まもなく開始も約7割が中止を希望?「インボイス」に関する個人事業主へのアンケート調査 - 税理士ドットコム

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まもなく開始も約7割が中止を希望?「インボイス」に関する個人事業主へのアンケート調査

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まもなく開始も約7割が中止を希望?「インボイス」に関する個人事業主へのアンケート調査
「インボイス」に関する個人事業主へのアンケート調査

2023年10月から、いよいよインボイス(適格請求書)制度がスタートする。

インボイス制度は、10%と8%の消費税率が混在する中、売り手が買い手に対して正確な適用税率や消費税額を示すために導入されるもの。

ただし、これまで年間売上が1000万円未満の免税事業者がインボイス制度に登録すると、課税事業者となり消費税を支払う義務が生じる。そのため免税事業者は登録するか否か慎重にならざるを得ない状況となっている。

そこで税理士ドットコムでは、導入直前の9月中旬、フリーランスなどの個人事業主を対象に、インボイスへの対応状況のほか「インボイス制度への賛成、反対意見」などを伺うアンケートを実施した。

●「インボイス登録申請済み」と「登録申請するつもりはない」がともに3割

まず、「インボイス発行事業者として登録状況」について聞いたところ、9月中旬時点で「登録申請済み」と回答したのは33.8%。残り7割近くが未申請という結果となったが、その内訳としては「申請する予定/今後の状況によっては申請する」が20.9%、「登録申請するつもりはない」が33.6%という結果になった。

問:インボイス発行事業者としての登録状況を教えてください

・登録申請済み…33.8%
・登録申請する予定…5.6%
・取引先から要請があれば登録申請する…2.7%
・2023年10月の施行後、業務に影響があるようなら登録申請する…12.6%
・登録申請するかまだ決めていない…11.7%
・登録申請するつもりはない…33.6%

「登録申請済み」「登録を予定している」と回答した人へその理由について伺ったところ、「登録しないと仕事が減りそうなため」が37.4%と最も多く、今後の事業への影響を懸念して登録申請していることがわかった。

また、31.3%が「消費税の課税事業者である/これから課税事業者となる予定だから」と回答しており、課税事業者であればインボイス登録に問題がないことがわかる。

問:登録申請した、または登録を予定している理由をお教えください(複数回答)

・登録しないと仕事が減りそうなため…37.4%
・消費税の課税事業者である/これから課税事業者となる予定だから…31.3%
・取引先から登録を求められたため…14%
・取引先から消費税分の値引き交渉などをされたため…5.3%
・その他…12%

「その他」の理由を見ていくと、「登録しないとなんとなく肩身が狭い」「取引先に負担がかかるから」「取引先との消費税の押し付け合いになることを恐れた」などの声が挙がる反面、「登録している方が新規契約を取りやすいため」といった、変化を商機と捉える前向きな意見もあった。

●インボイスに登録しない理由の8割が「課税売上高が1000万円以下」

先の質問で、インボイス発行事業者として登録するかどうかを「まだ決めていない」「登録するつもりがない」と回答した人へは以下の質問をした。

・登録申請するかどうか決めていない/登録申請しない理由
・登録申請しないことによる懸念はあるか
・インボイス導入後の経過措置について知っているか
・インボイス制度の導入後、今後についてどのように考えているか

それぞれの回答は以下のとおり。

問:登録申請するかどうか決めていない、または登録申請しない理由をお教えください(複数回答)

・課税売上高が1000万円以下だから…81.1%
・消費税納税の負担が生じるため…49.8%
・手続きやその後の事務作業が困難だから/費用がかかるから…35.8%
・登録するメリットがわからないから…28.9%
・登録申請しなくても売上や取引などに影響がないため…28.4%
・顧客が一般消費者のためインボイスの発行が不要だから…20.4%
・取引先や税理士から何も言われていないから…14.9%
・インボイス制度自体が本当に導入されるかわからないから…14.4%
・取引先がインボイス発行事業者でないので必要ないため…6.4%

問:登録申請しないことによる懸念はありますか?(複数回答)

・消費税分の値引き分、またはそれ以上売上が減るのではないか…43.3%
・経営が苦しくなるのではないか…28.4%
・取引先から取引を打ち切られるのではないか…27.9%
・新規の契約が得られないのではないか…26.9%
・特に懸念はない…35.8%

問:インボイス導入後の経過措置(※)についてご存じですか?

・知っている…41.3%
・なんとなく知っている…27.4%
・知らない…31.3%

※免税事業者との取引がある課税事業者は、免税事業者からの請求に対して6年間は仕入税額相当額の一定割合が控除可能

問:インボイス制度の導入後、今後についてどのようにお考えですか?

