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税制改正の議論は今も「ブラックボックス」なのか 安倍政権、方針決定のプロセス 

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税制改正の議論は今も「ブラックボックス」なのか 安倍政権、方針決定のプロセス 
自民党本部(Mugimaki / PIXTA)

年末になるとイルミネーションが灯り、世間ではクリスマス気分が盛り上がってきますが、税関係者は、年末になるとクリスマスよりも「税制改正大綱」の発表が気になります。税制改正大綱の内容がほぼそのまま翌年度の税制改正の内容となるからです。

10月17日に自民党の税制調査会の幹部が会合を開き、「企業の内部留保を投資に回す環境を整えるための税制上の優遇措置などを検討することで一致した」との報道がありました 。今年の「税制改正大綱」にどのような形で反映されるのか注目されます。

このように、国民生活に大きな影響がある「税制改正大綱」ですが、どのようなプロセスを経て決まるのか、また、かつては首相さえも口出しできない聖域とされてきた「自民党税制調査会」は、安倍政権でどのように変わったのでしょうか。(ライター・メタルスライム)

●税制改正のスケジュール

税は、国民に負担を強いるものなので、「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」と憲法で規定されています。そのため、税制改正をするためには法律の制定・廃止または法律の改正が必要になります。

税は、あらゆる分野に関係があるので、改正をするためには多くの人から意見を聞く必要があります。そのため、各省庁では、所管する関係団体に対して5月から7月にかけてヒアリングを行います。そこで各団体から要望を聞いて、どのような税制改正を求めるかおおまかなイメージをつかみます。その上で、各団体から正式な要望書を提出してもらいます。各省庁が財務省に提出する要望書に具体的に落とし込むためです。

各省庁は8月末までに、改正を求める項目名と税目を明らかにして、定型の表形式の要望事項をまとめます。それを財務省主税局に税制改正要望として提出します。ここで各団体の要望が1箇所に集約されることになります。ちなみに地方税は総務省が管轄なので、こちらも同じように各省庁から要望が出され総務省に集約されます。

これを受けて、「政府税制調査会」や「自民党税制調査会」が動き出します。実際には「公明党税制調査会」もありますが、こちらは自ら税制について策定するというよりも、自民党税制調査会に公明党の方針を要求するような役割にすぎません。ただ、消費税の軽減税率導入では自民党税制調査会が反対していたにも関わらず、公明党からの強い要請によって導入させられたということがあるため、無視できない存在ではあります。

●政府税調と自民党税調の違い

「政府税制調査会」と「自民党税制調査会」の違いは、前者が学者や有識者により構成されているのに対し、後者は自民党の政治家によって構成されているということです。政府税制調査会は、主に税のあり方や理論面について中長期的な視点で検討する内閣総理大臣の諮問機関で税制改正の決定権はありません。税制改正の事実上の決定権があるのは、「自民党税制調査会」になります。

10月以降になると、自民党の税制調査会に所属する議員に対して、各種団体から陳情が多くなされます。いわゆる「ロビー活動」というものです。ペーパーで要望書は出していても決めるのは人なので直接働きかけるという古典的な方法が今でも取られています。

11月から12月上旬にかけて、各省庁から寄せられた要望書やロビー活動での内容を踏まえて自民党税制調査会のメンバーと財務省のメンバーで調整作業が行われます。財務省の意見を聞かないと具体的な法案作成はできないからです。

12月の半ばには、与党による「税制改正大綱」が発表されます。マスコミに大きく取り上げられるので、この時点で翌年の税制改正の主な内容を知ることができます。財務省と総務省は、与党の「税制改正大綱」をもとに12月下旬までに「税制改正の大綱」、「税制改正の大綱の概要」、「税制改正の概要(地方税)」を取りまとめ、閣議決定を行います。

年明けから財務省と総務省が法案作成に取りかかり、2月頃に税制改正法案として国会へ提出されます。国会に提出された税制改正法案について、衆議院と参議院で審議され、可決すれば法律が成立します。遅くとも3月末までに法律の公布が行われ、4月1日から改正法が施行されることになります。

●税制改正のカギを握るのは誰か?

