飲食店に税理士はいらない？飲食業に強い税理士の選び方や費用相場を解説

飲食店に税理士はいらない？

結論から言えば、飲食店経営に税理士は必要不可欠な存在です。 開業を検討している方の中には、コスト削減のため経理業務を自力で行おうと考える方も少なくありません。

しかし、飲食店の経営では、開業準備や日々の店舗運営、人材採用・育成などを行うため、多忙を極めます。それらと並行して、専門知識が求められる経理をこなすのは、時間的にも精神的にも大きな負担となります。

そのため、税理士に会計業務の支援を依頼することで、本業に専念しやすくなるでしょう。税理士のサポート内容は多岐にわたり、帳簿作成や記帳代行・節税対策・資金調達の支援など、煩雑な業務を代行してくれます。税務処理を適切に正確に行うことで、結果として飲食店の利益向上に繋がるため、飲食店経営においても税理士は欠かせません。

飲食店が税理士に依頼する際の選び方

飲食店が税理士を選ぶ際はどのような点を確認すべきでしょうか。ここでは、選ぶ際のポイントを8つ解説します。

• 飲食業に深い造詣があるか
• 気軽にコミュニケーションがとれるか
• 業務代行を依頼できるか
• 飲食店の税務顧問実績があるか
• 助成金や補助金に関して詳しいか
• 適切なアドバイスをくれるか
• 使用している会計ソフトの取扱い経験
• 税理士との相性

順に詳しく解説します。

飲食業に深い造詣があるか

飲食業界特有の事情に精通している税理士であるかどうかは、外せないポイントです。 飲食業は、食材の仕入れや在庫管理・人件費・廃棄ロスなど、他業種とは異なる会計処理や税務上の課題が多く存在します。

また、フードトラックや居酒屋、高級レストランなど、業態ごとに取り扱う商品やサービスが異なることが特徴です。そのため、税理士が業種や形態に詳しくないと適切な税務申告や経理処理が難しくなります。そのため、飲食店の経理や決算書作成経験が豊富か、減価償却や消費税申告などに精通しているかを確認することが大切です。

気軽にコミュニケーションがとれるか

コミュニケーションの取りやすさは、長期的な信頼関係を築くうえで重要な要素です。 専門的な知識がない経営者にとって、税理士の説明が難解だったり、質問しにくい雰囲気があったりすると、十分なサポートを受けられません。

また、定期的な面談やフォローアップがあるか、経営状況に応じたアドバイスがあるかも大切です。悩みや疑問に対して親身になって耳を傾けてくれる姿勢も、重要なポイントとなります。税理士の人柄やコミュニケーション能力を見極めるために、複数の税理士と面談し相性を確認することをおすすめします。

業務代行を依頼できるか

飲食店経営では、多岐にわたる業務に追われるため、経理業務に十分な時間を割くことが難しい場合もあります。そのため、税理士に記帳代行や給与計算などの業務を依頼できるかどうかは、重要なポイントです。経理業務の代行を依頼することで経営者は本業に集中できる時間を確保できるため、経営効率を高められるでしょう。

業務代行の範囲や料金体系は税理士により異なるため、事前によく確認しておくことが大切です。領収書や請求書の整理、会計ソフトへの入力、月次試算表の作成などどこまでを依頼できるのかを明確にしておきましょう。

飲食店の税務顧問実績があるか

税理士を選ぶ際、飲食店の税務顧問実績は重要な判断基準となります。 飲食店特有の会計処理や税務上の注意点、業界の慣習などを熟知している税理士であれば、的確なサポートが期待できます。

また、実績豊富な税理士は、過去の経験からさまざまなケースに対応できるノウハウを持っています。イレギュラーな事態が発生した場合でも、迅速かつ適切に対処してくれるでしょう。

同業他社の成功事例を参考にしながら、自店舗に最適な戦略のアドバイスを提示してもらえます。税理士事務所のWebサイトなどで、飲食店の顧問先数や実績などを確認しましょう。

助成金や補助金に関して詳しいか

飲食店経営において、助成金や補助金は資金調達の重要な手段の1つです。しかし、助成金や補助金は種類が多く、申請条件や手続きが複雑なため、専門家のサポートが必要となる場合があります。 税理士が助成金や補助金に関して詳しいかどうかは、資金繰りを改善し、経営を安定させるうえで重要なポイントです。

申請の際には、必要な書類作成や手続きも代行してくれる場合もあるため、時間や労力を大幅に削減できます。以上の理由から、税理士を探す際に助成金の申請の支援があるか、獲得の成功事例があるかを確認しましょう。

