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iDeCo大改正!掛金アップの裏で退職所得控除のルールが変更に。…退職金の税負担はどうなる?

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iDeCo大改正!掛金アップの裏で退職所得控除のルールが変更に。…退職金の税負担はどうなる?
barks / PIXTA

2025(令和7)年度の税制改正関連法案が、3月31日に成立した。

改正では、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金が大幅アップとなった一方で、受け取り時の税制優遇措置である退職所得控除の利用制限が強化された。

そもそもiDeCoとは、公的年金に上乗せする私的年金制度のこと。加入者は掛金を設定し、金融機関等で用意されている投資信託などで運用する。そして、60歳以降に年金または一時金で受け取るというものだ。加入できる年齢は20歳〜64歳となっている(国民年金加入が条件)。

iDeCoには多くの税制上の優遇措置が用意されている。まず、運用益は非課税だ。また、毎月の掛金額は全額所得税控除の対象となるため、その分所得税や住民税が減額される。

受け取り時に課税はされるが、一時金で受け取ると「退職所得控除」、年金で受け取ると雑所得扱いとなり「公的年金等控除」が適用される。さらに、一時金と年金の併用で受け取ることも可能となっている。

●2025年のiDeCoの改正内容とは

今回の税制改正によるiDeCoの改正点とは、以下のとおりだ。

【掛金が大幅に拡大】
・個人事業主、フリーランス(第一号被保険者)… 月額 6.8 万円→月額 7.5 万円
・会社員
└企業年金加入者… 月額2万円→月額 6.2 万円(他の企業年金の掛金と合算で上限)
└企業年金未加入者… 月額2.3万円→月額 6.2 万円

たとえば、会社員(企業年金未加入者)で、これまでiDeCoの掛金月額2.3万円だったが、月額 6.2 万円に増額した場合、1年間の所得税・住民税は、約8万円から約22万円と大幅に減税されることになる(所得税20%+住民税10%として簡易的に算出)。

【退職所得控除の適用ルールが5年→10年に延長】
・iDeCoなどの確定拠出年金を一時金で受け取り、退職所得控除の適用を受けた場合、5年後に会社の退職金(※1)を受け取ると、退職金も別途、退職所得控除の適用が受けられる

→両方で退職所得控除を受けるには、iDeCoなど確定拠出年金の一時金受け取りから、10年後に会社の退職金を受け取る必要がある

そもそも、退職金を2社から受け取ったり、確定拠出年金の一時金と退職金を同時に受け取る際には、原則それぞれの退職所得を合算して控除額を算出する。

ただし、退職金(またはiDeCo)を受け取ってから5年以上経過すると、別々に計算することが可能となるため、退職所得控除が最大限適用される。これが「5年ルール」と言われるものだ。

この5年ルールについて、iDeCoなどの確定拠出年金を一時金で受け取った場合は、5年経過から10年経過に見直しが行われた(2026年1月1日以降に適用)。

つまり、退職所得控除のルール変更により、60歳でiDeCoを受け取り、会社の退職金でも退職所得控除を最大限受けるには、70歳まで受け取りを待つ必要があるということだ。

※1 個人事業主の場合は小規模企業共済が該当
※会社退職金を先に受け取り、後からiDeCoを受け取る際には、会社退職金の受け取りから20年経過しないとiDeCoの退職所得控除を満額利用できないため、上記の5年(10年)ルールの対象外

掛金が大幅に増額となった一方で、退職所得控除の適用期間が延長されたわけだが、はたして本当に“改悪”なのだろうか。花田 準税理士に聞いた。

●10年ルールへの変更で約42万円の税負担増も

ーー現行の5年ルールから10年ルールに変更されることで、税額にどのような違いが出るのでしょうか。

「以下の条件で、現行の5年ルールと10年ルールとで、かかる税額等をシミュレーションしてみましょう。なお計算上、復興特別所得税は考慮しません。

【前提条件】
60歳でiDeCoの一時金500万円(20年間加入)、65歳で会社退職金2000万円(35年勤務)を受け取った場合

【5年ルール(現行)の計算式】

<60歳…iDeCo一時金500万円>
・退職所得控除:40万円✕20年=800万円
・退職所得金額:500万円ー500万円(退職所得控除は800万円だが一時金から差し引ける控除額は500万円)=0 
・課税なし:退職所得控除が一時金を上回るためゼロ

