「パワーカップル」はずるい? 同じ年収1500万でも「軽い税負担」なぜ
税金・お金

世帯収入が高い、ひと握りの夫婦「パワーカップル」。三菱総研の定義では「共働きで夫の年収が600万円以上、妻が400万円以上で世帯年収が1000万円以上の夫婦」を指し、全世帯の1%程度だという。税務当局からすると、しっかり納税してくれさえすれば、とてもありがたい存在だろう。
実は、共働きのパワーカップルは、節税の恩恵を受けやすいと一部で言われている。例えば世帯年収が1500万円でも、「パワーカップル」と「夫の年収1500万円+専業主婦」の場合とでは異なるそうだ。
「高収入のうえに、節税までなんて…恵まれてる!」という叫びもTwitterでは見られるが、どうして恩恵を受けやすいのだろうか。安藤由紀税理士に詳しく聞いてみた。
●1人で沢山もらうと、高額部分は高い税率
【条件】
・世帯A→パワーカップル(夫800万円、妻700万円)、40代子どもなし、都内在住
・世帯B→夫の年収1500万円、妻は専業主婦で所得ゼロ、以下同じ条件
ーー上記の条件のもと、概算で世帯Aが年間に支払う税金はいくらですか
税金の合計は1,599,200円です。内訳はこちらです(所得税:夫470,100円、妻306,400円、合計776,500円、住民税:夫451,500円、妻371,200円、合計822,700円)。
ーーでは世帯Bについてはいかがですか
世帯Bの税金の合計は3,161,400円になります(所得税:2,073,200円、住民税:1,088,200円)。
ーーかなり大きい差があるのはどうしてでしょうか
はい。世帯でみると全く同じ収入なのに、税額が全然違いますね。一番の理由は、もらい方の違いです。1500万円を、1人でもらうか、2人でもらうか。給料に対してかかる所得税は、給料の金額が高くなればなるほど、税率も高くなっていきます。
そのため、1人で沢山もらうと、高額部分は高い税率で計算されてしまうのです。逆に同額を2人で分ければ、低い税率でおさえることができます。
●税金だけで考えるとパワーカップルは憧れの的
ーー具体的に教えてください
具体的に言うと、世帯Aの夫婦はそれぞれ「5%~最高20%」の税率で所得税が計算されるのに対し、世帯Bの夫は「5%~最高33%」の税率が適用されるのです。さらに、残念ながら1500万円という高収入では、配偶者控除も受けることができなくなってしまいます。
ーー社会保険料についても違いますか
世帯Aの方が世帯Bより社会保険料控除額は大きくなります。世帯Aの社会保険料支払額は2,260,368円(夫1,179,132円、妻1,081,236円)に対し、世帯Bは1,611,960円です。
社会保険料は将来もらう年金額にも影響があるため、一概に比較することはできませんが、支払額としては世帯Aの負担が大きいと言えます。
給料から、「税金と社会保険料」を控除した手取りで見ると、世帯Aが11,140,432円、世帯Bは10,226,640円。その差は90万円ほどです。
働き方は人それぞれで、幸せの形も違いますが、税金だけで考えるとパワーカップルは憧れの的ですね。
【取材協力税理士】
安藤 由紀(あんどう・ゆき)税理士
大学卒業後、銀行勤務を経て2008年に税理士登録(簿記、財務諸表論、法人税法、所得税法、相続税法の5科目合格)。大学講師、セミナー、執筆など業務は幅広い。経理初心者向けのわかりやすい解説に定評あり。(ブログ : https://ameblo.jp/ando-tax/ Twitter :@andoyuki_
事務所名:安藤由紀税理士事務所
事務所URL:http://www.ando.jdlibex.jp/index.html