「小2の九九がピーク」数字嫌いの漫画家、「税の世界」をおもしろギャグで表現
税金・お金
多額の税金で苦しむ状態を「税死」と表すなど、ギャグを交えてわかりやすく税金の問題をまとめた漫画が、一部で話題になっている。手がけた漫画家は「なるべく税金とか避けて生きていきたかった」と語る、若林杏樹さん(「あんじゅ先生」、30)。
働き方の多様化が進み、今後フリーランスの増加が見込まれるなか、税金に苦手意識をもつ人を漫画の力で少しでも減らしたいーー。そんなねらいで、大河内薫税理士とともに作成にあたった。
作品の名称は『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください!』(サンクチュアリ出版)。制作の声がかかるまで税が大嫌いだった若林さんに、制作を通してどう変わったのか、12月上旬に直撃して聞いた。

●仕組み知れば役に立つ
ーー「税嫌い」は変わりましたか
「はい、変わりました。税は絶対に触れたくないものでした。私はフリーランスで漫画を描いて3年目ですが、個人事業主だと税のことってすごく話題になるんです。周りから『ちゃんと確定申告しなきゃね』とか『領収書も集めなきゃね』とか言われて、嫌でしたね。
でも、漫画を描かせてもらったことで、向かい合わなきゃいけないものということがわかりました。意外と仕組みを知ってしまえば、役に立つし、自分のためにもなるし、お金関係で騙されなくもなるのかなと思いました。振り返れば漫画を担当できてラッキーでした」
ーーなんでそんなに嫌いだったんでしょう
「まず数字が嫌いなんです。私のピークは小学2年生のときの『九九』ですから。手続きも難しい言葉ばかりで嫌で、自分のイラストの値付けも苦手なくらいお金関係も疎いんです。
あと、領収書を集めるのって1年の積み重ねじゃないですか。最後の1日頑張れば間に合うというものでもないし、正直言って面倒くさい。ただ、税務署への申告で100点満点の人は少なくて、完璧を目指さなくてもいいということを知って心のハードルが下がりました」
ーー税務署に対して怖い印象をもっていたのですか
「そうなんです。書類をもった納税者が係官の前に並ばされて、一人ずつ書類をチェックしてその場で厳しくダメ出しされるのかと。でもそうではなくて、もし誤りがあった場合にはあとで問い合わせがくるということを知りました。もちろん、やるからには真面目に申告しますけどね」
ーー今後、税務署への申告で変えることはありますか
「これまでは全然考えずに白色申告をしていました。でも、さほど手間は変わらずにより控除が受けられる青色申告に変えようと思っています。もっと早く知っておけばよかったのに、と反省しています」
●フリーランスになって初めて税を意識
ーー「脱サラ」してフリーランスの漫画家になったということですが、前職の時には税金と関わりはなかったのですか
「前職は大学職員をしていて、入試関係を担当していました。受験生に対して、大学のことをオープンキャンパスで説明したりしていました。税金といっても、年末調整のときに言われたようにハンコを押すくらいでしたね。
職場が必要なことをやってくれていたので、考えなくてよかったということをフリーランスになって初めて知りました」
ーー知識がほとんどゼロのなか、税金の漫画を作るのは大変ではなかったですか
「最後の10日間は特に大変でしたね。朝早くから夜遅くまで机に向かって、途中は眠くならないようにコンビニで買ってきた軽食をとるのみ。終わらなかったら持ち帰って自宅で作業するという感じでした。でも予定に遅れることなくできたので達成感は大きかったです。
わからないことは近くにいる大河内税理士にその都度聞いて、解決するようにしました。税の分野で当たり前の言葉だからといって使われても全然わからないし、とイライラしたこともありましたけど(笑)」
ーー漫画を出してからどんな反響がありましたか
「周りにはフリーランスの友だちが多いんですが、こういうわかりやすい本があってよかったと言ってもらえています。なかには、フリーランスの税関係で相談を受けたら『この本を読んでみて』と手裏剣のように配っているという人もいました」
ーー今後はどんなテーマに挑戦したいですか
「法律や政治、日本史とか、難しいテーマをわかりやすく漫画で伝えることに挑戦してみたいですね。私は空想をストーリーにするより、実際にあることを描くほうが好きなんです」
<プロフィール>若林杏樹(わかばやし・あんじゅ)、神奈川県川崎市出身、1988年生まれ30歳。フリーランスになって3年目。趣味は麻雀。原稿がたまっているときのストレス発散法は皿洗い。(ブログ :http://anju-manju.com/ Twitter :@wakanjyu321)















