【税理士が解説】99.7%が架空取引。KDDIグループ子会社の巨額粉飾と「納税」という致命的な実損
決算申告
KDDIの連結子会社である「ビッグローブ」および、その子会社「ジー・プラン」において不正会計が発覚した。
KDDIが発表した調査報告書によると、ジー・プランが行っていた広告代理事業の売上高のうち、99.7%が実体のない架空取引であった。遅くとも2018年8月から2025年12月までの間、架空循環取引が継続的に行われていたことが認められたという。
不正は複数年にわたり、累計で売上高2,461億円、営業利益1,508億円が過大に計上されていたことが判明した。取引の実態は、複数の広告代理店との間で広告枠の売り買いを装う「循環取引」であり、売上を膨らませる過程で、広告手数料として約330億円が外部へ流出していた。
当初は赤字補填を目的としていたものの、その後は業績目標の達成を動機として継続された。2022年3月期からはKDDIによるグループファイナンス(親会社からの融資)が導入されたが、この資金が結果として架空取引を維持・拡大させるための原資となっていた。
架空の利益であっても、決算書上の数字に基づいて法人税等の納付が行われる。同社は長年、実体のない利益に対して、本来は事業投資に充てるべき現金を納税という形で排出し続けてきた。
この異例の事態が経営に与える実損などについて、奈須大貴税理士に聞いた。
●本来、事業投資に充てられたはずの「キャッシュ」が納税で消える
ーー今回の事件では、架空の利益に対して多額の法人税が支払われていました。本来不要なはずの「架空利益への納税」が、企業のキャッシュフローにどのような影響を与えるのでしょうか。
今回のケースで特に深刻なのは、「利益が存在しないにもかかわらず、納税によって資金が外部流出している」という点です。
法人税は決算書上の利益を基準に計算されるため、粉飾によって利益を大きく見せれば、資金がその分だけ納税によって減少します。本来であれば、人材投資や事業投資、借入金の返済などに充てるべき貴重なキャッシュが、架空の利益に対する納税によって不当に失われることになります。
粉飾は単なる会計上の問題ではなく、会社の資金繰りや財務体質を蝕む重大な経営問題だと思います。
●「更正の請求」は可能だが、ハードルは極めて高い
ーー過去の粉飾を修正し、払いすぎた税金を返してもらうことは可能なのでしょうか。
結論から言えば、過去の粉飾を修正し、払いすぎた税金の還付を求める「更正の請求」を行うことは可能です。
ただし、税務当局の調査は非常に厳格で、単に「誤りでした」と説明するだけでは認められません。架空取引の存在や資金の流れなど、「事実を証明する書類」を揃えたうえで、不正の全容を客観的に示す必要があります。
また、更正の請求には原則5年という期限制限があるため、今回のように不正が長期間続いていたケースでは、古い年度の納税額は取り戻せない可能性があります。粉飾は、後から修正すれば済むというほど簡単な問題ではないと思います。
●架空取引に伴う支出は、経費として認められないリスクも
ーー今回のケースでは多額の手数料が外部へ流出していました。これらは経費として認められるのでしょうか?
税務上、経費として認められるためには、「事業との関連性」や「実態」が重要になります。そのため、架空取引に伴う支出については、実際に広告効果などの役務提供が存在しない場合、経費として認められない可能性があります。
また、取引の実態や資金の流れによっては、不正支出や使途不明金として扱われるケースも考えられます。単にお金が出ていったから経費になるわけではなく、「何に対する支出なのか」が厳しく問われる点が重要です。
【取材協力税理士
奈須 大貴(なす・ひろき)
税理士、公認会計士。1994年生まれ、福岡県北九州市出身。
「会計で会社を強くする!!!」、「あなたの夢、会計力で応援します!!!」というスローガンのもと、スタートアップ企業、中小企業を中心に税務顧問サービスを提供し、経営者さんが数字を経営の武器にできるようになるためのサポートに力を入れている。
事務所名 :奈須大貴公認会計士・税理士事務所
事務所URL:https://hnasu-cpa.com/















