税務調査はどこまで調べる?【税務調査ガイド】 - 節税や実務に役立つ専門家が監修するハウツー - 税理士ドットコム

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税務調査はどこまで調べる?【税務調査ガイド】

「税務調査」と聞くとあまりよい印象はないかもしれません。映画やテレビのワンシーンのように、一斉に調査官がやってきて書類などをひっくり返す、なんてイメージもあるでしょう。

では、実際のところ税務調査では何年分の資料をチェックするのでしょうか。特に調査されやすい項目とそのポイントとともに、「税務調査ではどこまで調べるのか」を解説します。

目次

5年?7年?税務調査で調べられる遡及年数とは

まず、税務調査の多くは「任意調査」と呼ばれるものです。いわゆる“マルサ”のような税務調査は「強制調査」と呼ばれ、よほど悪質なケースでなければ対象にはなりません。

しかし、任意調査だからといって、調査に応じるかどうかを任意で決められるというわけではありません。むしろ任意調査を拒否すれば自ら「怪しいです」と言っているようなものなので、基本的には任意調査の対象になった時点で応じる必要があります。

強制調査の場合は事前の予告なしに突然税務署など国税局の担当者が押しかけてきて調査が始まりますが、任意調査の場合は事前に調査が入る旨の通知や連絡があります。また、日程についても多少は融通が効くため、実際に税務調査が行われるまでに資料を揃えたりといった準備もできるでしょう。このとき、直近1年分の申告だけが税務調査の対象ではないことに注意が必要です。

日本における申告納税制度においては、納税額が少ない場合は国税局が申告のやり直しを命じたり(更正)、納税額が多い場合には払いすぎた分をとり戻すことができます。

その適用年数が原則過去5年間まで(脱税など悪質な不正行為が発覚した場合には7年間)できるとされているため、税務調査でもその期間分の帳簿書類などが調べられるのです。

そしてこの年数を「遡及年数」といい、税務調査が来る場合には遡及年数の過去5年分は帳票書類を揃えて用意しておきましょう。

そもそも帳簿書類については一定期間(原則7年間)の保管義務がありますので、税務調査官への「すでに破棄しているのでわかりません」という言い訳は一切通用しないと肝に命じておきましょう。

税務調査はどこまで調べる?要注意ポイントは?

では、実際に税務調査ではどこまで調べるのでしょうか。特に調査されやすい項目とそのポイントを解説していきます。

外注費などの経費

個人でも法人でも、運営していく中でほぼ間違いなく発生するのが「経費」です。経費として計上できる金額が増えれば、その分利益が圧縮されて課税される税金が少なくなるため、調査官としては経費の不適切な計上がないか、目を光らせてチェックをします。

なかでも、税務調査において要注意なのが「外注費」です。自社の仕事を外部の個人や法人に発注し、納品してもらうことで発生する費用のことですが、税務調査で指摘されるありがちなケースとしては、外注費に計上している経費が実状は「給与」に値するのではないか、という点です。

外注費の場合、一部の内容を除いて支払いの際に「源泉徴収」の必要がなく、社会保険関係の費用も発生しません。また、消費税についても外注費は課税収入となるため、収める消費税が控除されます。

つまり、同じ金額でも給与より外注費の方が税負担が軽くなるため、調査官としては租税回避を疑ってチェックをしてくるのです。

なお、下記のように、国税庁では「個人事業者と給与所得者の区分」について一定の事項を総合的に判断する、と定めており、外注費が給与に該当するのかどうかの判断基準の参考ともなります。

  • 外注している業務が、その人でなければできないような内容である
  • 外注した業務を行うにあたって、外注先に対して指揮監督を行っている
  • 外注した商品やサービス等が完成しなかった場合でも報酬を支払っている
  • 外注するにあたって、業務を行うために必要な材料や用具などを提供している

外注費として計上していた経費が給与であると指摘されると、遡って源泉所得税の納付が必要になります。

個人に対する外注費が多い会社については、上記のポイントを明確にした請負契約書を締結して保管しておきましょう。

源泉所得税

源泉所得税とは、会社が納税するために社員の給与から天引きした所得税分のことを意味します。会社員が納めるべき所得税については、会社が給与から天引き(源泉徴収)した上で、会社が一括で納税します。

当然ながら、源泉所得税は従業員の人数が増えると金額が大きくなり、税務調査においては主に以下の2点をチェックされます。

  • 源泉所得税の計算・・・間違いがないか、給与所得者の扶養控除等申告書などとの整合性
  • 年末調整の整合性・・・保険料控除や配偶者控除などの計算が適切かどうか

また、給与以外で従業員に支給した報酬の有無も、源泉所得税において申告漏れを指摘されやすいポイントです。もっとわかりやすく言うと、会社のお金で個人のものを購入していないか、個人的な旅行費用を経費で落としていないか、といった視点で、帳簿や請求書、領収書などを徹底的に調査されます。そのため、給与以外の現物給与を支給する際には、支出した目的や内容を細かく記録しておくことが重要となります。

消費税

税務調査における消費税の調査ポイントは取引区分の正確性です。

モノやサービスなどの取引は、消費税が課税される「課税取引」と課税されない「非課税取引・不課税取引・免税取引」があります。取引区分は扱うモノやサービスの内容によって判断されますが、区分に誤解があると「課税売上高」や「仕入税額控除」の算定に誤りが生じます。

