配偶者控除は改正でどう変わった?税金額を比較シミュレーション

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配偶者控除は改正でどう変わった?年収の壁や税金額を比較シミュレーション【最新版】

監修: 小野 郁子 税理士

改正により令和2年(2020年)から「配偶者控除」および「配偶者特別控除」の所得要件などが変更されました。それ以前、2018年の改正時には、配偶者の年収要件の引き上げや控除額など、制度が大幅に変わったのも記憶に新しいでしょう。

度重なる改正により、結局いくらまで稼いでよいのかわからないという方は多いかもしれません。

そこで、主に影響のあるパート主婦の方に向けて、改正後の配偶者控除と配偶者特別控除についてシミュレーション付きでわかりやすく解説します。

目次

「配偶者控除(配偶者特別控除)」とは

「配偶者控除」及び「配偶者特別控除」とは、世帯主等の納税者に所得税法における源泉控除対象配偶者または控除対象配偶者がいる場合に、納税者の所得から一定額を控除(所得控除)できる税制優遇制度のことをいいます。

簡単にいうと、「夫または妻の税負担を軽くできる制度」です。

養う家族(配偶者)がいる世帯の、生活にかかる費用負担を考慮し、税金負担の調整を行う目的で、「配偶者控除は1961年」に、「配偶者特別控除は1987年」に制定されました。

似た制度として扶養控除がありますが、これは対象者が配偶者以外の親族の場合に適用される制度なので、間違えないようにしましょう。

改正後の配偶者控除はどうなる?

配偶者控除及び配偶者特別控除は、「共働きと片働き世帯での不公平感」や「基礎控除と配偶者控除の二重の控除の問題」、「就労を抑制する原因となっている年収の壁」など、以前から様々な問題点が指摘されていました。

特に年収の壁については、女性の社会進出の妨げになっているとも考えられており、これらのことを解消するために、2017年の税制改正で、配偶者控除及び配偶者特別控除(以下、配偶者控除制度)が見直されました。

これまでの「配偶者控除」の控除対象配偶者となる要件に、「納税者の年間の合計所得金額が1,000万円(給与のみなら年収1,220万円)以下」という項目が追加されました。

また、2020年からは基礎控除額が10万円引き上げられたため、配偶者の合計所得金額の要件も変更されています。

改正後の控除対象配偶者の要件をまとめると以下のとおりです。

  1. 納税者と生計と一にしている(生計を一緒にしている)
    ※別居していても生活費が仕送りされている等も該当します
  2. 民法の規定による配偶者である(事実婚・内縁関係は該当しない)
    ※婚姻届が提出されている法律婚の配偶者のことです
  3. 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていない、又は白色申告者の事業専従者ではない
  4. 配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下(給与のみなら年収103万円以下)
  5. 納税者の年間の合計所得金額が1,000万円以下(給与のみなら年収1,220万円以下)

控除額は、納税者の合計所得金額及び控除対象配偶者の年齢により、次のように決まります。

103万円以上なら配偶者特別控除

配偶者特別控除は、2018年から配偶者の年収要件の上限が引き上げられました。また、配偶者控除と同様に2020年からさらに要件が変更になっています。

改正後の「配偶者特別控除」の対象となる控除対象配偶者は、配偶者控除の要件のうち(4)が以下に当てはまる人のことをいいます。

  • 配偶者の年間の合計所得金額が48万円超133万円未満(給与のみなら年収103万円超201万6千円未満)

そして控除額は、納税者と配偶者の合計所得金額により、次のように決まります。

たとえば、納税者である旦那さんの給与年収が1000万円で、控除対象配偶者となる奥さんの給与年収が160万円だった場合は、控除額が31万円になるということです。

「パート主婦には得」で「高所得者には損」

配偶者控除制度の主な変更点をまとめると、次のような内容になります。

  • 配偶者控除の納税者の年収要件が追加されたので、高所得者は控除が受けられなくなる(又は控除額が減少)。
  • 配偶者の年収要件の上限が引き上げられたので、適用範囲が拡大した。

