すしざんまい、「一番マグロ」史上最高値5.1億円は「仕入」か「広告費」か? 税理士が解説
勘定科目
2026年1月5日、東京・豊洲市場で行われた新春恒例の初競りで、「すしざんまい」を展開する株式会社喜代村が、青森・大間産の本マグロ(243キロ)を史上最高値5億1030万円(記録が残る1999年以降)で競り落とした。すしざんまいが6年前に競り落とした3億3360万円を大幅に塗り替える驚愕の落札額となった。
しかし、驚くのは価格だけではない。喜代村の木村清社長は、この超高額マグロを全国の店舗で、赤身398円、中トロ498円、大トロ598円(いずれも1貫・税抜)という通常価格で提供したのだ。
単純計算でも1貫あたり数万円の原価となるため、インターネットやSNS上では「1貫5万円でも元が取れないのでは?」「もはやボランティアだ」といった声や広告宣伝費としての高い効果についての意見が上がっている。
経営的な視点で見れば、常識外れの「原価割れ」となるが、この莫大な支出は、会計上どのように処理されるのだろうか。気になる勘定科目の実態を小幡兼志税理士に聞いた。
●5億円のマグロ代、「勘定科目」の正解は?
ーーこのマグロ代金5億円は、帳簿上どのような勘定科目で仕訳するのが「正解」なのでしょうか?
現在の会計ルールには、いわゆる「ご祝儀価格」で購入した場合の明確な規定はありません。そのため、一般的には割増分も含めた全額を「仕入(原材料費)」として計上するのが、最も原則に忠実な処理といえます。
ただし、この取引には多大な広告宣伝効果があることは間違いありません。そのため、通常の仕入価格相当額を「仕入」として処理し、残額を「広告宣伝費」として処理することも、実態を反映した処理として容認される余地はあるでしょう。
なお、商売は「安く仕入れて高く売る」のが基本ですが、あえて相場(時価)より高く仕入れる行為は、税務署の目には「差額分を相手にプレゼントした」と映り、「寄附金」とみなされるリスクがあります。
しかし、喜代村の木村社長がマグロの初競りでご祝儀相場を出すのは毎年恒例であり、広告宣伝効果の高さは客観的に見ても明らかです。また、特定の第三者に利益を供与する意図も認められないため、寄附金とみなされるリスクはほぼないと考えられます。
●発生した経費は他の利益と相殺でき、法人税等の納税額を圧縮
ーー今回は、売上より経費が大きく上回る「大赤字」の状態ですが、税制上のメリットはあるのでしょうか。
まず、「大赤字」の状態だからといって、何か特有の税制上のメリットがあるわけではありません。しかし、今回のマグロの取引に伴って発生した経費は、他の利益と相殺できるため、結果として利益が圧縮され、法人税等の納付額が少なくなります。
●寄附金に当たる「低額譲渡」とみなされるリスクは
ーー1貫あたり「数万円」の価値があるものを「数百円」で売る行為は、税務上のリスクはないのでしょうか?
1貫あたり「数万円」の価値があるものを「数百円」で売る行為は、税務上の「低額譲渡」として、時価と実際の売却額との差額が寄附金とみなされるリスクがあります。
ただし、今回の取引に関しては、法人税法上の「寄附金」ではなく、集客のための「正当な販売促進活動」と解釈される可能性が高いです。
たとえば、スーパーの目玉商品(卵1円セールなど)と同じ理屈で、たとえ原価割れしていても、それが将来の利益につながる営業戦略であれば、税務上指摘されるリスクは極めて低いでしょう。
そもそも、すしざんまいにおけるマグロの販売価格はあくまでも数百円なわけですから(そもそも時価としても数百円という意味)、低額譲渡を指摘されるリスクはその点からも低いと考えます。
【取材協力税理士】
小幡 兼志(おばた けんし)公認会計士・税理士・CFP
神戸大学経済学部卒業。在学中に公認会計士試験合格後、有限責任監査法人トーマツに入社し、製造業や小売業の財務諸表監査や内部統制監査に従事。その後、マーケティング会社や税理士法人での勤務を経て独立。資金繰りに苦しんでいる中小企業が多いことから、融資サポートや補助金支援など総合的な財務コンサルティングに力を入れている。
事務所名 :小幡兼志公認会計士事務所
事務所URL:https://obatax.jp/












