や施設の利用に伴い駐車場が利用される場合は消費税が課されます。

  • アスファルトやコンクリートで地面を整備している
  • 駐車スペースを白線で区分けしている(施設利用者用の駐車場など)
  • 車止めがある
  • 建物や施設に隣接している

言い換えると、消費税の課税対象になるかは、使用することで徐々に消費され価値が低下する駐車場であるかどうかと考えると良いでしょう。たとえば砂利のまま貸し出している駐車場などは、消費により価値が下がることがないと考えられるので、消費税は課されません。

また、土地を業者に貸し付けて駐車場を運営する場合は消費税は非課税ですが、所有者自身が整備した駐車場を業者に貸し付けると、消費税の課税対象となります。

駐車場付きアパートの場合

駐車場付きのアパートを経営する場合は、次の条件にすべてに該当すれば、消費税は非課税です。

  • 駐車場代が家賃に含まれているまたは別途徴収していない
  • 1戸あたり1台分以上の駐車スペースがある
    ※自動車の保有の有無に関わらない

都市計画税

都市計画税とは、地方税法により、都市計画区域内の土地・建物に市区町村が条例で課すことのできる税金です。固定資産税とあわせて課税されますが、市区町村によっては課税されない地域もあります。

都市計画税の算出方法は以下のとおりで、土地部分だけでなく、償却資産にも課税されます。

都市計画税=課税標準額 × 0.3%

固定資産税と同様に、住宅用地の場合は課税標準が減額される特例が適用されますが、駐車場には適用されません。

駐車場経営で確定申告が必要になる条件

駐車場経営での収入が確定申告の対象になるかどうかは、駐車場経営が本業か副業かで異なります

本業が会社員(給与所得)で駐車場経営が副業である場合は、駐車場経営を含めた副業での所得が年間20万円以上あるときに確定申告が必要です。一方で給与所得がなく駐車場経営が本業となる場合は、駐車場経営を含めたすべての所得が年間48万円以上あるときに確定申告が必要です。

なお、上記は「所得税」の条件です。所得税の確定申告をしない場合は、住民税が課税される基準以上の所得があると、住民税の確定申告が必要になります。

駐車場経営における所得の違い

駐車場経営は、管理方法と事業規模によって所得区分が変わるので注意が必要です。

  • 不動産所得
    管理人を置かずにスペースを提供しているだけの月極駐車場や、管理・運営を業者に委託している場合など、土地の所有者に保管責任がないと考えられる場合は不動産所得になります。

    不動産所得では、赤字を他の所得と相殺できる「損益通算」や、損失を翌年以降3年間繰り越す「純損失の繰越控除」ができます。

    このとき、「事業的規模」が認められれば青色申告特別控除の適用で65万円の控除ができるほか、損失を全額経費として計上できるなどのメリットもあります。一方で事業的規模が認められない場合の特別控除額は10万円となり、経費の計上にも制限がかかります。
  • 事業所得または雑所得
    不特定多数に時間貸しをしている場合や保管責任を負う場合(管理人が駐在しているなど)には、事業所得または雑所得となります。

    事業的規模が認められれば事業所得となりますが、それ以外は雑所得です。

    事業所得に該当する場合、不動産所得と同様に「最大65万円の青色申告特別控除」や「損益通算」「純損失の繰越控除」が適用できます。

    一方で雑所得は青色申告ができず、損益通算も純損失の繰越控除もできません。そのため税務面では、事業的規模と認められる規模で事業所得あるいは不動産所得で申告するのが有利になります。

事業的規模の判定

事業的規模として認められるには、およそ50台以上の車を停められる駐車場であることや立体駐車場など建築物があることが目安となります。

駐車場経営の税金対策

先述のとおり、駐車場は宅地のように税制的に優遇されているわけではないので、なにも対策をしなければ固定資産税がそのままかかります。

そこで、賃貸物件と一体化することで住宅用地の特例が適用できる可能性があります

たとえば、アパートと隣接する土地に駐車場があり、分筆して登記している場合は、アパートが建つ部分の土地には住宅用地の特例が適用され、駐車場は雑種地としてそれぞれ固定資産税が計算されます。

駐車場を使用しているのがアパートの住人である場合、土地が建物と駐車場とで一体利用していると認められれば、駐車場部分にも特例を適用できます。

その場合は固定資産税の住宅用地等申告書に「一体利用している」と記入して提出しましょう。

相続で駐車場を取得したとき

相続によって土地を取得したときは、その他の財産と合わせた財産額が、相続税の基礎控除額を超えると相続税が課税されます。

相続税の基礎控除 = 3000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

駐車場は土地の評価額がそのまま相続税評価額となるため、特例が設けられている居住用地などと比べると、相続税が高額になります。

ただし、相続した駐車場用地が他人に貸している土地である場合、以下の要件を満たせば貸付事業用宅地等の特例を適用することができます。特例が適用されると、200㎡までの土地の評価額が50%減額されます。

