特定増改築等住宅借入金等特別控除とは?要件や手続きをわかりやすく解説

個人が住宅ローンを利用して住宅の増改築をすると、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)が受けられます。
このとき、バリアフリー改修工事など一定条件を満たす特定増改築に該当する場合は、「特定増改築等住宅借入金等特別控除」が適用され、控除額の計算方法が一般の増改築の場合とは異なります。
このページでは、特定増改築等住宅借入金等特別控除の要件や控除額の計算方法、申請方法まで解説します。
目次
特定増改築等住宅借入金等特別控除とは
特定増改築等住宅借入金等特別控除とは、簡単に言うと、自宅の省エネリフォームやバリアフリー化、二世帯住宅として改築するときに住宅ローンを組んだ場合に、税負担が軽くなるしくみです。
いわゆる通常の「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」とは異なり、省エネ改修工事やバリアフリー改修工事、他世帯同居改修工事などの「特定増改築」をするにあたって借り入れをした場合に利用できます。
控除額の計算方法や要件も通常の住宅ローン控除とは異なり、また、控除期間は最大5年間となります。
なお特定増改築については、増改築等をした場合の「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」または「住宅特定改修特別税額控除」のいずれの適用要件も満たしているとき、これらの控除のどちらか一方の選択適用となります。
控除額の計算方法
特定増改築における住宅ローン控除額は以下のように計算します。
「控除額 = A × 2% + (B − A) × 1%」
A:増改築の住宅ローンの年末残高の合計額のうち特定増改築のために要した費用に相当する金額(特定増改築のための費用の限度額は250万円)
B:増改築の住宅ローンの年末残高の合計額(最大1000万円)
たとえば、増改築の住宅ローンの年末残高のうち特定増改築のために要した費用が200万円、増改築の住宅ローンの年末残高の合計額が800万円の場合、以下のように計算します。
200万円(費用) × 2% + {800万円(年末残高) − 200万円(費用)} × 1% = 10万円(控除額)
所得税から控除しきれなかった金額がある場合は、翌年度の個人住民税から控除することができます。この際、所得税の確定申告をしていれば個別に市区町村へ申告する必要はありません。
特定増改築等住宅借入金等特別控除の要件
特定増改築等住宅借入金等特別控除を受けるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 特定増改築のための費用の額が50万円を超えるものである
- 増改築の日から6か月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいる
- 特別控除を受ける年分の合計所得金額が3000万円以下である
- 増改築等をした後の住宅の床面積が50平方メートル以上で、床面積の2分の1以上の部分を居住のために使用している
- 工事費用の2分の1以上の額が自分の居住用部分の工事費用である
- 住宅ローンの借入期間が5年以上である、または取得のための債務(金融機関からの借入金や住宅金融支援機構に対するもの)がある
- 居住した年とその前後の2年ずつの5年間に居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていない
居住用の住宅を2つ以上所有する場合、控除の対象となるのは<主として居住の用に供する1つの住宅>に限られます。また、非居住者の場合は、平成28年3月31日以前の工事については対象外です。
上記と別に、「省エネ改修工事」「バリアフリー改修工事」「多世帯同居改修工事」のいずれの工事をするかによって、条件が異なります。
省エネ改修工事
省エネ改修工事をした場合に控除を受ける条件は次の2つです。
- 自己が所有する家屋について「一定の省エネ改修工事(断熱改修工事等又は特定断熱改修工事等)」を含む増改築等を行った
- 平成20年4月1日から令和3年12月31日までの間に居住している
一定の省エネ改修工事には、下記の3つが当てはまります。
1.断熱改修工事等
すべての居室のすべての窓の改修工事、またはその工事と併せて行う床の断熱工事、天井の断熱工事、もしくは壁の断熱工事で、次の(A)及び(B)の要件を満たすもの。
(A)改修部位の省エネ性能がいずれも平成28年基準以上となること
(B)改修後の住宅全体の断熱等性能等級が改修前から一段階相当以上上がると認められる工事内容であること
※平成21年4月1日から平成27年12月31日までの間に居住の用に供した場合は、(B)の要件を満たさないものも断熱改修工事等の対象となります
※平成29年3月31日以前に居住の用に供した場合は、(B)について平成25年基準相当以上になることが必要です
2.特定断熱改修工事等
- すべての居室のすべての窓の改修工事、又はその工事と併せて行う床の断熱工事、天井の断熱工事もしくは壁の断熱工事で、次の(A)及び(B)の要件を満たすもの
- 居室の窓の改修工事、またはその工事と併せて行う床の断熱工事、天井の断熱工事もしくは壁の断熱工事で、次の(A)及び(C)の要件を満たすもの