・免税事業者のまま、事業を続ける…53%
・取引先からの対応等により、インボイスを導入するか検討する…16%
・インボイス制度導入後に、廃業する・廃業を検討している…5%
・経過措置終了後に廃業を検討している…2%
・わからない/決めていない…23%
・その他…1%

インボイス制度の導入後は、「免税事業者のまま、事業を続ける」が過半数を上回った。「その他」と回答した人の中には、来年から課税事業者になる、法人化するという声もあった。

●取引先から「消費税相当分カット」を通達されたというケースも

また、取引先(請求書を受け取る側=買い手)から、インボイスに関してどのような対応があったかについて質問した。

「インボイス発行事業者の登録状況について確認があったか」と尋ねたところ、「あった」との回答が6割を超える結果となった。

問:取引先(請求書を受け取る側=買い手)から、インボイス発行事業者の登録状況について確認はありましたか?

・あった…64.2%
・なかった…31.3%
・わからない…4.5%

次に、「インボイス発行事業者の登録を求められたか」という問いには、「求められなかった」との回答が6割を超える結果となった。

問:取引先(請求書を受け取る側=買い手)から、インボイス発行事業者の登録を求められましたか?

・求められた…27%
・求められなかった…64%
・わからない…9%

「インボイス発行事業者登録をしない場合の、契約条件や価格に関する交渉」の有無については、「なかった」との答えが約75%となった。

問:取引先(請求書を受け取る側=買い手)から、インボイス発行事業者登録をしない場合の契約条件や価格に関する交渉はありましたか?

・あった…17.1%
・なかった…74.6%
・わからない…8.3%

「契約条件や価格に関する交渉があった」と答えた方に具体的な内容を聞いたところ、「消費税分の値引きを伝えられた」という声が多く寄せられ、中には「販売価格の値下げ」や「契約を打ち切ると言われた」という声も挙がった。

「契約条件や価格に関する交渉」に関する主な内容は以下のとおり(抜粋して紹介)。

・登録するかの判断はまかせるが、しない場合は消費税相当分はカット

・今までの「税抜価格」を「税込価格」にしてほしいと言われた

・インボイス登録しない場合は契約打ち切り

・登録しない場合、手続きが煩雑になるため手数料として報酬から10%引くことを検討していると通達された

・業務委託契約の報酬制度の変更

・販売サイトの卸価格を下げることになった

・当初は消費税分の全カットだったが、話し合いをして最初の3年間は消費税から2%引きとなった

●仕入先がインボイス発行事業者でない場合の対応を「決めていない」人が4割

次は、自身が買い手側の立場となった場合の、仕入先(請求書を発行する側=売り手)への対応についての質問も行った。

まず、「仕入先へインボイス発行事業者の登録状況について確認をしたか」を尋ねると、「していない」「しない予定」が6割を占め、「した」「する予定」は25%だった。

問:仕入先(請求書を発行する側=売り手)へ、インボイス発行事業者の登録状況について確認はしましたか?

・した…17.6%
・する予定…7.5%
・していない…52%
・しない予定…11.9%
・わからない/決めていない…11%

次に、「インボイス制度施行後、仕入先がインボイス発行事業者でない場合の対応」を聞くと、「わからない/決めていない」が4割を超える結果だった。

問:インボイス制度施行後、仕入先がインボイス発行事業者でない場合、どのように対応する予定ですか?

・わからない/決めていない…41.7%
・インボイスに登録しないので対応はしない…27.9%
・免税事業者でも、値引きすることなく取引を継続する…11.5%
・免税事業者でも、値引きに応じてもらえば取引を継続する…4.5%
・経過措置の間は取引を続ける…3.6%
・免税事業者とは取引を行わない/取引を減らしていく…3.2%
・インボイス発行事業者になるよう要請する…2.9%
・その他…4.7%

「その他」の内容を見ていくと、「仕入れ先がほとんどない」や「簡易課税を適用する」という声が多く挙がった

●インボイス制度「中止して欲しい」が約7割

最後に、「インボイス制度について、どのように考えるか」を伺ったところ、実に7割の人から「インボイス制度を中止して欲しい」という声が挙がり、「このまま進めて問題ない」(6.5%)を大きく上回った。

問:インボイス制度について、率直にどのようにお考えですか?