冒頭で述べたとおり、税制改正大綱の内容がほぼそのまま翌年度の税制改正の内容を決めるため、「自民党税制調査会」の決定がすべてと言っても過言ではありません。特に、「インナー」と呼ばれる税制に詳しいベテラン議員が中心となって検討が進められます。その中でも「コアインナー」と呼ばれる5人が税制改正で大きなカギを握っています。重要案件や最終局面では、コアインナーが会合を行い決定することになります。

インナーを中心に議論が進められるのは、大人数では話がまとまらないことと、財務省や財界との調整が必要になるため、場合によっては、政治力で反発を抑え込むことも必要だからです。特に最終決定権を持つコアインナーは、税制に精通した大物議員(大臣経験者)を充てているのはそのためです。

【インナー】(◎はコアインナー)
◎会長 甘利明
◎最高顧問 野田毅
◎顧問 額賀福志郎
◎小委員長 宮沢洋一
◎小委員長代理 林芳正
 副会長 石原伸晃
 副会長 塩崎恭久
 副会長 細田博之
 幹事 後藤茂之

そもそも、各省庁(各種団体)から提出される税制改正要望というのは、減税か控除額の増額を求めるものが多く、これを全て受け入れていたら財源がなくなってしまいます。他方、増税を主張する財務省や地方自治体の意見を受け入れたら、選挙で大敗する可能性があります。そのため、絶妙なバランスで、優先順位を付けて、景気の動向なども見ながら、毎年少しずつ導入できるものから認めていくという流れになっています。

政治家が税制を決める良い点は、官僚と違い選挙があるので、国民から非難を浴びるような税制にはなりにくいということが挙げられます。逆に悪い点は、選挙で票集めをしてくれる団体や企業を優遇したり、政治献金の多いところに有利になるような税制にしたりする可能性があることです。

このようなこともあって、自民党の場合、特に大企業に有利な税制になりやすくなっています。法人税の減税がなされたり、企業優遇税制である租税特別措置の減税があったり、受取配当金の益金不算入があったりするのはそういう背景があります。

●自民党税調と政府が連携しながら決めるスタイルに

今年9月に自民党税制調査会の会長に就任した甘利明氏は、安倍首相と近い関係と言われています。前会長の宮沢洋一氏と同様、首相官邸との連携を重視していくものと考えられます。このような人事をしたことから、安倍政権としては、「アベノミクス」を推進するため、経済成長を重視する税制改正に取り組むことを狙っているのでしょう。

かつてのように、自民党税調が一方的に決めて、財務省がそれを追認するというよりも、自民党税調と政府が連携しながら税について決めていくというスタイルに変わりつつあります。ただ、依然として変わらないのが、租税という国民にとって大きな影響のある立法を決定するのに密室で行われているという点です。

政党政治の世界では、党の方針に所属議員は従わざるを得ず、その党の幹部が決めたことについては、結局逆らえません。会社にたとえるなら自由民主党という会社に所属する平社員が役員の決定に異を唱えることはできないのと同じです。自民党税調の幹部であるコアインナーの決定には逆らえないわけです。

それでも会社の場合、取締役会の内容は議事録に記録され、一定の利害関係人は閲覧ができるためチェックできますが、自民党税調の議論の内容は全く公開されません。自民党税調というブラックボックスの中身は知る必要はなく、国民は黙って受け入れればいいというスタンスは、民主国家として疑問を感じます。

複雑な利害関係を調整するためには、多数で議論するよりも少人数の方がやりやすいということもあるのは事実ですが、少なくとも議論はオープンにすべきであり、なぜ、税制改正が必要なのかをしっかりと説明する責任が自民党税調にはあるのではないでしょうか。

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