日本の夫婦は一般的に、納税者が会社員(夫)で配偶者がパート主婦(妻)という世帯が多いかと思います。

日本の夫婦の実態と、変更点を合わせて考えると、今回の改正でより大きな影響を受けるのは「パート主婦」と「高所得者」であるということがわかります。

パート主婦が受ける影響

配偶者の年収要件の上限が引き上げられたことで、これまでより収入を増やすことができるようになります。つまり、働く時間や日数を増やしたり、パート収入はそのままに、副業を始めたりするなど、パート主婦の方の活躍の場が広げられる可能性があります。

また、これまで配偶者特別控除の対象外だった年収141万円~201万円のパート主婦は、2018年以降対象となったので、夫の負担する税金が少なくなりました。

このように、収入を増やしつつ、税金を減らすことができるので、パート主婦にとっては嬉しい改正となりました。

高所得者が受ける影響

一方で、納税者が年収1,220万円以上の高所得者にとっては、良い改正とは言い難い状況です。

これまでの制度では、配偶者の年収が103万円以下ならどれだけ稼いでいる高所得者でも38万円を控除することができましたが、改正後は控除額が減少または0円になるので、税金が増えることになります。

たとえば、配偶者控除を受けていた年収1,220万円超の人が控除を受けられなくなると、所得税だけでも単純計算で10万円以上の増税となります。

年収1,220万円超えともなると税率も高くなるので、高所得者であればあるほど影響が大きくなるということです。

新たな「150万円と201万円」の年収の壁

最新の配偶者控除制度を図に表すと、次のようになります。

「103万円と141万円の壁」はなくなり、2018年以降は「150万円と201万円の壁」となっています。

年収の壁は他にもある!

年収の壁は配偶者控除制度以外にもあるので、パート主婦が就業調整する際には、これらも意識しておくと良いでしょう。

住民税の「100万円の壁」

103万円の壁という言葉が有名なので忘れがちですが、年収の壁で最初に出てくるのが、住民税の「100万円の壁」です。

給与年収が100万円を超えると、住民税が発生するので「100万円の壁」といいます。

住民税とは地方税であり、「所得割」と「均等割」の合計した額を自治体に納付します。

均等割は、所得金額にかかわらず定額で課税されます。所得割は所得によって次のように税額を計算します。

前年の総所得金額 - 所得控除額 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 - 税額控除額 = 納税額

東京都や多くの自治体では、前年の合計所得金額が45万円以下の場合は、均等割も所得割も非課税とされています※

給与所得者の場合は、給与所得控除額55万円を引くと、「100万円 - 55万円 = 45万円(合計所得金額)」で非課税なので、「年収100万円が住民税の壁」となっています。