<65歳…退職金2,000万円>
・退職所得控除:800万円+70万円✕(35年ー20年)=1,850万円
・退職所得金額:(2,000万円ー1,850万円)✕1/2=75万円
・所得税:75万円✕5%=3万7,500円
・住民税:75万円✕10%=7万5,000円
・所得税および住民税:合計11万2,500円

【10年ルール(改正)の計算式】
<60歳…iDeCo一時金500万円>
・課税なし(現行ルールと同様)

<65歳…退職金2,000万円>
退職金の支払いを受けた年の前年以前9年以内に、iDeCo一時金の支払いを受けているため、既に控除済みの500万円相当額については二重取りが認められず、調整が必要となる。

・調整額:iDeCo一時金からの控除額500万円÷40万円=12年(1年未満端数切捨て)
 40万円✕12年=480万円
・退職所得控除:800万円+70万円✕(35年ー20年)ー調整額480万円=1,370万円
・退職所得金額 :(2,000万円ー1,370万円)✕1/2=315万円
・所得税:315万円✕10%ー9万7,500円=21万7,500円
・住民税:315万円✕10%=31万5000円
・所得税および住民税:合計 53万2,500円

上記条件では、10年ルールに変更されることで、65歳で受け取る会社退職金2,000万円に対して発生する税額に違いが生じます。

現行ルールの場合、所得税・住民税の合計は約11.3万円です。対して改正ルールの場合、退職所得控除の二重調整計算が行われます。そのため課税所得が増加し、所得税・住民税は合計約53.3万円となります。つまり、現行ルールと比べて、約42万円の税負担増となります。」

●適用期間の変更で影響を受けるのはどんな人?

ーー退職所得控除の適用期間の変更について、影響があるのはどのような人でしょうか。

「影響がある人は、iDeCo一時金と会社退職金の収入合計が、勤続年数で計算した退職所得控除額を超える人です。

退職所得控除額は、勤続年数により以下の通り計算されます。

<退職所得控除額>
・勤続年数20年以内…40万円×勤続年数
・勤続年数20年超…800万円+70万円✕(勤続年数ー20年)

iDeCo一時金と会社退職金の支払いの間が10年以内であるとしても、そもそも収入合計が退職所得控除額の範囲内の金額であれば、税額は発生しないため、今回の改正の影響はありません。

退職所得は、退職所得控除を差し引いた後、さらに原則として2分の1をかけた金額に対して、他の所得と分離して課税されます。他の所得に比べて、もともと税額が低くなるように設計されていることも念頭に置いておきましょう。」

ーー影響がある人で、制度改正による税負担を軽減させるためには、どのような対策が考えられるでしょうか。

「税負担を軽減させるための対策として、iDeCoを『一時金』ではなく『年金形式』で受け取る方法があります。

年金形式で受け取った場合、毎年の公的年金等に係る雑所得として扱われます。

所得税は、その年の所得が大きいほど税率が高くなる超過累進税率のため、年金として分散して受け取ることで、税金を低く抑えられる可能性があります。」

●掛金増加で節税効果は大。ただし注意点も・・・

ーー退職所得控除の適用期間の変更による影響が特にない人は、掛金の大幅拡大で、どのようなメリットがあるのでしょうか。

「掛金は支払った全額が所得控除の対象となり、年間合計額は『小規模企業共済等掛金控除』として、所得金額から差し引かれます。

つまり、資産運用を行いながら、同時に節税効果を得られることが、大きなメリットと言えます。掛金は年に一回、増額(または減額)が可能です。

なお、iDeCoは原則として、加入後に任意で脱退することができないので、掛金を増額する際には注意が必要です。掛金の支払いを一時停止することは可能ですが、毎月の管理手数料は発生します。

iDeCo一時金等を最短で受け取れる年齢は60歳です。くれぐれも受け取り年齢=ゴールを見据えた、無理のない掛金設定を心がけましょう。」

【取材協力税理士】
花田 準(はなだ じゅん)税理士、社会保険労務士
元国税調査官の税理士。国税局調査部にて大規模法人に対する税務調査に従事。
国税局退職後、税理士法人勤務を経て独立開業。
個人から中小法人への税務顧問、税務調査対応、事業承継・相続税対策をメインに行っているほか、社労士業務とのワンストップや業務効率化のためのサービスを提供している。
事務所名 :花田税理士・社労士事務所
事務所URL:https://h-taxsr.jp/

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