・インボイス制度を中止して欲しい…69.6%
・景気が上向き売上が上がるまで延期してほしい…10.8%
・わからない、関心がない…8.8%
・このまま進めて問題ない…6.5%
・その他…4.3%

上記回答について、具体的な意見についても伺った(以下抜粋)。

<「インボイス制度を中止して欲しい」と回答した人のご意見>

・売上が少ない事業者の税金を増やさないで欲しい

・免税事業者なのに、インボイス制度の導入で消費税分が増税になるのは納得がいかない

・インボイスを行うのに、この国はまだ早いと思う。せめて、行政の自動化、デジタル化をすすめ、可能な限り透明性があり納得感がある税の使い方を行ってからにすべき

・免税事業者がインボイスに登録しないことに対し、消費税分を「益税」と思わせるような表現、言い回しを使い、いかにも不正をしているように思わせるやり方が納得いかない

・登録事業者番号が無いのは、年商が明かされたのも同然。世間体ほか、取引企業からの対応など懸念している

・増税される分を価格転換できるような環境になく、さらに立場の弱い状態になりそう

・誰にも分かりやすいのが税の基本なのに、複雑すぎて対応も難しい。小さな事業をやってる人たちが廃業すれば、消えてしまう文化も技術も沢山あると思う。

・やることは増え納税義務は上がり収入は減る。良いことがないように思える

・インボイス制度自体は必要だと思うが、適格請求書発行事業者も免税される制度に変更してほしい

・インボイス導入により、零細企業やフリーランスの倒産や廃業が増加すると予想している。増税と物価高の上、弱い立場にある人たちをこれ以上苦しめるような政策はやめてほしい

ーーーーーーーーーーー
<「景気が上向き売上が上がるまで延期してほしい」と回答した人のご意見>

・景気の減退要素にしかならない

・まずは物価高など問題の解決、消費税制の矛盾を解決をしてから初めて導入を検討するべきかと思う

・業界により免税事業者の有無が産まれるのは公平ではなく、この不景気にモチベーションは下がる一方。やるなら免税を無くすところまでやって欲しい

・年収によって軽減させてあげればいいのにと思う

ーーーーーーーーーーー
<「このまま進めて問題ない」と回答した人のご意見>

・自身も仕入れ先もすべて消費税納税事業者なので、何も変化はない

・益税自体が非常におかしなことだったので、この制度は当たり前と思う

・制度の施行は良いので、具体的に業務フローをレクチャーするセミナーなり、相談所を設けるべき。国の説明不足を感じる

・会計上のルールがそう決まったのであれば、それに沿って事業するのが良いと思う
ーーーーーーーーーーー
なお、回答者が該当する業種については以下のとおり。

・IT・インターネット…14.6%
・建設・建築…12.4%
・流通・小売…7.7%
・情報・マスコミ…5.6%
・運輸・物流…4.1%
・不動産…3.6%
・製造…3.2%
・教育…3.2%
・美容…2.7%
・飲食…2%
・医療・福祉…1.6%
・金融…1.1%
・農業…1.1%
・イラストレーター…0.9%
・旅行・ホテル…0.5%
・アミューズメント・レジャー…0.5%
・クリエイター…0.5%
・アニメイター…0.5%
・その他サービス業…25.9%
・その他(カメラマン、デザイナー、声優、同人作家など)…8.3%

●制度導入には個人事業主の不安解消がなにより重要

なお、「登録申請」以外で進めているインボイス対応について聞いたところ、「特に何もしていない」が5割を超え、「インボイス登録番号を反映した請求書の作成」が約25%と続いた。

問:インボイス制度について、以下の中で進めている対応はありますか?(複数回答)

・特に何もしていない…56.3%
・インボイス登録番号を反映した請求書の作成…24.3%
・インボイス制度に対応したクラウドツールの導入…18.7%
・税理士への業務の依頼…12.8%
・経費を使う際のルールの見直し…8.3%
・免税事業者からの請求書・領収書などの計上ルールの見直し…7.4%
・事務作業負担に伴う人材の確保…1.1%

こちらのアンケートは9月中旬、インボイス制度開始まであとわずかという状況下で行われた。結果、インボイス登録申請済みの個人事業主は3割にとどまり、登録申請するか決めていない・登録するつもりはない人が4割以上いることがわかった。

登録に踏み切れないのは、免税事業者であることを理由に挙げる声が8割と最も多く、消費税納税の負担が生じることや、手続きや事務作業が困難であることを理由とする声も多かった。

また、登録した・登録を予定している人の中でも、登録しないと仕事が減るのではないかという不安を抱えている人も一定数いた。

免税事業者であることが多い個人事業主やフリーランスが、あえて課税事業者へ転嫁しインボイス導入するためには、こうした不安の解消がなにより重要となりそうだ。

※アンケート実施期間:2023年9月15日〜9月21日、調査方法:税理士ドットコムに登録のある個人事業主に対しインターネットで実施、有効回答数:444

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