製造業で顧問税理士をつけるメリットは?料金実例や税理士の選び方を紹介

製造業の会計・税務においては、資産の減価償却のほか、原価計算や在庫管理が非常に重要となります。さらに資金繰り管理も必要となるため、事業を健全に運営していくために税理士は必須ともいえる存在です。
そこでK&P税理士法人の香川晋平先生への取材をもとに、製造業に強い税理士の特徴などをまとめました。また、製造業の方は実際、どのような契約内容でいくらで顧問契約をしているのか、その実例も紹介します。
目次
製造業で顧問税理士をつけるメリットとは?
製造業は経理面で特殊な部分があるため、経営に専念するためにも、税理士にサポートを依頼することを検討される方は多いでしょう。
では、税理士と顧問契約することで、具体的にはどのような利点を得られるのでしょうか。K&P税理士法人の香川晋平先生にお話を伺いました。
ー 香川晋平 税理士
製造業は、お金の動きと利益の計算に大きな乖離が生じることが多い業界です。そのため、自社が良い状況なのか悪い状況なのかが分かりづらく、経営判断を誤ってしまうリスクがあります。
税理士をつけ、顧問として継続的に原価計算や資金繰り管理をサポートしてもらうことで自社の実態をタイムリーに把握できるようになり、適切な経営判断を行えます。
また製造業では、設備投資が必要となる場面も多いでしょう。その際には、銀行への説明資料の作成など、資金調達においてもサポートが期待できるため、融資が実行されやすくなる点もメリットとして挙げられます。
節税につながる!優遇税制のアドバイスも
資金繰りにおいては、補助金等だけでなく優遇税制も積極的に活用したいところです。
たとえば「中小企業投資促進税制」が適用されれば、設備投資した際に特別償却や税額控除を受けられ、税金をおさえることができます。
顧問税理士がいればそのような税制手続きのサポートも可能ですし、自社に有利な最新の税制情報を提供してもらえるでしょう。
製造業における税理士選びのコツは?
以上のことを考えると、本業に専念するためにも、やはり顧問税理士がいると心強いといえるでしょう。では製造業における税理士選びのコツについて、香川晋平先生に伺いました。
ー 香川晋平 税理士
製造業では、減価償却の適用や原価計算、資金繰り管理の面で、他の業種と異なる特殊な要素がありますので、やはり製造業に精通している税理士に顧問を依頼されるのがよいでしょう。
製造業の顧問先を数多く抱えている税理士ほど、他社の減価償却例や原価計算の仕組み、資金繰り管理に多く携わっているので、その会社にあったアドバイスをもらえることがより期待できます。
特に、原価計算や資金繰り管理は、税理士よりも公認会計士の方が得意とされている方が多く、公認会計士が在籍する事務所に顧問を依頼することも検討の余地があるでしょう。
製造業の税理士費用相場はどのくらい?
