「このパソコン、経費で落ちる?」副業ワーカーが確定申告の際に押さえるべきポイント
確定申告

“働き方改革”が広まり、企業勤めの会社員でありながら「副業ワーカー」として働く人が増えている。その一方で、複数から収入を得ることにより、これまで直面しなかった税金問題に悩むこともあるだろう。そんな副業ワーカーに向けて、「今だから聞いておきたい副業と税金のはなし」と称したセミナーが7月下旬、東京・渋谷にて開催された。
セミナーを共催したのは、副業したい人と企業をつなげるサービス『シューマツワーカー』と税務相談ポータルサイト『税理士ドットコム』。スピーカーにはSwitch税理士法人代表・水村耕史税理士を迎え、約80名の副業ワーカーたちが参加した。
●なぜ副業で「確定申告」が必要になるのか
水村税理士はまず、参加者に「確定申告をしたことがある人はいますか?」と問いかけたものの、「ある」と答えたのはほんの数人程度であった。そこで「確定申告1年生のために」と前置き、副業をする上で最低限知っておくべき税務について解説を始めた。
実際、セミナーの参加者でなくとも確定申告をしたことがあるという会社員は少ないはずだ。というのも「なぜ確定申告を経験したことがない人が多いかというと、一般的な会社員の場合、勤め先が“年末調整”という手続きを行い、それが確定申告の代わりとなっているから」であると、水村税理士が説明。「ところが副業をし、2か所以上から給与をもらうことになると(主な勤め先の)“年末調整”だけでは完結しなくなるため、自分で確定申告をする必要が出てくる」のだという。
しかし慣れない確定申告を行うには不安もあるはず。そこで水村税理士が「これらのポイントをしっかり押さえてください」としてあげたのは、「事業所得と雑所得」「源泉徴収」「経費」の3つ。
たとえば「事業所得と雑所得」は「判断基準に差はあるものの、“売上ー経費=所得”という計算方法は同じ」であることに加え、事業所得では特別控除や赤字の繰越など「青色申告の“ご褒美”」を受けられることや、一方の雑所得では「20万円以下なら確定申告をしなくていい場合もある」ことなど、具体例を挙げながらわかりやすく解説。参加者は納得したようにうなずきながら、手元のノートPCでメモを取る様子が見られた。
●「副業ワーカー」の節税ポイントは「経費」
水村税理士が挙げた3つのポイントのうち、特に参加者からの関心が高かったのは「経費」にまつわることであった。
続いて行われたパネルディスカッションやその後の質疑応答でも、「新しく購入したパソコンは経費で落とせますか?」「カフェやファミレスで仕事をした時の飲食代も経費にしていいですか?」といった疑問が挙げられた。
そのような問いに対し、水村税理士は「正当性があれば問題ない」と答えたうえで、「ただ、購入した物品によっては“減価償却”という考え方が必要」になることや「服飾品や旅行代は否認されやすい」ことなどを補足。
また、「自宅で作業を行なっていますが、家賃や通信費を経費になりますか?」という問いには「ルールに沿って正しく按分すれば認められるケースもあります」と回答し、「経費が増えると所得が減ることになります。所得が減る、ということはそこにかかる税金が減ることになる」ため「経費を正しく判断し漏れなく計上することが、副業ワーカーにとっては節税になるんです」と解説した。
この日セミナーに参加したIT企業勤務の男性は「収入アップのために副業を始めたくて、参加した。税務に関しての知識はまったくなかったため、確定申告についてはもちろん、経費の計上など知らなかったことばかりだった。実際に副業を始める際には気をつけたい」と感想を述べた。
“副業元年”ともいわれる2018年。来年には確定申告1年生が増え、手続きはもちろん、経費の計上や控除の考え方など、自身では判断に迷うこともあるかもしれない。そんなときは税理士などの専門家の手も借りながら、「正しい納税」を心がけたい。