「うちは被害者」では済まないーー横領発覚で企業にふりかかる税負担はどうなる?
税務調査

「三菱UFJ銀行員が貸金庫から十数億円を窃取」「幕内格行司の力士会積立金2000万円着服」「中学職員の給食費横領」など、内部関係者による窃取・横領事件が後を絶たない。
企業でも規模の大小にかかわらず、税務調査で横領が発覚することも少なくない。横領を行う手口は、売上の未計上や架空請求、外注費の水増し発注などさまざまだ。
横領された会社側は被害者になるのだが、税務調査で横領が明らかになった場合、税金はどうなるのだろうか。笠井恭平税理士に聞いた。
●修正申告等により所得を是正し、本税に加えて追徴課税が発生
ーー税務調査で、横領により実際の決算内容が異なることがわかると、税金はどうなるのでしょうか。
「税務調査で横領や架空請求、外注費の水増しなどが発覚した場合、未計上売上は益金算入、実体のない外注費は損金不算入とされ、修正申告等により所得を是正し、追加で税金を納付することが求められます。
修正申告等による本税に加えて、加算税や延滞税などの追徴課税が発生します。
そのほかにも、後述する損害賠償請求権が回収不能となった場合の貸倒処理や、給与課税の対象となった際の源泉所得税等の課税といった論点も生じるため、注意が必要です。」
●重加算税が課せられる可能性も
ーー追徴課税のほか重加算税などが課せられる可能性もあるのでしょうか。
「意図的に売上を除外したり、架空の外注費を計上した場合には、隠ぺいまたは仮装と認定され、過少申告加算税に代えて、重加算税が賦課される可能性が高くなります。
これは、基本的には、納税者である法人と同一視できる代表者や役員が、隠ぺいまたは仮装を行った場合に重加算税が賦課されると考えられます。
しかし従業員であっても、納税者たる法人の行為と同一視できるほどの法律上・事実上の権限を有する場合には、重加算税が賦課される可能性が高くなります。」
●横領されたお金が返金されないとどうなる?
ーー企業へ横領したお金が返金されなかった場合は、どのような扱いになるのでしょうか。
「まず、原則として、横領が行われた事業年度において、横領損失の損金と損害賠償請求権の益金を同時に両建てで計上します。
横領者から返金がない場合、横領者の資産状況・支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった事業年度において、損害賠償請求権を貸倒れとして損金経理することができます。
なお、役員が横領者である場合には、横領損失と損害賠償請求権は計上されず、役員(認定)賞与として課税される可能性があります。この場合、源泉徴収義務および不納付加算税が課されることとなります。」
【取材協力税理士】
笠井 恭平(かさい・きょうへい)税理士
富山県出身、神奈川県在住の30代若手税理士。新卒で国税組織に入り、10年にわたり調査業務や審理業務など幅広い経験を積む。その後、税理士法人に転職し、5年間国際税務を中心に実務に携わる。令和5年4月に税理士登録し、同年10月にPROS税務会計事務所を開業し独立。
個人事業主様を含む、中小企業者様や小規模企業者様を中心に、クラウドツールを活用して、経理・税務会計・人事労務などのバックオフィス業務のDX化+効率化を目指すことで、お客様が本業に専念できるようサポートしている。
その他経営や財務に関わるご支援など幅広くサポートすることで、お客様の一番身近な相談相手として、共に成長し、共に歩んでいくことをモットーとしている。FP1級、相続税法検定1級も保有。
事務所名:PROS税務会計事務所
事務所URL:https://www.zeiri4.com/p_kanagawa/a_14130/g_14136/f_7249/