取引で生じた課税対象の売上が1000万円以上の場合、翌々年度以降に消費税の課税事業者になりますので、課税対象売上が1000万円前後の事業者にとっては特に取引の課税区分の判断が重要になってきます。

近年はIT関連のさまざまな事業体が増えてきたこともあり、取引の課税区分の判断が難しいケースがあります。たとえばインターネットを通じて音楽、映像、電子書籍などを扱う場合、国内からの配信サービスを利用すれば課税取引となりますが、外国からの配信サービスであれば非課税となります。

このように、取引の課税区分については判断に迷う部分もありますので、税務調査においても細かくチェックされるポイントとなります。継続的に生じている取引での売上があり、もしそれが課税対象なのかどうか不安に思うのであれば、税務調査が来る前にあらかじめ税理士や税務署などに問い合わせて確認をしておきましょう。

印紙税

取引金額が記載された契約書などの一定の書類(課税文書)を作成した際は、所定の「印紙税」を納税しなければなりません。印紙税は、作成した書類に「収入印紙」を直接貼り付けて、消印を押印することで納税します。

税務調査では保管された文書のうち、課税対象となり得る書類を隅々までチェックし、課税文書に収入印紙が貼られているか、消印はあるかを調べます。

この「印紙税」は、過去に大手金融機関が税務調査で多額の印紙税納付漏れを指摘される、という事例がいくつも発生しているほど、認識を誤りやすい税のひとつとも言えます。

というのも課税文書かどうかの判断は内容によるところも大きく、また、税理士としても印紙税への関与は本来業務に含まれないことから、専門家であっても判断に悩むことが多いようです。

もし、はっきりとした契約書ではないが取引金額が記載されているような書類を扱っているのであれば、一度国税庁に問い合わせて印紙税の課税対象かどうかを確認しておくとよいでしょう。

クレジットカードの明細書

クレジットカードを利用の際に、一般的には決済のタイミングでお店などから発行される「利用明細(レシート)」と、後日カード会社から発行される「請求明細」のふたつをもらえます。

このとき、カード会社が発行する「請求明細」には一定期間の利用状況がまとめて記載されている事もあり、「請求明細」を領収書代わりに保管しておく方がいるかもしれません。

ところが、国税庁のホームページによると「請求明細は請求書等には該当しません」と明言されているのです。そのかわり、「利用明細(レシート)」に以下の項目が明記されていれば請求書等に該当する、とされています。

  • お店などの氏名、名称
  • 利用した年月日
  • 決済の内訳
  • 利用金額
  • 利用者の氏名又は名称

上記の項目が明記されていないと、クレジットカードでの決済の場合はいわゆる「領収書」であっても経費の証明にならない場合もあります。

つまり、税務調査ではクレジットカードの「利用明細(レシート)」を経費の証明としてチェックする可能性が高いため、日頃から経費をクレジットカードで決済しているのであれば、「利用明細(レシート)」は必ず保管しておくようにしましょう。

パソコン

今や会社のあらゆる情報はパソコンで管理しているのが一般的です。そこで、税務調査でも、場合によっては書類や領収書だけではなく、パソコン内のデータもチェックすることがあります。

ところが、特に個人事業者によく見られるかと思いますが、私用のパソコンを業務でも使っているという場合には、パソコンを調べられることに対してかなり抵抗がある人もいるでしょう。

国税庁によると、税務調査においてパソコンなどの電磁的記録を調べる際には「内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態」にしておくこと、また、資料の提出を求められたときには「調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものをお渡しいただく」ということが書かれています。

つまり、パソコンを調査することに対して拒否はできませんが、パソコン自体を調査官に直接触らせるまでの義務ないということになります。

そのため、たとえば会計ソフトの仕訳データやネットバンクの取引履歴など、パソコン内に保管しているデータはあらかじめフォルダを分けておくなどをしておくことで、税務調査時でもスムーズに対応できるでしょう。

銀行口座

税務調査においては「銀行口座」についても調査が入ります。

通常であれば銀行には守秘義務があるため、口座情報が漏れることはありません。

ですが、税務調査の場合は国税通則法の「質問検査権」が及ぶため、銀行は調査対象となった個人や法人の取引先としてみなされ、「本調査」に対する「反面調査」として口座情報を開示することになります。法人によっては、代表者やその家族の個人口座についても調査が及ぶこともあるでしょう。

よって、特に代表者の個人口座と法人口座との間でお金の動きが生じる場合などには、その根拠となる売買契約書や贈与契約書、借用書などを証拠として作成し、保管しておきましょう。実際は借用したお金なのに借用書を保管していない、となると、口座の送金履歴から贈与を指摘されてしまう、なんて可能性も考えられるのです。

おわりに

税務署などの調査をする側も、税務調査を行う以上は申告漏れなどなんらかの疑いを持ってやって来ることがほとんどです。

また、税務調査で指摘を受けると、遡って不納分を支払うほか、延滞税や加算税といったかなり高い税率の「追徴課税」をペナルティとして科されます。「ちょっとぐらい誤魔化してもバレないだろう」なんて考えでいると、結果的にとんでもない金額の追徴課税を命じられる、なんて可能性もあるのです。

そのため、普段からの正しい会計処理はもちろんのこと、証拠となる帳票類の保管をきちんと行うようにしましょう。

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