適切なアドバイスをくれるか

税理士は、単に税務申告や会計処理だけでなく、経営者に対して適切なアドバイスを提供することも重要な役割です。経営している立場では気づかない視点で、助言をもらえることもあります。 経営状況や財務状況を分析し、課題や改善点を見つけ具体的な対策を提案してくれる税理士は、頼りになる存在です。

例えば、売上アップの戦略やコスト削減の方法、資金調達の方法などを具体的に提案してくれる税理士を選びましょう。その際、税理士が提供するアドバイスが、客観的で信頼でき、明確な根拠に基づいているかどうかを確認することが重要です。

使用している会計ソフトの取扱い経験

会計ソフトは、日々の経理業務を効率化するために不可欠なツールです。担当の税理士が自社と同じ会計ソフトの使用経験があれば、データのやり取りが容易でコミュニケーションも円滑に進みます。

また、会計ソフトの機能や操作方法について、税理士からアドバイスやサポートを受けることも可能です。そのため、税理士を選ぶ際は、使用している会計ソフトを伝え、取り扱い経験や知識について確認しておきましょう。クラウド会計ソフトなど、最新のITツールに精通している税理士であれば、より効率的な経理体制を構築できる可能性があります。

税理士との相性

税理士との相性は最も重要な要素です。 税理士とは、経営状況や財務状況など企業にとって重要な情報を共有し、長期的な関係を築いていくことになります。そのため、信頼できる人間性や、親身に相談に乗ってくれる姿勢を持つ税理士を選ぶことが大切です。

相性が良い税理士であれば、気軽に相談できる雰囲気があり、疑問や不安を解消しやすくなります。また、経営者自身の考えや価値観を理解してくれる税理士であれば、より的確なアドバイスやサポートを提供してくれるでしょう。複数の税理士と実際に対面で面談し、相性を見極めることをおすすめします。

飲食店が税理士に依頼するメリット

ここでは、飲食店が税理士へ依頼するメリットを6つ解説します。

• スムーズな税務申告とリスクの低減
• 飲食店に有利な節税対策がとれる
• 経営状況の改善につながるアドバイスが受けられる
• 税務調査への対応に協力してもらえる
• 本業に集中できる
• 経営に必要な情報提供を受けられる

順番に詳しく見ていきましょう。

スムーズな税務申告とリスクの低減

税務申告は、専門知識が求められる複雑な作業であり、誤りがあると追徴課税などのペナルティが課される可能性があります。 税理士に依頼することで、税法の専門家として正確に申告するための助言を受け、税務リスクを低減できます。

飲食店では、現金取引が多く税務署のチェックが厳しくなりがちです。税理士は、日々の取引を適切に処理し、税務署からの問い合わせや税務調査にも対応してくれるため、安心して経営に専念できます。正確な申告は、金融機関からの融資を受ける際にも有利に働くでしょう。不要な税務リスクを負わないためにも、税理士との契約をおすすめします。

飲食店に有利な節税対策がとれる

税理士への依頼費用を懸念する方もいるかもしれませんが、節税効果によって費用を削減できるケースが多くあります。 売上から経費を差し引いた金額に応じて税金が課せられますが、その金額が大きければ大きいほど支払うべき税金も増加します。

税務のプロに税務業務を依頼することで、節税に関するアドバイスを受けられます。経費として計上できる範囲の判断や納税額を抑えるための工夫など、税理士ならではの視点で助言が可能です。飲食業に強い税理士と連携することで、合法的な範囲内で最大限の節税効果を得て利益を最大化できるでしょう。

経営状況の改善につながるアドバイスが受けられる

税理士は、日々の帳簿や財務諸表を分析し、店舗の経営状況を把握しています。 そのため、キャッシュフローや経営の悪化にいち早く気付き、改善に向けたアドバイスの提供を期待できます。事前に税理士から経営や税務に関する助言を受ければ、経営の危機も回避が可能です。

何にどれくらいの費用がかかっているのか、店の弱点はどこなのかなど、客観的な視点から店舗の状況を把握できるのが強みです。資金繰りのプロとして、経営改善に向けたアドバイスを提供してくれるため、手遅れになる前に対策を講じることが可能です。

税務調査への対応に協力してもらえる

税務調査は、申告内容の正確性を確認するために行われます。飲食店経営者の中には、税務調査に向けた準備や対応方法が分からず不安を感じる方も少なくありません。 税理士に依頼すれば、税務調査に必要な書類の整備や準備をサポートしてもらえます。

また、税務調査の際に税理士が立会いを依頼することも可能です。専門的な視点で助言や対応を依頼できるため、安心して調査に臨めます。飲食業界では現金取引も多く、帳簿や領収書の適切な管理が重要です。税理士に依頼することで、正確な書類を揃え、適切な形で税務調査を受けられます。

