源泉所得税(源泉徴収税)の納付方法は?期限や納付書の書き方までわかりやすく解説

源泉徴収をしなければならない事業者のことを源泉徴収義務者といい、源泉徴収義務者は法人だけでなく、個人事業主も対象となることがあります。
源泉徴収した所得税(源泉徴収税)の納付方法は全部で4つありますが、事前準備が必要なものもあります。
そこでこのページでは、源泉所得税の納付方法と納付期限のほか、納付書の書き方まで詳しく解説します。
目次
源泉所得税(源泉徴収税)とは
事業者は給与や報酬などを支払う際に、所得税と復興特別所得税をあらかじめ差し引いて、納税者の代わりに納付する義務があります。
この制度を「源泉徴収」といい、源泉徴収した所得税と復興特別所得税のことを「源泉徴収税」といいます。
なお、税額計算で使用する「源泉徴収税額表」においては、源泉徴収した所得税と復興特別所得税がひと括りになっていることから、「源泉所得税」と呼ばれることもあります。
源泉所得税の納付期限
源泉所得税は原則として、給与や報酬などを支払った月の翌月10日までに国に納める必要があります。この期限までに納付を行わなかった場合、本税に加え延滞税などの「追徴課税」が課せられます。
ただし、給与を支払う人員が10人未満の源泉徴収義務者は、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申込書」を税務署へ提出することで、納付を年2回にする特例を受けることができます。
特例が適用されると、納付期限は以下のようになります。
- 1月〜6月までに源泉徴収した所得税・復興特別所得税…7月10日まで
- 7月〜12月までに源泉徴収した所得税・復興特別所得税…翌年の1月20日まで
源泉所得税の納付方法
源泉所得税の納付には、e-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用して行う方法と直接金融機関などの窓口で行う方法の大きく2つがあります。
e-Taxを利用する場合には、「インターネットバンキング納付」「クレジットカード納付」「ダイレクト納付」の3通りから選べます。
インターネットバンキング納付
e-Taxを使って手続きを行い、インターネットバンキングから電子納付する方法です。
まず、e-Tax上で納付書の役割をする「所得税徴収高計算書」のデータを作成・送信します。その後、納付方法から「インターネットバンキング」を選択して、利用する金融機関のインターネットバンキングにログインします。
払込を実行すると払込金額が振り替えられます。
クレジットカード納付
e-Taxで手続きを行い、専用の外部サイトからクレジットカードで電子納付する方法です。e-Tax上で「所得税徴収高計算書」のデータを作成・送信したあと、「国税クレジットカードお支払サイト」にアクセスします。
クレジットカードによる納付は、納付税額に応じて決済手数料がかかり、1万円までは76円、以後1万円を超えるごとに76円加算されます。
ダイレクト納付
e-Taxで手続きを行い、指定の預貯金口座からの振替により電子納付する方法です。
e-Tax上で「所得税徴収高計算書」のデータを作成・送信した後、納付方法からダイレクト納付を選び、「今すぐ納付」または「納付日を指定」のいずれかを選択します。
ダイレクト納付の利用には、あらかじめ利用する預貯金口座を記載した「ダイレクト納付利用届出書」を書面で税務署に提出する必要があり、利用開始まで1か月程度かかります。
なお、ダイレクト納付については、税理士が納税者に代わって納付手続を行うことが可能です。
金融機関または税務署での窓口納付
金融機関または所轄の税務署の窓口で、「所得税徴収高計算書」を記入し、現金を添えて納付する方法です。なお、金融機関や税務署の窓口では、クレジットカードによる納付はできません。
e-Taxを利用した納付方法を選択した場合、あらかじめe-Taxの開始手続きが必要になりますが、窓口納付であれば事前手続きは一切不要です。その代わり、都度、金融機関や税務署に出向かなければいけないという手間があります。
※令和4年(2022年)12月1日から、一度の納付につき30万円までであれば、PayPayなどスマホアプリからの納付も可能になりました。詳しくはこちら
納付書(所得税徴収高計算書)の書き方
源泉所得税を納付する際に必要な「所得税徴収高計算書」にはいくつか種類があります。
従業員の給与や退職金、税理士・弁護士など特定の資格をもつ個人への報酬の源泉徴収は「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書」を、外注費などの報酬の源泉徴収は「報酬・料金等の所得税徴収高計算書」を使用します。
ここでは、納期期限の特例を受けている際の「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納期特例分)」の記入方法を解説します。

【1】会計年度(毎年4月1日〜翌年3月31日)を記入します。
【2】所轄の税務署名を記入します。
【3】税務署から、企業ごとに割り当てられている整理番号を記入します。
【4】給与、退職手当などを支払った最初の年月日と最後の年月日を記入します。一度だけの支払いは左側のみ記入します。
【5】給与や賞与など、各項目ごとに支給月分の合計人数を記入します(日雇労働者の賃金は述べ人員)。
【6】給与など実際に支払った金額を記入します。
【7】源泉徴収した税額を記入します。
【8】源泉徴収した税額の合計金額を「本税」に記入します。
【9】税額の合計金額から、延滞税があればそれを差し引いた金額を「合計額」に記入します。
【10】納期の特例期間の最初の年月日と最後の年月日を記入します。
【11】源泉徴収義務者の住所と氏名を記載します。
e-Taxであれば、案内に従って情報を入力していくだけなので、簡単に作成することが可能です。
住民税の源泉徴収(特別徴収)と納付方法
事業者は、所得税のほか住民税も源泉徴収する必要があり、これを「特別徴収」といいます。納税者自ら納税を行う「普通徴収」という方法もありますが、給与を支払う事業者は特別徴収を行うことが原則義務づけられています。
特別徴収では、源泉徴収した住民税を翌月10日までに納付します。ただし、給与の支給人員が10人未満の場合は、「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」を市町村へ提出することで、納付を年2回にする特例を受けることができます。
特例が適用されると、納付期限は以下のようになります。
- 6月〜11月までに特別徴収した住民税…12月10日まで
- 12月〜翌年5月までに特別徴収した住民税…翌年6月10日まで
特別徴収を行うには、まず給与を支払う事業者が、1月1日時点で従業員が住民登録している市区町村へ「給与支払報告書」を提出します。その後、市区町村から毎年5月に「特別徴収税額の税額通知書」が郵送されてくるので、事業者は通知書に記載された毎月の納税額を源泉徴収し、市区町村へ納税します。
特別徴収した住民税は、市区町村役場や金融機関で納めるほか、eLTAX(地方税共通納税システム)で納付することもできます。
おわりに
納期の特例を受けない場合は、源泉所得税を毎月納付することになるので、手間を考えるとe-Taxを利用した納付方法がおすすめです。
また、e-Taxでは所得税徴収高計算書の代理送信を税理士におまかせすることができます。所得税徴収高計算書の作成だけでなく、給与計算や年末調整をまとめて税理士に依頼することで、正確に計算ができるうえ、本業への支障を回避することにもつながります。
はじめて従業員を雇用したタイミングなど、税務が煩雑になるタイミングで税理士との顧問契約を検討するのもよいでしょう。
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