ただし、自治体によって課税基準が異なり、住民税の壁が「98万円」になる自治体もありますのでご注意ください。

※住民税は前年所得をもとに課税されるので、変更は2021年住民税分から

所得税の「103万円の壁」

年収の壁の中で最もメジャーなのが、103万円の壁です。

給与年収が103万円を超えると、所得税が発生するので「103万円の壁」といいます。

103万円の壁というのは、2017年までの配偶者控除にも当てはまりますが、多くの場合は所得税のことを指しています。

所得税は、所得によって次のように税額を計算します。

総所得金額 - 所得控除額 = 課税所得金額
課税所得金額 × 税率 - 税額控除額 = 納税額

給与所得者の場合は、給与所得控除額65万円と基礎控除額38万円を引くと、課税所得金額が0円になるので、「年収103万円が所得税の壁」となっています。

社会保険の「106万円と130万円の壁」

納税者が会社員などであれば、配偶者は納税者の会社で健康保険や厚生年金保険(社会保険)に加入している方が多いかと思います。

これらの社会保険の被扶養者となるための要件のひとつとして、年収130万円未満という項目があります。

配偶者の方の給与年収が130万円を超えてしまうと、被扶養者でなくなってしまうことから、社会保険では「130万円の壁」といいます。

また、次の要件に当てはまる人は、自分の勤務先で社会保険に加入することになるので、「106万円の壁」といわれることもあります。

  • 週20時間以上の労働(残業を除き、予め決まっている労働時間)
  • 給与年収106万円以上(月収8万8000円以上)
  • 雇用期間1年以上
  • 501人以上の従業員のいる企業
  • 学生でない
    (定時制や休学中などの場合は加入対象)

2020年税制改正以降も年収の壁に変更はない

2020年からは基礎控除額が10万円増額の48万円になる一方で、給与所得控除額が10万円引き下げられます。また、住民税の非課税金額も10万円引き上げられます。

つまり、パート主婦が稼げる金額は結果的には変わりませんので、年収の壁には影響ありません。

ただし、配偶者が個人事業主の場合は、基礎控除額が増額することで減税となるので嬉しい改正となります。

パートを増やしても働き損になるかも?!

上記の通り、配偶者特別控除の150万円の壁の前には、「所得税の103万円の壁」と「社会保険の106万円(130万円)の壁」があります。

配偶者特別控除の壁だけを意識してパート収入を増やすと、結果的に手取りを減らすことになってしまうかもしれません。

具体例でシミュレート

具体的な例を挙げて考えてみましょう。

東京在住の会社員の夫(30歳)とパート主婦(30歳)という前提とします。

※税額や保険料は、お住まいの地域や年齢などでも異なってきます。正確な数字を計算するには、細かな情報が必要となるため、ここでは概算で金額を出しています。

夫(年収500万円)妻(年収103万円)

住民税211,700円10,000円
所得税103,900円0円
社会保険計706,068円0円
手取り額3,978,332円1,020,000円

世帯手取計:4,998,332円

夫(年収500万円)妻(年収106万円)【社保あり】

住民税211,700円5,000円
所得税103,900円0円
社会保険計706,068円151,500円
手取り額3,978,332円903,500円

世帯手取計:4,881,832円

年収103万円より手取りが減りました。

夫(年収500万円)妻(年収106万円)【社保なし】

住民税211,700円10,500円
所得税103,900円1,500円
社会保険計706,068円0円
手取り額3,978,332円1,048,000円

世帯手取計:5,026,332円

同じ年収でも、社保ありとなしだと10万円以上の差があります。

夫(年収500万円)妻(年収130万円)【社保あり】

住民税211,700円15,500円
所得税103,900円4,000円
社会保険計706,068円189,324円
手取り額3,978,332円1,091,176円

世帯手取計:5,069,508円

社保なしの年収106万円のときと、手取りの差がほぼありません。

夫(年収500万円)妻(年収129万円)【社保なし】

住民税211,700円33,500円
所得税103,900円13,200円
社会保険計706,068円0円
手取り額3,978,332円1,243,300円

世帯手取計:5,221,632円

社保ありの年収130万円と1万円しか差がありませんが、手取り額には大きな差があります。

夫(年収500万円)妻(年収150万円)【社保あり】

住民税211,700円32,700円
所得税103,900円12,900円
社会保険計706,068円216,876円
手取り額3,978,332円1,237,524円

世帯手取計:5,215,856円

社保なしの年収129万円と手取り額にほとんど差がありません。

夫(年収500万円)妻(年収200万円)【社保あり】

住民税241,700円62,100円
所得税139,600円27,900円
社会保険計706,068円292,548円
手取り額3,912,632円1,617,452円

世帯手取計:5,530,084円

年収200万円になると控除額が減るため、夫の手取りも少し減りますが、世帯で見ると手取り額は大幅に増えています。

年収が増えても手取りが減る...?

