暗号資産の所得区分が「雑所得」から「譲渡所得」に変更。投資家にはどんな影響がある?税理士が徹底解説
仮想通貨
長らく日本の暗号資産(仮想通貨)投資家を悩ませてきた「最大55%」という高い税率。この現状が、ついに大きく変わろうとしている。
2025年12月19日に与党から発表された「令和8年度(2026年度)税制改正大綱」において、暗号資産の税制を抜本的に見直す方針が明記された。
これまで原則として、暗号資産の利益は「雑所得」に分類され、給与所得などと合算して課税される「総合課税」(税率最大55%)の対象だったが、一定の条件下で株や国内FXと同様の「申告分離課税」(一律20.315%)へと移行する見通しとなった。
今回の改正案では、所得税・住民税を合わせて一律約20%の税率が適用されるだけでなく、多くの投資家が待ち望んでいた「損失の3年間繰越控除」の導入も検討されている。
これらの改正は、2028年1月から施行される見込みだ。
暗号資産が、名実ともに「金融商品」としての地位を確立するための大きな一歩と言えるが、もし税制が改正されたら、個人投資家にどのような変化をもたらすのか。暗号資産の税務に詳しい速水芹苗税理士に話を聞いた。
●給与500万円、暗号資産の利益500万円の場合、約36万円の減税に
ーー暗号資産の所得区分が「雑所得(総合課税)」から「譲渡所得(申告分離課税)」になると、実際の納税額はどのくらい変わるのでしょうか?
【前提条件】40歳、独身(会社員)、給与収入:500万円(給与所得:356万円)、 所得控除:社会保険料・基礎控除等で計150万円と仮定。暗号資産の利益:500万円
まず、暗号資産が現行の「総合課税」の場合、納税額は169万3000円です。
・課税所得:給与所得356万円+暗号資産の利益500万円ー社会保険・基礎控除等150万円=706万円
└所得税額:706万円✕23%ー63万6000円=98万7000円(1000円未満切り捨て)
└住民税額:706万✕10%=70万6000円
税額合計:98万7000円+70万6000円=169万3000円
一方、暗号資産が「申告分離課税」になると、納税額は132万9700円になります。
・暗号資産以外の課税所得:給与所得356万円ー社会保険基礎控除等150万円=206万円
└所得税額:206万円✕10%ー9万7500円=10万8000円(1000円未満切り捨て)
└住民税額:206万円✕10%=20万6000円
・暗号資産の所得税+住民税額:500万円✕20.315%=101万5700円(100円未満切り捨て)
税額合計:10万8000円+20万6000円+101万5700円=132万9700円
よって、このケースの場合では、分離課税への変更によって、36万3300円の減税となります。
●暗号資産の分離課税化により「累進課税」から解放される
ーー「申告分離課税」に変わることで、税金面で最も大きなメリットは何でしょうか?
暗号資産取引にて高利益を稼得する方ほど、税負担が軽減される可能性があります。
現在の雑所得(総合課税)では、利益が大きくなるほど所得税率も増加する累進課税が適用されます。分離課税になることで、暗号資産の利益額に関わらず税率が一定(20.315%)となるため、所得税の限界税率が23%を超える層は、税負担が軽減されることが見込まれます。
また、給与所得などすでに総合課税の所得がある方には、暗号資産の利益によって総合課税部分の所得ランク(税率)が押し上げられない点も大きなメリットです。
●「損失の3年間繰越控除」で投資のリスクヘッジがしやすくなる
ーー「損失の3年間繰越控除」が導入されることのメリットをお教えください。
「損失の3年間繰越控除」とは、暗号資産取引である年に生じた損失を、翌年以後3年間に限り、その後に生じた暗号資産取引の利益から差し引ける制度です。
たとえば2027年に100万円の損失があり、2028年に200万円の利益が発生した場合、2028年は「200万円ー100万円の100万円」に対してのみ課税されます。
現行制度では、その年の損失は切り捨てられ、翌年の利益と相殺することはできませんでした。
今回の改正案では、複数年で見た実質的な損益に近い形で課税されやすくなること、損失が出ても一定期間は無駄にならないことがメリットだと考えます。
●現状で税率が低く抑えられている層は税負担が上がる可能性が
ーー今回の改正案について、現時点で考えられる注意点はありますか?
分離課税は一律の税率となるため、高利益を得ている層や高所得層では税負担が下がる可能性がある反面、もともと税率が低い層にとっては、逆に現行より税負担が上がってしまう可能性があります。
また、今回の改正は、分離課税や損失の繰越控除が「特定暗号資産」や「暗号資産取引業者を介した譲渡等」など一定の要件を満たす取引に限定される案が示されています。取引形態によっては 分離課税と総合課税が併存し、計算や取引記録管理が煩雑になるおそれがあります。
【取材協力税理士】
速水 芹苗(はやみ・せりな)税理士
京都大学医学部人間健康科学科、立命館大学大学院経済学研究科修了。2022年7月、当時業界で0.6%といわれる20代女性税理士として独立開業。創業初年度に顧問先約100件、確定申告約300件を担当。「お客様の一所懸命に一緒懸命」を信条に、地に足のついた伴走型の税務支援を得意とする。累計2億円超の融資支援実績を持ち、暗号資産の税務にも対応するなど、幅広い分野でお客様をサポートしている。
事務所名 :速水芹苗税理士事務所
事務所URL:https://serina-tax.com/