本業に集中できる

税理士に経理業務を依頼することで、経営者は本業に専念できる時間が生まれる点も、メリットです。 飲食店経営者が経理業務に時間を取られ、売上や損益を把握できていない場合、経営に支障をきたす可能性があります。

また、店舗運営や新メニュー開発、従業員の教育・管理といった重要な業務に十分な時間を割けなくなる恐れがあります。店舗の運営に専念できないことは、売上低下や顧客離れのリスクを高め、利益を損失しかねません。税理士がいれば、適切なアドバイスの提案や効率化をサポートし、経営者が本業に集中できる環境を整えてくれることが期待できます。

経営に必要な情報提供を受けられる

飲食店が税理士に依頼することで、経営に必要な情報の提供を受けられる点も大きなメリットです。 飲食業に強い税理士は、税務や会計の知識に加え、業界動向や経営に関する幅広い情報を持っています。 成功事例や最新の税務情報、補助金・助成金の情報を提供してもらうことで、経営戦略を効果的に進められます。

経営に必要な最新情報を入手できることは、店舗の競争力を高めるだけではありません。新たなビジネスチャンスを掴んだり、リスクを回避することにもつながります。これらの情報を活かすことで、安定した経営を維持することや、さらなる成長も期待できるでしょう。

飲食店が税理士に依頼する際の費用相場

飲食店が税理士に依頼する費用は、売上規模や依頼内容によって異なります。税理士報酬の相場を知っておき、適切な税理士選びに役立てましょう。以下に、顧問料と申告料・決算料の相場をまとめました。

顧問料

顧問料は、税理士に顧問として継続的に業務を依頼する場合に発生する費用です。 顧問料には、税務相談や税務書類の作成、節税対策のアドバイスなどが含まれます。ここでは、月額の顧問料を記帳代行の有無に分けて、解説します。

記帳代行は、日々の取引データを会計ソフトへ入力する作業を税理士事務所が代行するサービスです。別に費用が必要になりますが、記録する作業を税理士に丸投げできるため、多忙な経営者におすすめです。

申告料・決算料

申告料・決算料は、確定申告や決算書の作成を税理士に依頼する際に発生する費用です。 ここでは、申告と決算でかかる費用を、消費税申告の有無に分けて解説します。

なお、飲食店の業態によっても費用は変動します。接待を中心とした飲食店や風俗営業に該当する店舗では、相場より1～2万円ほど高くなることがあります。居酒屋やラーメン店などの一般的な飲食店やテイクアウトを行う店舗は、相場内に収まることが一般的です。

飲食店が税理士に依頼する際の注意点

依頼する時期

税理士に初めて依頼する場合は、確定申告期限の半年前を目安に準備を始めましょう。 なぜなら、確定申告直前では税理士が繁忙期のため、受任が難しい場合や料金が高くなる可能性があるからです。

税理士を変更する際は、決算後が最適なタイミングです。前の税理士に決算までを担当してもらい、新しい税理士には次の会計期間から依頼することで、スムーズな引き継ぎが可能です。帳簿を自分で付けている場合でも、税金の計算や相談、申告書の作成と申告業務だけでも依頼できます。

ただし、適正な価格で契約するためには、早めに税理士を探し依頼内容を明確に伝えておきましょう。

報酬額

税理士報酬は、高すぎても安すぎても注意が必要です。 予算に見合わない高額な報酬は経営を圧迫し、格安な報酬はサポート内容が不十分な場合があります。格安の場合、オプション料金が追加され、結果的に相場以上の金額になるケースも少なくありません。

税理士の業務範囲は多岐にわたるため、費用に見合うサポートが得られるか見極めましょう。契約前に複数の税理士から見積もりを取り、料金だけでなく提供されるサービス内容をしっかり比較検討することが大切です。費用が適切かを見極めるためには、複数の税理士事務所に費用の見積もりを依頼しましょう。

対応が迅速か

税理士を選ぶ際は、対応が迅速であるかも重要な判断基準です。 長期的な信頼関係を築くには、円滑な意思疎通が不可欠です。連絡がなかなか取れない状況が続くと、経営判断に支障をきたす可能性もあります。急な融資が必要になった際や、税務署からの問い合わせがあった場合など、迅速な対応が求められる場面は少なくありません。

また、質問に対して丁寧かつ的確な回答が得られるか、契約前に確認しておきましょう。問い合わせや打ち合わせの段階で、回答が遅いなど不安を感じる場合は、他の税理士も検討することをおすすめします。

飲食店での税理士の役目

税理士は、税務代理や税務書類の作成、税務相談といった業務を担うだけでではありません。飲食店経営をサポートするさまざまな役割を担っています。ここでは、飲食店経営者にとって有益な税理士の業務を具体的に解説します。

