相続税の追徴課税、原因No.1はーー。税務調査の実態を相続専門税理士が解説!
税務調査

相続税申告をした人のうち、5人に1人の割合で税務署から連絡が来るのが一般的だ。そのため、税理士に無料で税務相談ができるQ&Aサービス「みんなの税務相談」には、相続税の税務調査に関する多くの質問が寄せられている。
相続を専門に扱うベンチャーサポート相続税理士法人では、元国税調査官の桑原 弾税理士が、相続税の税務調査の実態について、YouTube動画でまとめている。気になるその内容を紹介していこう。
●亡くなった日から2年〜3年後の秋頃に税務調査が来る可能性が高い
まず、相続税の税務調査は、申告期限の翌年か翌々年に来ることが多い。相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日から10か月後のため、亡くなった日から2年〜3年後の、秋頃が最も税務調査される危険性が高い時期となる。
なぜ秋頃に税務調査が多いかというと、税務署の事務年度が7月始まり6月終わりでワンシーズンとなっているからだ。追徴税額=税務調査官自身の個人の成績となるため、年度の始まりである秋頃に、脱税が疑われる納税者を選んでやってくるという事情があるようだ。
次に、相続税申告から何年経てば税務調査は来ないか?というと、申告期限から5年以上経てば、確率はゼロではないが、税務調査の心配はほぼ無くなったと考えてよいようだ。
●税務調査を回避する方法は2つ
同法人が相続税申告を担当した案件のうち、納税者が直接税務調査官と接触するのはわずか0.46%と、約200人に1人の割合で済んでいる。このように税務調査を回避する秘訣は、「書面添付制度の利用」と「申告書の添付書類を丁寧に作成する」ことだ。
書面添付制度とは、税理士が相続税申告書に品質保証をつけるようなもの。書面添付制度を活用すると、税務署は相続人に直接連絡を取る前に、税理士に意見聴取をしなければならないルールとなっている。聴取後、より詳しく調べる必要がある場合のみ実地調査が行われるので、納税者にとっては「税務調査の防波堤」のような役割を持つ。
ただし、書面添付制度は、実地調査が行われる確率を下げられるメリットはあるが、この書面に事実と異なる記載をした場合、税理士法違反として懲戒処分を受けることもありえる。税理士にとってリスクがあるため、書面添付を拒否する税理士もいるという。
次に、申告書の添付書類を丁寧に作成するとは、誰が見ても分かるように数字の根拠を示すという意味だ。申告書に記載した数字の根拠となる資料をすべて提出するほか、税務調査官が見やすい順番に並べ、マーカー数字に目印をつけるなどの工夫を凝らしている。
細部まで丁寧に資料を揃えることで、税務調査官の「よく調べたい」「この申告書が怪しそう」という税務調査の意欲を削ぐ意味合いが強いのだという。
●追徴課税された原因No.1は、うっかり忘れがちな「・・・」
このように同法人では、元国税調査官の視点で税務調査を回避すべく申告業務を行っているが、それでも結果的に12件は追徴課税される結果となった(2024年の相続税申告は3,033件)。そのうち6件、つまり追徴課税された原因No.1は「相続時精算課税制度の計上もれ」だ。
相続時精算課税制度を利用して、まとまった額の贈与を受け取ったが、5年〜10年以上前のことだと、相続人自身が完全に忘れてしまって、その事実を税理士にも告げずにいたため、申告誤りにつながってしまうのだという。
精算課税制度の計上もれは全国的に見ても、相続税申告の否認事項として最も多い原因のひとつで、これを予防するために、東京国税局は2023年から行政指導の一環として、相続時精算課税制度適用者に対して相続税の申告期限前にお知らせを送付する独自の取組みを開始したほどだ。
税務署が確実な証拠書類を持っている場合は、たとえ書面添付制度を活用したとしても、実地調査に移行して追徴課税をされてしまう。
このように、税務調査を回避するための制度の利用や相続専門税理士による申告書類の提出、また、相続税申告において追徴課税されないよう、贈与の記録をつぶさに記しておくなどの工夫が必要となるのだ。
【取材協力税理士】
桑原 弾(くわはら だん)税理士
岡山大学工学部卒業後、大阪国税局に採用され東淀川税務署に配属される。100件以上の税務調査を経験した後、2008年に同社へ入社。
ベンチャーサポート相続税理士法人では、相続税申告において日本最大級の実績とノウハウにより、顧客の立場に立って一番有利な相続アドバイスを行う。グループの行政書士・司法書士・社会保険労務士法人と連携をとり、あらゆる相続の悩みに対応している。
事務所名 :ベンチャーサポート相続税理士法人
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