【徹底解説】追徴課税とは?加算税の種類や延滞税の税率・計算方法、納付手続き

確定申告を期限内に行わなかったり、納税はしたものの本来納めるべき金額より少なかった、などという場合、「追徴課税」が発生する可能性があります。
言葉だけ見るとなにやら罰金のようなイメージを受けるかもしれませんが、「追徴課税」とは実際どのようなものでしょうか。
この記事では、課税される税金の税率や計算方法、さらには税務署からの指摘内容に不服があった場合の対応について解説します。
目次
「追徴課税」とは
申告した税額が少なかったり、そもそも無申告だったということが発覚した場合、納税者が自ら「修正申告」や「期限後申告」を行うか、税務署から「更正」という処分を受けることになります。
そして過少または不納となっている本税と、本税に対して課せられた「延滞税」や「加算税」といった附帯税も合わせて納付することになり、その総称を「追徴課税」といいます。
税金の時効
まず、税務署が納税者に対して税額を確定することができる時効は法定提出期限から最大7年。こちらは「排斥期間」ともよばれ、期間が延長されることはありません。
一方、税務署が確定した税額を徴収することができる権利は、原則5年で時効が成立します(消滅時効)。
ただし、債務確認書などにより滞納者に滞納額の確認がなされた場合には、5年間延長されます。また、滞納者に督促状が送られた後、差し押さえがなされる場合には時効が消滅します。
「加算税」とは
加算税とは、過少申告、不納付、無申告があった場合のペナルティとして発生する税金です。本税の申告状況によって4つの種類に分かれます。
過少申告加算税
期限内に申告・納付したものの、金額が少なかった場合に課されるのが「過少申告加算税」です。税率は原則10%、「期限内に申告した税額または50万円のうちいずれか多い方を超える部分」に対しては15%で課されます。
ただし、調査通知がなされる前に修正申告をした場合、加算税の対象外となります。
また、調査通知がなされた後でも、調査により更正などが行われることが予知されるより以前に修正申告をした場合には原則5%(期限内に申告した税額または50万円のうちいずれか多い方を超える部分に関しては10%)に軽減されます。
修正申告のタイミング | 過少申告加算税の税率 |
---|---|
調査通知前 | 対象外 |
調査通知後〜調査により更正などが行われることが予知される以前 | 5%(10%) |
調査により更正などが行われることが予知された後 | 10%(15%) |
※()内は、「期限内に申告した税額または50万円のうちいずれか多い方を超える部分」に対して課される税率
「期限内に申告した税額または50万円のうちいずれか多い方を超える部分」に対しての課税例
前提として、本来申告すべき納税額を250万円とします。
【例1】期限内に申告した税額が40万円だった場合(<50万円)
過少分210万円のうち、50万円までは10%、残り160万円に対しては15%で課税されます。

【例2】期限内に申告した税額が60万円だった場合(>50万円)
過少分190万円のうち、60万円までは10%、残り130万円に対しては15%で課税されます。

無申告加算税
法人税の申告には原則「事業終了日から2か月以内」というルールがあります。この期限内、もしくは確定申告の期限である3月15日までに申告を行わなかった場合、「無申告加算税」が課されます。
税率は原則15%、「納付すべき税額が50万円を超える部分」に対しては20%となっています。ただし、過去5年以内に無申告加算税が課されたことがある場合には25%となり、そのとき「期限内に申告した税額または50万円のうちいずれか多い方を超える部分」に対しては30%と高い税率が適用されます。
また、過少申告加算税と同様、調査により更正などが行われることが予知される前に自ら期限後申告を行うことで税率が軽減されます。
期限後申告のタイミング | 無申告加算税の税率 | |
---|---|---|
調査通知前 | 5% | |
調査通知後〜調査により更正などが行われることが予知される以前 | 10%(15%) | |
調査により更正などが行われることが予知された後 | 通常 | 15%(20%) |
5年以内に無申告加算税を課されたことがある場合 | 25%(30%) |
※()内は、「納付すべき税額が50万円を超える部分」に対して課される税率
なお、法定申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告を行なっており、次の条件をすべて満たす場合は申告の意思があったとみなされ、免除されることもあります。
- 期限後申告に関する所得税を全額納付済みである
- 過去5年間に無申告加算税または重加算税を課されていない
不納付加算税
事業者は給料や報酬を支払う際に、源泉所得税を徴収する義務があります。
本来であれば、納税者は自ら税務署へ申告・納付する義務がありますが、会社が従業員の給料から毎月税金を天引きする形で源泉徴収を行うことで完結する仕組みになっています。
源泉所得税の納付期限は原則、給与等を支払った月の翌月10日まで(※)となっていますが、この期限内に納付されなかった場合、「不納付加算税」が課されます。
(※年2回、半年分をまとめて納付できる特例もあります)
税率は10%ですが、こちらも税務署からの通知前に申告・納付を行うことで5%に軽減されるほか、不納付加算税が5000円に満たない場合は納付が免除されます。
重加算税
二重帳簿や書類の改ざんといった悪質な不正行為が認められ、さらに過少申告や不納付、無申告が伴っている場合にはそれらの加算税に代わって「重加算税」が課されます。
税率は「過少申告加算税あるいは不納付加算税に代わる場合」には35%、「無申告加算税に代わる場合」には40%ですが、「過去5年以内に同じ税目に対して重加算税を課された(徴収された)ことがある場合」にはさらに10%加算されます。
対象税目 | 重加算税の税率 |
---|---|
過少申告加算税、不納付加算税 | 35%(45%) |
無申告加算税 | 40%(50%) |
※()内は、過去5年以内に同じ税目に対して無申告加算税または重加算税を課された(徴収された)ことがある場合の税率
延滞税とは
加算税とは別に納期限後に納付をする場合のペナルティとして「延滞税」があり、税率は滞納する期間によって異なります。
延滞税の金額は基本的に、本来納付すべき税額に対し延滞税の割合と完納するまでの日数を掛けたものを365で割って算出します。