このように、納める住民税や所得税にはそれほど差が出ませんが、社会保険への加入の有無で手取り額は大きく変わります。年収が増えるということは、その分税金や保険料の負担が増えるということです。

「働き損」にならないよう、このようなこともふまえて収入の調整をすると良いでしょう。

しかし、厚生年金へ加入できるということは、将来受け取れる年金が国民年金よりも高くなりますし、支払った社会保険料は、年末調整(確定申告)の際に社会保険料控除として、所得控除できるので、デメリットばかりということでもありません。

なお結果は、お住まいの地域や年齢、医療費や生命保険など各種控除の有無、配偶者手当がある場合、などでも異なりますので、あくまでひとつの例として参考にしてみてください。

個人事業主(自営業)の妻が一番得する!

個人事業主など自営業の方の妻であれば、そもそも自分で国民年金や保険料を負担していることが多いかと思います。

つまりこのような方にとっては、106万円(130万円)の社会保険の壁が実質ないということになります。

よって、配偶者控除の103万円の壁がなくなった今回の改正で一番得をするのは、個人事業主(自営業)の妻であるといえるでしょう。

また、先述のとおり2020年からは基礎控除が引き上げられたのでさらに減税となっています。

一般家庭でもできる!家計にうれしい3つのオススメ節税方法

この配偶者控除と配偶者特別控除の改正によって、税金面で影響を受ける共働き世帯も多いのではないでしょうか。その影響で収入を増やすことや節約することを考えるときには、以下の節税手法も合わせて検討するとよいでしょう。

1.返礼品をもらって節税できる「ふるさと納税」

まず挙げられるのは手軽に利用できるふるさと納税です。耳にしたことがある人やすでに利用している人も多いのではないでしょうか。

ふるさと納税とは、自身のふるさとや、応援したい自治体に寄付することで、その自治体から地域特産のお肉やお酒などの返礼品をもらうことができます。また、寄付した金額の2000円を超える部分が、課税所得から原則として全額控除されます。控除を受けるには、確定申告を行うか、または要件を満たしていれば、寄付先に申請書を提出するだけです。

ただし、高額すぎる返礼品などが問題となっていて、 ふるさと納税制度の見直しが現在進められています。利用を考えている場合は、早めに行うとよいでしょう。

2. 掛け金が節税につながる「学資保険」

学資保険は将来の子どもの教育資金を確保するための保険商品です。毎月の保険料を払い続けると、契約時に定めたときに給付金が受け取れます。また、親が死亡したときなどには保険料の支払いは免除されますが、保障は継続され給付金も受け取れます。

保険料は一般生命保険控除として所得控除の対象になるため節税に繋がります。なお、給付金は多くの場合では一時所得となり50万円の特別控除の対象になります。このため、給付金は「受け取った給付金が、支払った保険料よりも50万円超の場合」に課税されるので、給付金には課税されないケースが一般的です。

このように、保障や節税面を考慮すれば、教育資金を定期預金などで積み立てるよりも学資保険の方がお得といえるでしょう。

3. 大きなリターンも期待できる「ジュニアNISA」

ジュニアNISAとは、日本に住む0歳から19歳の未成年者を対象として、株や投資信託の運用益や配当金が年間80万円まで非課税になる制度です。ジュニアNISAは、子どもたちのための教育資金を作ることを目的としています。父母または祖父母が資金を出すことが多いと思われますが、口座の名義人も所有者も子どもです。

非課税枠があること、投資商品であることから、その運用次第では大きなリターンが期待できます。ただし、元本保証ではないため、大きな損失が出る可能性もあります。利用する場合には、分散投資などのリスクヘッジを心がけるとよいでしょう。

おわりに

2017年税制改正により、2018年からの配偶者控除制度は大幅に変わりました。さらに、2020年から基礎控除が10万円引き上げられたことも適用要件に影響があります。

自分の場合は適用できるのか、扶養控除などほかの控除についてなど税金のお困りごとがある場合は、「みんなの税務相談」を活用してみてください。

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