トライアルHDが3,800億円で西友を買収!ーー財務リスクや買収のメリットは?税理士が解説 - 税理士ドットコム

税理士の無料紹介サービス24時間受付

05075866271

  1. 税理士ドットコム
  2. 税金・お金
  3. トライアルHDが3,800億円で西友を買収!ーー財務リスクや買収のメリットは?税理士が解説

トライアルHDが3,800億円で西友を買収!ーー財務リスクや買収のメリットは?税理士が解説

税金・お金

トライアルHDが3,800億円で西友を買収!ーー財務リスクや買収のメリットは?税理士が解説
Sakosshu Taro / PIXTA

トライアルホールディングス(以下、トライアルHD)が、西友を買収すると発表した。株式を保有していた米投資ファンドKKRと米小売大手ウォールマートから、7月に3,800億円で全株式を取得し、完全子会社化する。ところで、トライアルとはどのような会社なのだろうか。

トライアルHDは、福岡市に本社を置く大手ディスカウントスーパーで、古物商・リサイクルショップから事業を開始。ITを祖業とし、データ活用による商圏分析力を活かしながら、九州を中心に北海道、関東など全国に343店舗を展開する。全国でいち早く、セルフレジ機能付きの買い物カートや顔認証での会計システムを導入した企業として知られている。

今回の西友買収により、トライアルHDは店舗数585店、売上高は単純合算1.2兆円超(トライアル7,179億円、西友4,835億円)となり、小売業界でのポジショニングは大きく飛躍することになる。両社の店舗は地域的な重複は少なく、相乗効果が見込めるのだという。

今回の買収はSNS上でも大きな話題となる一方で、懸念の声も上がっている。

ひとつは、トライアルHDが取得資金として、手元資金に加え取引銀行からの借入金3,700億円を充当するため、借入金および利息の負担が大きくなるという点だ。

また、西友の純資産は約1,176億円(2023年12月末)であるのに対し、買収価格が3,800億円のため、約2,600億円の「のれん代」が発生すると想定されることだ。日本会計基準では、定められた期間内にのれん代を毎年償却しなければならないため、費用負担が大きくなる。

巨額の投資で西友を買収するトライアルHDにとって、財務状況に懸念すべきポイントはあるのだろうか。岩永悠税理士に聞いた。

●24期連続増収を達成。キャッシュフローを圧迫するかは調達金利次第

ーートライアルHDの純資産は約1,182億円、買収に伴う銀行からの借入金は3,700億円とのことです。銀行から巨額の借り入れをした場合、一般的に財務状況はどのようになると考えられますか。

「一般的に巨額の借入金を調達すると、総資産に占める負債の割合、すなわち負債比率が大幅に上昇します。

トライアルHDの場合で計算すると、借入金3,700億円を加えた総資産は約6,536億円となり、負債比率は約59%に達します。これは、財務の健全性を評価する指標である自己資本比率の低下を意味し、財務リスクの増加を示唆します。

また、借入金に伴う利息負担の増加はキャッシュフローの圧迫要因となりますが、トライアルHDはこれまで24期連続増収を達成しており、安定した収益基盤を有しています。よって、3,700億円の調達金利などが気になるところです。」

※いずれの数字も2024年6月末の決算資料より算出。

●のれん償却による利益減少が、投資家や金融機関からどう評価されるかが重要

ーー西友ののれん代が2,600億円だと仮定した場合、日本会計基準でのれん代を償却すると、毎年費用はどのくらい発生するのでしょうか。また費用発生により、どのような影響があると考えられますか。

「日本会計基準では、のれんは20年以内の効果が及ぶ期間にわたり定額法で償却することが求められています。

仮にのれん代を2,600億円、償却期間を20年と設定した場合、年間の償却費は130億円となります。この償却費は毎期の費用として計上されるため、トライアルHDの利益を圧迫する要因となります。

しかし、のれん償却は非現金支出の費用であり、キャッシュフローに直接的な影響を及ぼしません。

重要なのは、『のれん償却による利益の減少が、投資家や金融機関からの評価にどのように影響するか』という点です。そのため経営者が成長戦略を明示し、IR担当は適切な情報開示とコミュニケーションを図ることが求められます。」

●小売業界の大きな変革が始まる象徴的なM&A

ーーこの買収は、トライアルHDと西友にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

「今回のM&Aは『業界再編型』となります。僅差ではありますが、純資産の規模では小が大を喰う形となる今回の買収により、トライアルHDは関東エリアを中心とした西友の242店舗を獲得し全国で585店舗体制となります。

これにより、売上高は1兆円を超え、小売業界での存在感が大幅に向上します。小売業界で売上高1兆円となると、ローソンやツルハHDに匹敵する大きさとなります。

また、西友が持つプライベートブランド商品や製造拠点を活用することで、商品力の強化や生産・物流の最適化も期待できます。

一方、西友にとってはトライアルHDのリテールテックやデータ活用のノウハウを取り入れることで、店舗運営の効率化や顧客体験の向上が見込まれます。さらに、両社の商圏が重複していないため相乗効果を最大限に発揮できると考えられます。まさに小売業界の大型再編の狼煙(のろし)となるM&Aではないでしょうか?」

【取材協力税理士】
岩永 悠(いわながゆう)税理士
アイユーコンサルティンググループ代表/税理士法人アイユーコンサルティング代表社員。
西南学院大学卒業。京都大学経営管理大学院 上級経営会計専門家(EMBA)プログラム修了。2007年中堅の税理士法人に入所。26歳で税理士登録後、国内大手税理士法人に入所し福岡事務所設立に参画。13年独立開業、15年法人化。「日本のミライに豊かさを」をビジョンに掲げ、税理士法人を母体に全国11拠点・総勢約170名体制でグループを運営している。24年1月には事業承継専門部隊「承継アドバイザリー部」を設立。主な著書「事業承継を乗り切るための組織再編・ホールディングス活用術」(23年改訂版発刊、24年重版)。
・事務所名 :
アイユーコンサルティンググループ
税理士法人アイユーコンサルティング
・グループサイト:https://bs.taxlawyer328.jp/
・採用サイト:https://iu-recruit.taxlawyer328.jp/

税金・お金の他のトピックスを見る

新着記事

もっと見る

会員登録でメルマガをお届け!

税務のお役立ち情報を
無料でお届けします

登録する

公式アカウント

その日配信した記事やおすすめなニュースなどを、ツイッターなどでつぶやきます。

協力税理士募集中!

税理士ドットコムはコンテンツの執筆・編集・監修・寄稿などにご協力いただける方を募集しています。

募集概要を見る

ライター募集中!

税理士ドットコムはライターを募集しています。

募集概要を見る

「税理士ドットコム」を名乗る業者にご注意ください!