志村けんさん「遺産10億円」報道、巨額の相続税はいくら?
顧問税理士

新型コロナウイルスに感染して亡くなった志村けんさんの遺産はどうなるのか。週刊女性PRIMEが、総額10億円にものぼる遺産について、取り上げていた。
週刊女性PRIMEによると、志村さんは、1987年に購入した東京・三鷹の自宅(当時の価値で4億円)のほか、港区マンション、静岡県熱海市のマンションの少なくとも3つの物件を所有していたという。絶頂期には年収3億円以上もあったことから、遺産は10億円とも言われている。
生涯独身だった志村さんには子どもがいないため、2人の兄が相続することになる。相続税はどうなるのだろうか。伊藤俊一税理士に聞いた。
●法定相続人が兄弟2人という前提で計算
相続税の仕組みはどうなっているのか。
「相続税の申告と納税は、遺産が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に必要となります。その基礎控除額の範囲内であれば申告も納税も必要ありません。
計算方法ですが、ざっくりといえば、ますはじめに遺産から借金などの負債を差し引いて、さらに基礎控除額を差し引きます。そして、その差し引いた後の金額に民法の法定相続分をいったん乗じます。
その相続分に応じた各相続人の遺産額を算定します。その各遺産額に相続税の税率を当てはめ、相続税額が計算されるのです。
志村けんさんのケースでは、記事によると配偶者や実子がおらず、法定相続人がご兄弟様2人であることを前提として計算していくこととなります」
●相続税額は2人で約4.8億円に
具体的にはどんな計算になるのか。
「遺産が時価10億円と仮定すると、まず10億円-3,000万円+600万円×2人=約9,5億円というふうに基礎控除額を差し引きます。次に法定相続人が2人ですから、約9.5億円については1人あたり遺産額約4.75億円となります。その約4.75億円に税率を乗じるのです。
1人あたりの遺産が6億円以下の場合、税率50%、控除額4,200万円ですから、1人当たり約4.75億円×50%-4,200万円=約2億円となります。ただし、今回の場合、ご兄弟様しか法定相続人がいないため、相続税額が2割増しになります(2割加算)。
つまり、お一人あたり約2億円×1.2=約2.4億円、お二人で約4.8億円となります。遺産総額10億円とありますが、おおよそ半分にあたる約5億円が相続税額になると想定されます」
●コロナで期限延長が認められている
納付期限はいつまでか。
「相続税の申告期限、納付期限は、原則として、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内です。
志村けんさんのケースでは、2021年1月29日が原則の申告納付期限ということとなりますので原則の申告納付期限は過ぎているように思えます。
しかし、現時点では新型コロナウイルス感染症の影響により原則の期限までに申告・納付等が困難な方もおられると考えられ、そのような方、つまり日本の国民のすべての方に、『申告書の余白に所定の文言を記載していただく等の極めて簡易な方法によって』期限延長が認められています。
志村さんのケースも当然それが適用されますので、コロナが収束し、申告書作成、申告といった時点で納付をすればよい、ということになります」
【取材協力税理士】
伊藤俊一(いとうしゅんいち)税理士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
愛知県生。一橋大学大学院修士。M&A、組織再編、事業承継、相続税対策等に係るタックスプランニングに専門特化。現在,一橋大学大学院博士課程在学中。専門家向け税実務書執筆、税専門誌への寄稿多数。税理士等専門家向けセミナー件数は年間約150本超。
事務所名 : 伊藤俊一税理士事務所
事務所URL : http://www.tokyo-zeirishi-ito.com/