確定申告期限を過ぎたときの「期限後申告」とは?未提出のデメリットや手続きについて

所得税や相続税などの確定申告には、それぞれ期限が設けられています。申告期限に間に合わない、過去の申告を忘れてしまったといったときに行う確定申告は「期限後申告」として扱われます。未申告でいると追徴課税といったペナルティが発生するため、確定申告が必要になる条件や期限後申告のやり方について、よく確認しましょう。
目次
確定申告が必要な人
まず、主な税金の確定申告が必要になる条件を説明します。
所得税
以下に当てはまる人は、所得税の確定申告が必要になります。
- フリーランスなどの個人事業主
└年間所得が48万円を超えた場合 - 公的年金を受け取っている人
└年金収入から所得控除を差し引くと残額がある場合 - 株式譲渡による所得がある人
└源泉徴収されていない場合 - 不動産所得がある人
- 災害減免法により源泉徴収の猶予などを受けている人
- パートや会社員など給与所得者
└年間の給与収入が2000万円を超える人
└副業の合計所得が20万円を超える人
└2つ以上の会社から給与を受け取っている人
確定申告および納税は、所得が生じた年の翌年2月16日から3月15日(※)の間に行います(期限が土日祝の場合はその直後の平日まで)。
※2021年(令和3年)分の確定申告について
2021年(令和3年)分の確定申告期間は、2022年(令和4年)2月16日(水)~3月15日(火)までとなっています。
ただし、新型コロナウイルス感染症の影響により申告等が困難な場合、簡易な方法により、2022年(令和4年)4月15日まで申告・納付期限の延長申請が可能です。詳しくは国税庁発表の資料で確認いただけます
住民税
以下に当てはまる人は、住民税の確定申告が必要になります。
- 給与、公的年金以外に所得がある人
- 年の途中で退職した等で年末調整をしていない給与がある人
- 住民税が課税される基準以上の所得がある人
※金額は自治体によって異なります - 住民税が非課税になる条件の人
※医療費控除、配偶者控除などの各種控除の適用によって、住民税が非課税になる人
申告・納税期限は所得税と同じです。ただし、年末調整または所得税の確定申告をした人は住民税の確定申告は不要になります。
贈与税
1月1日から12月31日までの1年間で、贈与を受けた金額が基礎控除額を超える場合に贈与税の確定申告が必要になります。
贈与税の基礎控除は110万円なので、受け取った財産の価額が110万円以下の場合は、申告の必要はありません。
相続時精算課税制度を適用するときは、贈与の金額にかかわらず申告の必要があります。
贈与税申告および納税は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日(※)の間に行います(期限が土日祝の場合はその直後の平日まで)
※2021年分の贈与税申告は、所得税と同様に、新型コロナウイルス感染症の影響により申告等が困難な場合、簡易な方法により2022年(令和4年)4月15日まで申告・納付期限の延長申請が可能です。詳しくはこちら。
相続税
相続税申告は、相続財産の課税価額が基礎控除を超える場合に必要になります。基礎控除額は「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で求めることができます(2020年時点)。
ただし、配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例などを受ける場合には、相続税の基礎控除額以下でも申告が必要になるので注意しましょう。
相続税申告および納税期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内となっています。
期限後申告のペナルティ
日本では、「申告納税制度」が採用されており、納税者が自ら所得を計算して申告と納付を行う必要があります。所得税をはじめとする多くの国税は、この制度に基づいて納めることになっています。
法定申告期限を過ぎて過年度分の申告をする場合、期限後申告として扱われ以下のようなペナルティがあります。
追徴課税が発生する
未申告だったことが発覚すると、本来支払うべき税額(本税)に加え、「無申告加算税」も課されます(いわゆる追徴課税)。
税率は、納付すべき税額の50万円までに対しては15%、50万円を超える部分に対しては20%が原則となっています。ただし、過去5年以内に無申告加算税、または重加算税が課されたことがある場合は、税率が10%加重されます。
税務署から指摘を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には、本税に対しての税率が5%に軽減されます。
期限後申告のタイミング | 無申告加算税の税率 | |
---|---|---|
調査通知前 | 5% | |
調査通知後〜調査により更正などが行われることが予知される以前 | 10%(15%) | |