顧問税理士の必要性やメリットがわかったところで、気になるのは「報酬金額」ではないでしょうか。
税理士ドットコムでご契約された方の実績を見ると、製造業を営む方が税理士に依頼したときの顧問料の平均は、個人事業主で年間約22万円、法人で年間約48万円となっています。
なお、これはあくまで平均であり、実際には税理士にどこまで業務を依頼するか、売上規模などによって変わってきます。
実際いくら?製造業の税理士報酬実例
それでは実際に、製造業を営む方がいくらで税理士と顧問契約しているのか、これまで税理士ドットコムに寄せられた約10万件の相談実績(※)をもとに実例をご紹介します。
※税理士ドットコムの「税理士紹介サービス」に寄せられた相談
実例1)年間顧問料:240,000円
売上高1200万円/菓子製造販売業(大阪府・個人事業主)
菓子の製造販売を行う方より、ご契約中の税理士事務所のサービスに不満があり、税理士変更を検討しているというご相談です。
会計や税務について明るくないため、しっかりサポートしていただける税理士をご希望でした。
複数の税理士から相見積もりをとり、もっとも低料金だった税理士と、記帳代行、確定申告料込み年間24万円(税別)でご契約されました。
実例2)年間顧問料:250,000円
売上高3000万円/衣類製造業(東京都・個人事業主)
衣服の製造・卸をされている方より、売上が上がってきたため顧問税理士を探しているというご相談です。
領収書の処理や青色申告を自身で行っていましたが、節税対策など親身に対応していただける税理士をご希望でした。
条件に合う税理士と、記帳代行、確定申告料込み年間25万円(税別)でご契約されました。
実例3)年間顧問料:280,000円
売上高4000万円/印刷業(大阪府・個人事業主)
ご契約中の税理士が廃業されるため、新しく税理士を探しているというご相談です。
記帳代行込みで30万円以下で依頼できる税理士をご紹介し、その中の1名とご面談され、記帳代行、確定申告料込み年間28万円(税別)でご契約されました。
実例4)年間顧問料:215,000円
売上高1700万円/イベント機材の製造(東京都・法人)
イベント機材の製造業を行う方より、今まで自社で決算申告をしてきたものの、日々経理処理に戸惑うことがあるため、顧問税理士をお探しというご相談です。
経理処理などのアドバイスが都度受けられ、また小さな会社であるため低予算でお願いしたいとのことでした。
記帳は自社で行うことを前提に、複数の事務所から見積もりを取られた結果、面談を行った税理士と決算申告料込みで年間21万5000円(税別)でご契約されました。
実例5)年間顧問料:220,000円
売上高1000万円/サーフボード製造販売業(千葉県・個人事業主)
サーフボードの製造販売を行う方より、ご契約中の税理士の廃業に伴い、新たに税理士を探しているというご相談です。
紹介された複数の事務所の中から近くの税理士と面談をされ、金額も予算内だったことから、確定申告料込みで年間22万円(税別)でご契約されました。
実例6)年間顧問料:300,000円
売上高4000万円/金属加工製造業(茨城県・法人)
契約中の税理士がいらっしゃいますが、報酬が高額であるなどの不満があり、新しい税理士を探しているというケースです。
節税などの相談と決算申告の依頼を希望されており、自計化する・訪問回数を減らすなど依頼内容を精査し、年間30万以内で収めたいというご希望でした。
複数の事務所と面談され、好感触で予算に合う税理士と決算料込み年間30万円(税別)でご契約となりました。
実例7)年間顧問料:500,000円
売上高1億5000万円/食品製造販売業(愛知県・法人)
契約中の税理士が廃業することになったが後任がいないため、経営者の方ご自身が次の担当税理士を探さざるを得なくなり、ご相談いただいたケースです。
記帳代行から決算、税務申告や決算評価など合わせて年間50万円程度で依頼できる、40・50代の税理士をご希望でした。
複数の候補の中から1事務所と面談され、希望予算内の年間50万円(税別)でご契約となりました。
最低限知っておくべき製造業の会計・税務知識
確定申告や決算業務を税理士にお願いするとしても、経営に携わる以上は税務・会計知識を最低限持っておきたいところです。香川税理士によると、特に製造業では次のようなポイントがあるそうです。
ー 香川晋平 税理士
製造業の会計では、製品の製造原価を計算する原価計算が必要となり、商業簿記ではなく工業簿記が適用される点が、他の業種と異なるポイントです。
原価計算は製品1つ当たりの製造コストや、生産途中である仕掛品の製造コストを計算することで、利益計算がより適正にできるだけでなく、作業効率の向上や価格戦略にも役立てることができます。
そのため、原価計算の仕組みを構築することは、経営管理上で極めて重要になります。
また、資金繰り面から考えると、ビジネスサイクルが「設備投資→原材料の仕入→製品の製造→製品の在庫→製品の販売→販売代金の回収」となり、投下資金の回収までに時間を要します。
現預金残高を常に余裕のある状態で維持しておくことが重要で、目安としては平均月商の2か月分の現預金残高を常に確保しておくことをおすすめします。
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