記帳代行

記帳代行は、領収書や請求書などの資料をもとに、税理士が帳簿作成を代わりに行ってくれるサービスです。 月次財務報告書や決算書・各種税務申告書年末調整・償却資産税の申告、法定調書・給与支払報告書の作成などを依頼できます。

税理士が作成した書類は、税務署からの問い合わせにも税理士が対応してくれるため、安心して店舗業務に専念できるでしょう。記帳代行を含めた顧問料契約をしてくれる税理士事務所もあるため、契約の前に料金形態を確認することが重要です。

税金対策のアドバイス

事業が軌道に乗ると、納税額が増加し、税負担が経営の課題となることがあります。税務の専門知識がない場合、適切な対策を講じられず、多額の税金を納めることになる可能性もあるでしょう。

しかし、 税理士に相談することで、飲食店の個別の状況に合わせた節税対策や、効果的な資金管理の方法を提案してもらえます。また、税法は頻繁に改正されるため、最新の情報に精通している税理士のサポートは、飲食店経営にとって非常に重要です。

助成金や補助金のアドバイス

飲食店が利用できる助成金や補助金は多くあります。しかし、情報収集に時間がかかったり、申請手続きが複雑であったりして、活用できないケースも少なくありません。 税理士は、最新の助成金制度に関する情報の提供や、最適な助成金・補助金を提案してくれます。

また、申請に必要な書類作成の支援や採択後の事務手続きまで、トータルでサポートしてくれます。そのため、専門家である税理士に任せる方が、時間や労力を削減でき最適な選択ができる点で有利です。

決算のアドバイス

月次決算は、年次決算のように法的に義務付けられてはいません。しかし、飲食店は売上や仕入れの変動が大きいため、経営状況をいち早く把握するために重要な業務です。 決算を税理士に依頼することで、帳簿の記帳から決算書の作成までを任せられます。

また、決算書から経営状況を詳しく分析することで、店舗運営の現状を正確に把握できます。その結果、改善点や課題が明確になり、税理士から具体的なアドバイスを受けられるでしょう。

資金調達の支援

飲食店経営において、開業時や事業拡大の際に資金調達が必要となる場面は少なくありません。 税理士は、金融機関からの融資を受けるために必要な決算書や事業計画書、資金繰り表などの作成をバックアップします。

また、銀行や公的融資制度など最適な資金調達方法の選定や融資申請書の作成、財務分析などもサポートします。税理士に相談することで資金調達を円滑に進め、事業の成長を加速させることも可能です。

飲食店が税理士に依頼する際のよくある質問

• 飲食店は経理業務を税理士に丸投げできる？
• 飲食店経営に税理士との契約は必要？
• 小さな飲食店の経理は自分でできる？

順に見ていきましょう。

飲食店は経理業務を税理士に丸投げできる？

経理業務に自信がない方は、記帳代行を含め経理全般を税理士に丸投げできる事務所を探すのがおすすめです。 飲食店を開業する際、物件契約や仕入れ、人材確保など多くの業務に追われます。

経理業務に慣れていない場合、日々の記帳作業に時間を浪費する場合もあります。また、確定申告の準備にも時間をとられたりし、本業に支障をきたす事態になりかねません。しかし、税理士に経理を丸投げすることで、本業に専念できるでしょう。

飲食店経営に税理士との契約は必要？

飲食店経営には、税理士との契約が必要です。 店舗運営や人材育成と並行して経理業務を行うのは、時間的にも体力的にも大きな負担です。税理士は記帳代行や資金調達支援、節税対策に経営のアドバイスも提供してくれます。

さらに、経理上のミスや税務申告漏れのリスクを軽減できるほか、最新の税制改正や助成金・補助金の情報を得られます。これらの多岐にわたるサポートを受けることで、経営者は本業に専念できるため、結果的にコスト削減や利益向上に繋がるでしょう。

小さな飲食店の経理は自分でできる？

小規模な飲食店でも経理を自分で行うことは可能ですが、税理士に依頼する方が経営効率を高めるうえで有利です。 会計ソフトを活用すれば日々の帳簿付けはできます。しかし、毎月30時間ほどの作業が必要となり、経営に割く時間の減少につながります。

まとめ

この記事では、飲食店経営における税理士の必要性や、税理士の選び方や費用相場を詳しく解説しました。税理士は飲食店経営において、税務や会計の専門的なサポートを提供し、経営者が本業に専念できる環境を整えてくれる心強いパートナーです。

特に、飲食業に特化していれば、業界特有の課題や税務処理に精通しています。節税対策や助成金・補助金の活用など、多岐にわたる支援を受けられるでしょう。経営者は店舗の運営に集中できるため、経営効率が向上し売上や利益の増加につながります。

税理士の契約を検討する際は、この記事を参考に信頼のおける最適な税理士を選び、経営の成功につなげていきましょう。