譲渡所得の確定申告における税理士報酬はいくら?料金実例や注意点を紹介

土地や建物、株式、貴金属などの資産を売却し、「譲渡所得」を得た場合、確定申告が必要になるケースがあります。
譲渡所得の確定申告は自身で手続き可能ですが、税理士にお願いすることもできます。その際にかかる税理士報酬について、実例をもとに金額を紹介します。
あわせて、譲渡所得の確定申告における注意点や税理士に頼むメリットについて、田園調布坂上事務所の中川崇先生にお話を伺いました。
目次
実際いくら?譲渡所得の確定申告における税理士報酬
確定申告は税理士にお願いすることができますが、「税理士に依頼するといくらかかるか」は気になるところでしょう。
そこで、これまでに税理士ドットコムに寄せられた約10万件の相談実績の中から、実際に譲渡所得の確定申告を税理士に依頼された方の費用実例を紹介します。
実例1)確定申告費用:200,000円
譲渡所得金額2200万円(不動産2件)/愛知県
相続した2件の不動産を売却したため、申告業務をお願いできる税理士を探していたケースです。売却した不動産はいずれも空き家で、取得時の契約書等の資料がありました。
ご依頼主の自宅から近い場所にある税理士事務所と面談を行ったのち、譲渡所得の確定申告業務を20万円(税別)でご契約されました。
実例2)確定申告費用:190,000円
譲渡所得金額1億円(不動産2件)/神奈川県
知り合いの司法書士(税理士資格保有者)に相談したところ見積もりが予想以上に高額だったとのことで、別の税理士をお探しでした。
相続により取得した2件の不動産は祖父の代に購入されたもののため、取得時の金額などはわからないというケースです。
複数の税理士の中から不動産売買と相続に強い会計事務所を選ばれ、譲渡所得の申告業務をご依頼されました。
実例3)確定申告費用:150,000円
譲渡所得金額2800万円(不動産2件)/埼玉県
所有していた建物と土地を売却したため、確定申告を依頼できる税理士を探しているというケースです。
建物は取り壊し、更地にしてから売却したとのことですが、いずれの不動産も数十年前に相続されたもののため、取得時の金額は不明でした。
複数の候補の中から1事務所と面談され、税理報酬15万円(税別)でご契約となりました。
※上記はあくまで一例です。個別の事情により税理士報酬は変動します
そもそも譲渡所得とは
譲渡所得とは、資産を売却(譲渡)した際に得た収入のことです。
資産の売却金額から取得費・譲渡費用・特別控除を差し引いた「売却益」が譲渡所得の金額となります。
- 取得費: 宝石や貴金属などは購入費、土地建物の場合は購入代金と購入手数料などの合計額。相続などで取得し、取得費がわからない場合は売却代金の5%
- 譲渡費用: 資産売却のための費用で、土地や建物の場合は仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、借家人などに支払った立退料、取壊し費用など
- 特別控除:不動産と有価証券以外(総合課税の場合)の特別控除額は最高50万円。
不動産の場合は「マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例」や「公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例」などが適用できる場合がある
前述の実例は不動産のみですが、土地や建物のほか、株式、貴金属、美術品、ゴルフの会員権など、譲渡所得の対象となる資産は多岐に渡ります。また自身で購入した資産だけでなく、相続や贈与で取得した資産の売却においても同様です。
課税対象とならない資産は、「破産手続きや債務の弁済のために、公権力が強制的に資産を譲渡したことによる所得」や「不動産以外の生活に用いる財産〈生活用動産〉の譲渡による所得(貴金属や宝石、書画、骨董などで1個または一対の価額が30万円を超えるものを除く)」など、ごく一部に限られます。
※譲渡所得の対象となる財産や、譲渡所得の計算方法については以下の記事で詳しく解説しています。
譲渡所得の確定申告が必要な人
課税対象となる資産を売却し譲渡所得がある人は、以下の条件に当てはまる場合に、譲渡所得を得た年の翌年2月16日〜3月15日の期間中に確定申告が必要になります。
- 給与所得者等:給与所得以外の譲渡所得を含めたすべての所得が年間20万円以上ある、または、給与所得が年間2000万円以上ある人 など
- 給与所得者以外:譲渡所得を含めたすべての所得が年間48万円以上あったり、公的年金等に係る雑所得の金額から所得控除を差し引くと残額がある人 など
基本的には資産を売却しても売却益が出なかった場合は、譲渡所得が発生しないため確定申告をする必要はありません。
ただし、居住用不動産を売却した結果、マイナスになった(譲渡損が出た)場合には、確定申告をすることで、事業所得や給与所得など他の所得との損益通算できるほか、その年の所得で控除しきれない分は、翌年以後3年間にわたり損失を繰り越すことができる場合もあります(長期譲渡所得に該当し一定の要件を満たす場合)。
また、前述した不動産における特別控除を利用する場合や、株式では損益通算を行う場合も確定申告が必要になります。
譲渡所得の確定申告を税理士に頼むメリット
譲渡所得がある方の確定申告について、田園調布坂上事務所の中川崇先生にお話を伺いました。
Q1.譲渡所得について、確定申告をする際に注意すべきポイントはどういった点でしょうか?
まず、資料を何でもいいので取り揃えることです。申告に使わない場合も多いですが、何らかの参考になる可能性があります。
計算の上では、建物等の場合について、譲渡所得の計算の際に減価償却の算出が必要となります。この減価償却については取得時期、目的や種類によって方法や使う数字が異なります。それを間違わないようにすることです。
また、法律上の特例が使えるかどうかを見据えることです。相続した不動産や有価証券については相続税の一部が取得費に算入できることもあります。また、居住用不動産の控除規定については条件が細かいため、よく条件を見ないと間違えます。
最後に、申告しなくていい場合は、申告するかしないかを見極めることです。他の税金や、社会保険料などに影響を及ぼすこともありえます。
Q2.譲渡所得について、確定申告を税理士に依頼した場合どのようなメリットが考えられるでしょうか?
依頼する場合は、売却の前にされたほうがいいです。ここではそのことを前提にお答えいたします。
まず、売るタイミングや売り方についてアドバイスが貰えます。それを間違えると特例が使えないなど、税額が大幅に変わることがあります。税理士の中には信頼ある会社と提携している人もいますので、売却も安心でしょう。
次に、経験や知識が多くある税理士の手を借りるので、自分自身では気づかない方法や特例を使って申告することもできます。たとえば、不動産の取得価格がわからないときはどうすればいいかも税理士は知っています。
最後に、税理士に依頼することで自分が間違った申告をしているのではと言う不安から解放され、安心感を持って申告することができます。
おわりに
以上のように、資産を売却すると譲渡所得の確定申告が必要になる場合があります。
特に「相続で取得した財産のため、取得金額がわからない」「居住用不動産を売却したので特例を適用したい」というケースでは、確定申告の手続きも含め税理士に相談するとよいでしょう。
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