給与計算、税理士と社労士どちらに依頼すべき?
(監修:小田会計事務所 小田 正幸 税理士)
「給与」は、事業者が従業員に対して支払う労働の対価です。支給する金額が間違っているとなると、従業員からの信頼を損なうだけでなく、社会的な信用にも関わります。
このように、給与計算には正確な作業が求められるため、専門家に依頼したいという方も多いです。
では、給与計算は税理士と社会保険労務士(社労士)、どちらにお願いしたらよいのでしょうか。
目次
給与計算の業務内容とは?
従業員を雇用している給与計算に関する業務内容は、大きく以下の項目に分けることができます。
- 基本情報の整理
通勤手当など各手当の変更、扶養家族の変更、人事異動、昇給・降給、氏名や振込先の変更 - 勤怠情報の集計
出退勤、欠勤・遅刻・早退、残業、休日出勤、歩合給の算出など - 総支給額の計算
総支給額、控除項目(社会保険料、所得税、住民税など)の計算 - 控除項目の計算
- 社会保険料、源泉徴収税などの納付
社会保険料は翌月納付、源泉徴収税と住民税の納付期限は翌月10日まで - 給与明細書の作成
- 賃金台帳の作成
- 賞与・退職金の計算
給与計算に関連する業務でいうと、社会保険の手続きや年末調整もあります。そのため、給与計算の担当者は、労働法や税法の最新情報をキャッチアップして作業を行う必要があります。
給与計算はアウトソーシングできる
給与計算業務は、専門性に加え手間と時間が必要です。
そこで「給与計算業務をアウトソーシング(外注)する」という方法も検討してみましょう。
外注することで、給与計算にかかる時間を本業に充てることができるようになります。
また、場合によっては、給与計算関連の業務のために従業員を新規雇用するよりもコストカットできるというメリットもあります。
外注先の選択肢は、「税理士」「社会保険労務士(社労士)」「アウトソーシング専門業者」のいずれかです。
税理士と社労士の違いは?
税理士と社労士の違いがよくわからない、という方もいるでしょう。それぞれ独占業務があり、税理士と社労士の役割は明確に異なります。
税理士の役割
税理士は「税務に関する専門家」です。
「税務代理」「税務書類の作成代理」「税務相談」が独占業務で、提供するサービスを通じ納税者をサポートする役割を担っています。
社労士の役割
社労士は「労働・社会保険に関する専門家」です。
「提出代行」「社会保険関係書類の作成代理」「事務代理」が独占業務で、社会保険関連の手続きのサポートが主な役割です。
給与計算は税理士・社労士どちらに依頼すべき?
給与計算業務は独占業務ではないため、特定の資格がなくても行うことができます。
税理士と社労士のどちらに依頼するかは、会社の規模と給与計算以外にどの業務を依頼したいかで判断するといいでしょう。
たとえば、記帳代行や節税対策などの税務関連業務も外注したい場合は税理士がおすすめです。
一方で、従業員が数十人以上いて、入退社時の社会保険・労働保険の手続きが多く発生する場合は、給与計算も一緒に社労士にお願いしたほうが効率的です。
税理士に依頼するメリット
税理士は税務の専門家のため、給与計算のほかにも、税務相談や節税対策、記帳代行、確定申告や消費税の申告など、幅広い業務を依頼することができます。
特に、年末調整は税理士の独占業務であり、給与計算とあわせて依頼することで、スムーズに手続きを行えるというメリットがあります。
すでに顧問税理士がいるなら、給与計算も含め一括で依頼したほうが、別の専門家にお願いするよりもトータルで費用を抑えることが可能です。役員のみや従業員数が少ない場合は、給与計算のほかに社労士に依頼する業務は少なくなります。
一方、社労士の独占業務である社会保険の手続きは行えません。ただし、社労士と提携関係を結んでいたり、社労士の資格を有する税理士もいるので、そうした税理士に依頼すれば、ワンストップで対応することができます。
社労士に依頼するメリット
社労士は、社会保険関係の手続きを独占業務としています。
そのため給与計算を社労士に依頼することで、従業員の社会保険の加入手続きや、毎年6月の労働保険の年度更新、社会保険の算定基礎の手続きなどを任せられるメリットがあります。
社労士に依頼することで、労務相談や就業規則の見直しにも対応してもらえます。
従業員が多くなるほど、残業代や社会保険料の計算が複雑になるので、その際は社労士にお願いする方が安心でしょう。
一方、税理士の独占業務である税務書類の作成や年末調整の手続きは行えません。ただし、税理士と提携関係を結んでいる税理士に依頼すれば、ワンストップで対応することができます。
アウトソーシング専門業者に依頼した場合は?
給与計算のみを外注したい場合は、給与計算のアウトソーシング専門業者に依頼するといいでしょう。従業員が数百人以上の規模になると、税理士や社労士でも対応できなくなるため、こうした専門業者に依頼するケースが多くなります。
ただし、情報の漏洩がないようにセキュリティ管理がしっかりしている業者を選ぶことが大切です。なお、年末調整や社会保険の手続きは対応できないことが多いので、その際はそれぞれの専門家に依頼しましょう。
給与計算にかかる税理士・社労士の費用はいくら?
給与計算を税理士、社労士に依頼する場合の費用は、従業員数に応じた基本料金と、超えた分の従業員の人数に応じて追加されるところが多くなっています。
それぞれの相場は以下のとおりです。
社労士の報酬相場
報酬相場は、基本料金が1万円〜2万円、従業員1名につき500〜1,000円程度が相場となっています。
勤怠データの集計、給与明細書の作成はオプションというケースもあるので、事前にどこまでの範囲が料金に含まれているかを確認しましょう。
税理士の報酬相場
報酬相場は、基本料金5,000円〜1万円程度、従業員1名につき1,000円前後が相場となっています。
給与計算の初期設定料が導入時に1万円程度かかるところや、勤怠データの集計、給与明細書の作成はオプションとなっているケースもあります。
基本的に給与計算のみを税理士に依頼するケースは少ないと思いますが、年末調整も依頼する場合は、合わせて見積もりを取るとよいでしょう。
費用を安く済ませたい場合は、給与計算ソフトで管理しそのデータを元に年末調整だけ依頼する方法もあります。
給与計算を依頼できる税理士を探すには
給与計算の関連業務を専門家に依頼することで、正確に計算することができるほか、業務効率化を図ることができます。
「どんな税理士がいいの?」「もっと親身な税理士に変更したい」など税理士選びでお困りの方は、税理士ドットコムの<税理士紹介サービス>までお問い合わせください。経験・実績豊富なコーディネーターがご要望に合う税理士をご提案します。
また、予算が気になる場合は<税理士の費用・料金相場>を参考に、おおよその料金を把握しておくとよいでしょう。
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※ショッパーズアイ調べ 2020年6月調査