はじめしゃちょー豪邸購入、YouTuberの買い物は経費として認められるの?
節税

YouTuberのはじめしゃちょーが8月28日に「3億円の豪邸を買いました!」という動画を公開し、話題となりました。
動画内ではじめしゃちょーは「まさか、家に3億出すかなと、思っていなかった」「簡単に言えば値切った」としつつも、2億数千万円で購入したと告白しています。
購入した物件には、プールや大きなガレージなどがあるようで、はじめしゃちょーは住居としてだけではなくオフィスとしての使用も検討しているようです。
YouTuberの派手なお買い物は度々話題になりますが、今回の豪邸購入は経費として認められるのでしょうか。その場合、節税につながるのでしょうか。冨田建税理士に聞きました。
●基本的には「自宅は経費として認められない」
ーー自宅購入が経費として認められる可能性はあるのでしょうか
法人名義の場合だと話が変わるので、個人名義で購入したケースだったとして、説明したいと思います。
不動産購入時の取得価格が「所得税等の負担を下げる効果をもたらす」経費として認められるには「事業の稼ぎを獲得するためにわざわざその不動産を調達し利用した」との前提が必要です。
そのため基本的には、事業とは無関係な自宅は税務上の経費として認められません。
しかも、経費化できる不動産の場合でも、購入した年に全額は経費化できません。建物の購入時の取得価格は、所定の方法で十数年に分けて経費化されます(この手続を「減価償却」と言います)。また、土地は老朽化しないため減価償却の対象外となり、取得価格を経費化できません。
ただし、土地も建物も「売却した場合」は、売却に課される所得税等につき、土地の取得費や建物の過年度の減価償却費合計を控除後の取得費が所得税等を減らす効果をもたらします。
つまり、今回のケースに照らすと、(1)自宅部分の減価償却費は基本的には経費として認められず、(2)オフィス部分の減価償却費は事業の稼ぎを獲得する犠牲と言えれば経費化できますが、自宅併用のため、自宅部分との按分計算の内容や事業規模との対比で計上額が過剰すぎると税務署から指摘が入る場合があり得る、と、なるでしょう。
●「事業の稼ぎを獲得するための対価である旨を税務署に説明できるか」
ーー自宅兼オフィスとして利用のため、またYouTubeの撮影ネタのための豪邸購入という2つの意味があったかと思われますが、税務署はどのように判断するのでしょうか。
自宅部分についても事業の稼ぎの獲得に大きく貢献した場合は経費化する考え方も皆無ではないですが、稼ぎの按分計算が難しい上に生活の基盤としての実態がある以上、あまり現実的ではないでしょう。
減価償却費に限らず個人事業の経費計上が税務上で認められるには「事業の稼ぎを獲得するための対価である旨を税務署に説明できるか」が鍵と覚えておくとよいでしょう。
一方、税務署も経費の一般的水準を知っています。理論的には経費でも、一般的水準と比べ極端な経費計上をするのは慎重な方が無難でしょう。
税金に限らず、不動産に関する意思決定は「一般的水準や相場を意識する事」が重要と思います。
【取材協力税理士】
冨田 建 (とみた・けん)税理士・不動産鑑定士・公認会計士
43都道府県で不動産鑑定業務経験があり各媒体に寄稿も行う。令和3年8月に不動産の評価手法・相続・税務、戸建住宅の価格目線の把握法等を実例を交え一般向けに述べた著書「不動産評価のしくみがわかる本」を上梓。
事務所名 :冨田会計・不動産鑑定㈱/冨田 建 不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://www.tomitacparea.co.jp