芸人みなみかわが告白「税金で半分は持っていかれる」。予定納税とはどういう制度?
税金・お金

お笑い芸人のみなみかわさんが、2025年7月にMBSラジオ「アッパレやってまーす!」にレギュラー出演し、自身の税金事情について明らかにした。
事の発端は「住宅ローンが組めない」とぼやいたみなみかわさんに対して、共演者のくっきー!さん(野生爆弾)が「一括でいけるでしょう」と返したこと。これに対し「そんなに貯金がない」と告白した。
その理由は、手取りから引かれる税金にあるという。「予定納税ってあるでしょう?(それを支払うと)貯金ゼロじゃないですけど、残らないです。半分ぐらい余裕でいかれます」と語った。
みなみかわさんは前事務所退所後、妻が代表を務める法人に所属。さらに8月23日には、合同会社から株式会社へ組織変更したと発表している。
この「予定納税」とは、どんなしくみなのだろうか。
●「予定納税」とは、その年の税金の一部をあらかじめ納付する制度
予定納税とは、前年分の所得金額や税額などに基づいて、その年の税金の一部をあらかじめ納付する制度のこと。
個人事業主であれば、前年(1月1日〜12月31日)の所得に基づく所得税および復興特別所得税の合計額が15万円超の場合、法人は、前事業年度の法人税額が20万円超だと、予定納税の義務が生じることになる。
納める税額の算定方法は、所得税であれば前年の年間税額の3分の1(✕2回納付)、法人税は前期の年間税額の2分の1(✕1回納付)となる。
みなみかわさんは、個人事業主ではなく法人所属のようだが、法人税の納税額および予定納税額はどれぐらいなのだろうか。奈須大貴税理士に聞いた。
●法人化の検討は「課税所得が数千万円を超える」タイミングが目安
ーーみなみかわさんが、もし節税目的で法人を設立した場合、そもそも個人事業主時代の課税所得金額はどれくらいだったと推測できるでしょうか。
芸人さんの売上はテレビ出演料や劇場収入、YouTubeやイベントなど幅広いですが、ある程度名前が知られている方であれば、年収数千万円〜1億円を超えるケースも珍しくありません。
法人化を検討するタイミングは「課税所得が数千万円を超える」あたりが目安になります。なぜなら、個人事業主として稼ぎが大きくなると、最高税率55%(所得税・住民税合わせて)の世界に入ってしまうからです。なお、最高税率が55%となるのは、課税される所得金額が4,000万円以上の場合です。
したがって、みなみかわさんの場合も、少なくとも数千万円規模の課税所得があったと考えるのが自然です。
●所得税+住民税の最高税率55%に対して、法人税率は30%弱
ーー個人事業主が支払う所得税および法人税は、それぞれどのくらいの金額になるのでしょうか。
たとえば「課税所得1億円」だとして比較してみましょう。
<個人事業主の場合>
所得税・復興特別所得税・住民税を合わせると、最高税率55%です。1億円の課税所得があれば、ざっくり5,000〜5,500万円が税金になります。
<法人の場合>
法人税率は中小法人でも実効税率30%弱が目安です。同じ1億円の利益に対しては、約3,000万円が法人税等となります。
さらに、役員報酬として役員個人が受け取る部分については、個人側で再度課税されますが、給与所得控除や所得分散を使えるため、結果的にトータルで数百万円〜1,000万円以上の節税効果が出ることもあります。
●法人税3,000万円なら予定納税額は1,500万円
ーー上記を前提とした場合、法人税の予定納税額はおおよそいくらとなるのでしょうか。納付期日についてもお教えください。
法人税の予定納税は、前期の法人税額が20万円を超える場合に義務が発生します。予定納税の金額は「前期の法人税額✕1/2」で計算します。
たとえば前期の法人税が3,000万円であれば、予定納税額は1,500万円となります。
なお、納付回数は1回(原則)で、納付時期は事業年度の中間(=開始から6か月経過した日から2か月以内)となります。
つまり、3月決算の会社であれば、11月末頃が予定納税の納付期限になります。
【取材協力税理士】
奈須 大貴(なす・ひろき)
税理士、公認会計士、認定IPOプロフェッショナル(SIP)。
1994年生まれ、福岡県北九州市出身。有限責任監査法人トーマツ福岡事務所、株式会社Faroを経て、2023年に独立開業。
「会計で会社を強くする!!!」、「あなたの夢、会計力で応援します!!!」というスローガンのもと、スタートアップ企業、中小企業を中心に税務顧問サービスを提供している。
また、公認会計士として、IPO準備企業の支援や上場企業の決算、開示支援も行っている。
事務所名 :奈須大貴公認会計士・税理士事務所
事務所URL:https://hiroki.tkcnf.com/