延滞税の割合
延滞税の割合は、納付する日までの日数に応じて変わります。
- 納期限の翌日から2か月を経過する日まで
└年「7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合 - 納期限の翌日から2か月を経過した日以後
└年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合
期間 | 特例基準割合+1% (納期限の翌日から2か月を経過する日まで) | 特例基準割合+7.3% (納期限の翌日から2か月を経過した日以後) |
---|---|---|
平成29年1月1日から平成29年12月31日 | 2.7% | 9.0% |
平成30年1月1日から平成30年12月31日 | 2.6% | 8.9% |
平成31年1月1日から令和元年12月31日 | 2.6% | 8.9% |
令和2年1月1日から令和2年12月31日 | 2.6% | 8.9% |
※特定基準割合 前々年の10月から前年の9月までに金融機関が行った短期融資の平均金利として、前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%を加算したもの。 |
つまり実際の延滞税の計算では、完納までの日数が納期限から2か月以内の場合は2.6%、完納までの日数が納期限から2か月を超えた場合に関しては8.9%となります(2020年時点)。
加算税に比べると算出方法が複雑ですので、自分で計算する場合は国税庁ホームページにある計算画面を用いるとよいでしょう。
加算税・延滞税の納付手続き
本税はクレジットカードや口座振替などのいくつかの納付方法が選べますが、加算税と延滞税に関しては現金振込またはe-taxでの納付となります。税務署からの通知に記載されている期日に基づいて、きちんと期限内に納めましょう。
納付できない場合
一括での納税が難しい場合、原則1年以内の期間に限り、納税の猶予が認められることもあります。それには以下のすべての条件を満たさなければなりません。
- 本来の期限から1年以上経過したあとに、修正申告などにより納付すべき税額が確定した
- 納税者がその納付すべき国税を一時に納付することができないと認められる
- 納期限までに申請書が提出されている
- 原則として、担保の提供がある
附帯税を納めたときの会計処理
附帯税はペナルティとして課されているものなので、会計上は費用(租税公課)として処理しますが、税務上は損金不算入となります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課 | XX円 | 現預金 | XX円 |
税務署からの指摘に不服がある場合
税務調査が行われるなど、税務署から修正申告などをするよう進められた場合、その指摘内容に対して納税者は不服を申し立てる権利があります。
しかし納税者が自ら修正申告などを行なってしまうと、税務署の指摘内容を受け入れたとみなされ、それ以降不服を申し立てるのが不可能となってしまいます。税務署からの通達に納得がいかない場合は修正申告せず、通達がきた段階で税理士に相談し、指示を仰ぎましょう。
税務署から通知を受けてから3か月以内であれば、税務署長に対する「再調査の請求」を行えます。再調査の請求で受けた決定になお不服がある場合、その後1か月以内に、今度は国税不服審判所長に対する「審査請求」を行うことができます。審査請求で受けた裁決内容にも不服がある場合、最終的に裁判所に対し「訴訟」を起こすことになります。なお、再調査の請求を省略して審査請求を行うことも可能です。
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おわりに
調査通知を受けた後でも、実際に調査により更正などが行われることになる前であれば、自ら修正申告・期限後申告を行うことで追徴課税は軽減することができます。また、調査通知を受ける前であればなおのこと軽減できますし、そもそも対象外とされることもあります。
もし当初の申告に不安があるのであれば、早い段階で改めて税理士などの専門家に依頼し、申告内容を見直すとよいでしょう。
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