  • 被相続人の貸付事業を引き継ぎ、申告期限までその宅地等を所有し、且つ、その貸付事業に供している親族
  • 相続開始から申告期限までその宅地等を自己の貸付事業の用に供している、被相続人と生計を一にしていた親族

屋根などの設備がない青空駐車場でも、アスファルトやコンクリートで舗装すると税務上は構造物として扱われるので、貸付事業用宅地等の特例を受けることができます。

なお、2018年の税制改正により、相続開始3年以内に駐車場経営を開始した土地は、特例から除外されますのでご注意ください。

土地活用別の税金比較

土地を駐車場以外の方法で活用した場合、税金面でどのような違いがあるのか比較してみましょう。また同時に、運営上のメリット・デメリットも紹介します。

居住用賃貸経営

アパートやマンション、シェアハウスなどを建てて賃貸経営をした場合、固定資産税は、土地と建物部分にそれぞれ課されます。土地は住宅用地に該当するため、小規模住宅用地であれば固定資産税評価額は6分の1に軽減されます。

賃貸経営によって生じる家賃収入は不動産所得となり、家賃や管理費・共益費・敷金・礼金などで得た収益は消費税が非課税になります。

居住用賃貸経営は、駐車場経営と比べて毎月の収入増が見込めるほか、固定資産税の節税効果が高いというメリットがあります。

一方で、建物を建てるための初期投資が必要であり、管理費・修繕費用などのランニングコスト、空室リスクにも備える必要もあります。

事業用賃貸経営

オフィスビルや店舗などの事業用賃貸として経営する場合、住宅用賃貸経営と同様に固定資産税は土地と建物部分にそれぞれ課されますが、住宅用地の特例は適用できません

家賃収入は不動産所得となり、事業用物件の家賃や管理費・共益費・敷金・礼金などで得た収益は消費税の課税対象になります。

事業用賃貸は、居住用賃貸物件より賃料を高くできるので、高額な収益が見込めます。一方で、初期費用やランニングコストが高額になるほか、空室リスクにも備える必要があります。

トランクルーム

トランクルームには、屋外にコンテナを設置したり、建物内を区切ってレンタルするなど、さまざまな方式があります。

屋外コンテナを収納スペースとして貸し出すトランクルームの場合、コンテナを設置した土地は非住宅用地なので、固定資産税の税制優遇措置はありません。また、土地に設置したコンテナを継続的に使用する場合、建築物(家屋)として扱われるため、コンテナに対しても固定資産税がかかります。

トランクルームの賃料収入は不動産所得となり、消費税は課税対象となります。

メリットとしては、立地が悪く賃貸物件が建てにくいような土地でも活用が可能で、初期費用やランニングコストが抑えられるという点があります。ただし、コンテナは建築物に該当するため、建築基準法に基づいて設置する必要があります。

太陽光発電

太陽光発電を設置する土地は非住宅用地になるので、固定資産税の税制優遇措置はありません。また、太陽光発電の設備部分も償却資産として、固定資産税が課税されます。

太陽光発電による収入は原則として事業所得、住宅用太陽光発電の余剰電力を売電した場合は雑所得となります。また、売電価格には消費税が課されます

太陽光発電は、整地費用の負担や初期費用などのコストが高く、初期費用を回収するまでに時間がかかります。そのため、短期間での節税対策には向いていません。

借地にする

借地として他人に貸した場合も、固定資産税は土地の所有者に対して課税されます。ただし土地に借地権を設定することで住宅用地になるため、固定資産税は軽減されます。

地代収入は不動産所得として所得税が課されますが、消費税は非課税です。

ランニングコストがかからず、固定資産税は地代収入でまかなうことができるなど、長期で安定的に収入を得ることができます。

一方で「借地権」があるため原則中途解約はできないというデメリットもあります。そのため、将来の用途変更の可能性も含めて検討すると良いでしょう。

おわりに

駐車場経営は、アパートやマンションによる賃貸経営と比較すると、初期費用が低く抑えられ、手軽に始められるというメリットがあります。一方で、賃貸経営などと比べると固定資産税や相続税が高くなるというデメリットもあります。

また、事業で得た収入が一定額以上になると確定申告の義務も生じます。土地活用を考えている際は、税額のシミュレーションなども含めて税理士に相談してみるのも良いでしょう。

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