調査により更正などが行われることが予知された後 | 通常 | 15%(20%) |
5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合 | 25%(30%) |
※()内は本税の50万円を超える部分に課される税率
また、期限後申告であっても以下の要件をすべて満たしている場合は期限内申告をする意思があったと認められ、無申告加算税が免除されます。
- 法定申告期限から1か月以内に、自主的に期限後申告をしていること
- 法定納期限までに全額を納付していること
- 過去5年間で無申告加算税または重加算税を課されたことがなく、かつ無申告加算税の免除を受けていないこと
納付に対するペナルティとしては、本税に対して下記の税率と完納までの日数をかけて、365で割った金額が「延滞税」として課されます。
- 納期限から2か月以内
└年7.3%または「特例基準割合 + 1%」のいずれか低い方 - 納期限から2か月を超えた場合
└年14.6%または「特例基準割合 + 7.3%」のいずれか低い方
税金の時効
まず、税金の時効には2種類あり、税務署が納税者に対して税額を確定することができる「排斥期間」と、税務署が確定した税額を徴収することができる「消滅時効」があります。
排斥期間の時効は法定提出期限から最大7年で期間が延長されることはありません。一方、消滅時効は原則5年ですが、債務確認書などにより滞納者に滞納額の確認がなされた場合には、さらに5年間延長されます。また、滞納者に督促状が送られた後、差し押さえがなされる場合には時効が消滅します。
控除が適用できなくなる
税金の各種控除については、申告期限内に手続きをすることで適用されます。
たとえば所得税では、「青色申告特別控除」という制度があり、最大65万円の所得控除が受けられますが、期限後申告をした場合は控除額が10万円まで減ってしまいます。
さらに、2事業年度連続で期限内に申告をしなかった場合は、青色申告の承認が取り消されてしまうため、専従者控除や純損失の繰越控除なども受けることができなくなってしまいます。
ほかにも、相続税申告では配偶者控除や小規模宅地の特例、納税猶予の特例などは、期限内に申告をしていなければ適用されません。
還付申告の場合
納めすぎた税金を返してもらうための確定申告は「還付申告」といいます。その場合、すでに本来納めるべき税金を納めているため、追徴課税は課されません。ただし、前述したように各種控除は適用できなくなるので注意しましょう。
申告後に内容に誤りがあることに気がついた場合、納めた税金が多かった場合は「更正の請求」を、反対に少なかった場合は「修正申告」を行いましょう。
更正の請求
すでに一度確定申告をしている状態で還付手続きを行うこと(過去5年分まで)。
修正申告
納めた税金が少なかった場合に行う手続きです。
修正申告では無申告加算税はかかりませんが、延滞税がかかってしまいます。また、税務署の調査を受けた後で修正申告をした場合は、「過少申告加算税」も課されます。
悪質とみなされれば逮捕されることも
申告をしないということは、納めるべき税金を納めていないということになるので、脱税に該当します。申告の必要があることを知っていたにもかかわらず、故意に申告をしなかった場合は、無申告加算税と延滞税のほかに、重加算税という重いペナルティが課されます。
さらに、帳簿の改ざんや所得隠しなどの悪質な脱税は、「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金またはその両方」の刑事罰が科され、場合によっては逮捕されてしまう可能性もあります。
期限後申告のやり方
期限に間に合わない、過去の所得などについて申告が必要だったことが発覚したなどで、期限後申告が必要になったときの手続きについて解説します。
過去の確定申告書の作成について
過年度分の確定申告書の作成手順は、通常の作成手順と同じです。ただし、すでに説明した通り「青色申告特別控除」などの控除が適用できなくなります。こうしたポイントに注意をして申告書を作成しましょう。
過去の確定申告書の提出・納税について
過年度分の確定申告書の提出先や納税先も通常の確定申告と同じで、所轄の税務署に提出します。
納税日は、過去の確定申告書を提出したその日となり、申告加算税や延滞税が発生しているのであれば、それらも一緒に納める必要があります。
こちらの納税方法は現金に税金の納付書を添えて所轄税務署や金融機関にて納付します。そのため、無申告加算税や延滞税による納税額も計算する必要があります。
おわりに
何らかの理由で確定申告をしていない人もいるでしょう。しかし、過去の確定申告(過年度申告)は遅れてしまうほど、納税者にとって負担が大きくなってしまいます。
もし心当たりがあるのであれば、早く手続きを進めましょう。分からないことがあったり、やっている時間がないということであれば税理士に相談することをおすすめします。
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