阿武町「4630万円」誤送金、課税額が2000万円になるってホント?
所得税

山口県阿武町が新型コロナ対策の給付金を誤って20代男性に4630万円振り込んだ問題で、山口県警は5月18日、男性を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕した。
花田憲彦町長は男性の逮捕後も「訴訟の中でしっかりと聞き出し、全額を回収していきたい」と報道陣の取材に語っており、返還を求める訴訟は継続するとみられる。一方、男性はすでに全額費消してしまったとも報じられており、返還の実現は不透明な状況だ。
この問題をめぐっては、税金の観点からも注目されている。スポーツニッポンによると、元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士が「納める税金は少なくとも2000万円ほどになるのではないか」と語っている。
課税対象だとしたら、どの程度の金額になることが想定されるのか。2000万円という高額課税の可能性もあるのか。山本邦人税理士に聞いた。
●返還されない限り「課税所得を構成する」
——町から男性に誤って振り込まれた4630万円は、課税の対象となるのでしょうか。
誤って振り込まれた4630万円は、法律上の原因なく得た利益として、民法703条の不当利得に当たると思われます。不当利得は、民法上、これを返還する義務を負います。
過去の判例上、利得の返還がおこなわれない限りは、経済的成果を支配管理し、自己のためにそれを享受している状態にあるとして、不当利得が課税所得を構成するものとされています。
——どのような税金が課されるのでしょうか。
具体的には、所得税(復興特別税を含む)および住民税(県民税・市民税)が課されます。
——4630万円は住民税非課税の世帯を対象とした支援事業に基づくものですが、「住民税非課税の世帯」という事情は、4630万円が課税対象か否かに何か影響あるのでしょうか。
影響はありません。
「住民税非課税の世帯」であるのは、あくまでも令和3年度分の所得で判定した結果です。その世帯が令和4年度に課税対象になる所得を得た場合は、所得税および住民税が課されます。
●課税対象となる金額は「2290万円」
——仮に4630万円が課税対象となる場合、どの程度の課税金額になるのでしょうか。
4630万円は、所得税上、一時所得として扱われます。
課税対象となる金額は、(総収入金額4630万円−収入を得るために支出した金額0円−特別控除額50万円)×1/2=「2290万円」と算定されます。これはあくまで課税対象となる金額ですので、税額とは異なります。
他の所得や社会保険料などの控除額がどれくらいあるかによって、税額は変わります。
仮に他に所得がなく、所得控除も基礎控除のみと仮定した場合の税額は、所得税がおよそ「630万円」、住民税がおよそ「225万円」となります。使い果たしていたとしても、返還しない限り、納税の義務は変わりません。
【取材協力税理士】
山本邦人(やまもと・くにと)税理士
監査法人にて経営改善支援業務に従事した後、2005年に独立。中小企業の財務顧問として業務を行う。税金面だけではなく、事業の継続的な発展という全体最適の観点からアドバイスを行う。
事務所名:山本公認会計士事務所
事務所URL:https://www.accg.jp