(A)改修部位の省エネ性能がいずれも平成28年基準以上となること
(B)改修後の住宅全体の断熱等性能等級が平成28年基準相当となること
(C)改修後の住宅全体の断熱等性能等級が現状から一段階以上上がり、改修後の住宅全体の省エネ性能について断熱等性能等級が等級4又は一次エネルギー消費量等級が等級4以上かつ断熱等性能等級が等級3となること
※平成21年4月1日から平成27年12月31日までの間に居住の用に供した場合は(2)の要件を満たさないものも特定断熱改修工事等の対象となります
3.1または2の工事と併せて行う一定の修繕・模様替えの工事
バリアフリー改修工事
バリアフリー改修工事をした場合に控除を受ける条件は、自己が所有する家屋について「一定のバリアフリー改修工事」を含む増改築等を行い、平成19年4月1日から令和3年12月31日までの間に居住していることです。
一定のバリアフリー改修工事とは、下記のすべての要件に当てはまる工事を指します。
1.バリアフリー改修工事を行う方が次のいずれかに該当する個人であること
(A)50歳以上の方
(B)介護保険法に規定する要介護又は要支援の認定を受けている方
(C)所得税法上の障害者である方
(D)高齢者等(65歳以上の方または上記(B)もしくは(C)に該当する方)である親族と同居を常況としている方
※50歳、65歳および同居の判定は、居住年の12月31日(年の途中で死亡した場合には死亡のとき)の現況によります。
2.次のようなバリアフリー改修工事を含む増改築等であること
高齢者等が自立した日常生活を営むのに必要な構造、および設備の基準に適合させるための修繕または模様替えで、以下いずれかに該当するバリアフリー改修工事を含む増改築等であること。
(A)介助用の車椅子で容易に移動するために通路または出入口の幅を拡張する工事
(B)階段の設置(既存の階段の撤去を伴うものに限る)、または改良によりその勾配を緩和する工事
(C)浴室を改良する工事であって、次のいずれかに該当するもの
イ 入浴またはその介助を容易に行うために浴室の床面積を増加させる工事
ロ 浴槽をまたぎ高さの低いものに取り替える工事
ハ 固定式の移乗台、踏み台その他の高齢者等の浴槽の出入りを容易にする設備を設置する工事
ニ 高齢者等の身体の洗浄を容易にする水栓器具を設置しまたは同器具に取り替える工事
(D)便所を改良する工事であって、次のいずれかに該当するもの
イ 排泄またはその介助を容易に行うために便所の床面積を増加させる工事
ロ 便器を座便式のものに取り替える工事
ハ 座便式の便器の座高を高くする工事
(E)便所、浴室、脱衣室その他の居室および玄関ならびにこれらを結ぶ経路に手すりを取り付ける工事
(F)便所、浴室、脱衣室その他の居室および玄関ならびにこれらを結ぶ経路の床の段差を解消する工事(勝手口その他屋外に面する開口の出入口および上がりかまち並びに浴室の出入口にあっては、段差を小さくする工事を含みます。)
(G)出入口の戸を改良する工事であって、次のいずれかに該当するもの
イ 開戸を引戸、折戸等に取り替える工事
ロ 開戸のドアノブをレバーハンドル等に取り替える工事
ハ 戸に戸車その他の戸の開閉を容易にする器具を設置する工事
(H)便所、浴室、脱衣室その他の居室および玄関ならびにこれらを結ぶ経路の床の材料を滑りにくいものに取り替える工事
多世帯同居改修工事
多世帯同居改修工事をした場合に控除を受ける条件は、自己が所有する家屋について「一定の多世帯同居改修工事(特定多世帯同居改修工事等)」を含む増改築等を行い、平成28年4月1日から令和3年12月31日までの間に居住していることです。
一定の特定多世帯同居改修工事とは、多世帯で同居をするために必要な設備を整えるための増築、改築、修繕または模様替えのことであり、下記のものが含まれます。
- 調理室を増設する工事
- 浴室を増設する工事
- 便所を増設する工事
- 玄関を増設する工事
このとき、自己の居住の用に供する部分に調理室、浴室、便所または玄関のうち、いずれか2つ以上の室がそれぞれ複数になる場合に限ります。
特定増改築等住宅借入金等特別控除の手続き
控除を受けるための手続きは、控除を受ける最初の年と2年目以降とで異なります。
控除を受ける最初の年は、必要事項が記載されている確定申告書に以下の書類を添付して、納税地を管轄している税務署に提出します。
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
- 家屋の登記事項証明書、請負契約書の写し等で次のことを明らかにする書類
・増改築等をした年月日
・増改築等に要した費用の額
・家屋の床面積が50平方メートル以上であること
・増改築等が特定取得に該当する場合はその該当する事実 - 増改築等工事証明書
- 敷地を先行取得している場合は、敷地の登記事項証明書や売買契約書の写し等が必要です
2年目以降は、上記の1と2を添付した確定申告書を提出することで控除を受けることができます。
会社員など給与所得者であれば税務署から送付される書類を勤務先に提出すると、年末調整で控除を適用することが可能です。
おわりに
住宅特定改修特別税額控除と一般の住宅ローン控除との選択制のため、どれが有利になるか、そもそも条件に当てはまるかなど確認したい場合は、お近くの税務署か税理士に確認するとよいでしょう。
税理士であれば、税務相談だけでなく確定申告を代理で行うことも可能です。