「7万円の和牛ステーキ」接待が話題 企業の「交際費」は税務上、やりたい放題?
計上

総務省を中心とした接待問題が大きな話題になっている。例えば、山田真貴子・元内閣広報官は、総務審議官だった2019年に、東北新社に勤める菅首相の長男らから、1人7万円の和牛ステーキや海鮮料理などの接待を受けていた。
接待された側の話に注目が集まりがちだが、一般論として、接待費は企業内でどう処理されているのか。多くなればなるほど、節税につながるのか。冨田建税理士に聞いた。
●損金として計上できるのは一定限度額まで
接待などの交際費はどのような扱いになるのか。
「企業の支払う取引先との宴会・贈答品等、『今後の売上獲得のための付き合いの負担』等である交際費は、決算上では『稼ぎの獲得のための犠牲』ですから費用として計上すべきです。
しかし、交際費を無尽蔵に『税金計算上の経費』、つまり、『損金』として認めると『税金を多く払う位なら、自分達の宴会に好き勝手に使った方がよい』と考える企業も現れます。
これでは真面目に頑張っている企業と比べ不公平ですので、交際費は決算上では費用と扱う一方で税金計算上では『損金として計上できるのは一定限度額まで』とされ、限度額を超える部分は、決算上の稼ぎから税務上の稼ぎを計算するための調整項目の一つとされます。
実は、『法人の決算上の稼ぎに一定の調整をして税金計算上の稼ぎを算出し、法人税等の税額を計算したもの』こそが法人税申告書なのです。ですので、法人の交際費の調整は法人税申告書上でなされます」
●損金算入できる限度額は企業規模で異なる
限度額はどう決まるのか。
「『期末の資本金の額又は出資金の額が1億円以下である等の法人』か否かで扱いが異なり、該当する法人の1年分の申告の場合は800万円以下であれば全額損金にできる一方で、該当しない法人は一定の算式で計算された額は損金算入できない等、損金算入できる限度額は企業規模で異なります。
また、中には交際費と言えるかが微妙な支出もありますので、迷ったら税理士に相談するとよいでしょう」
今回の接待問題をどう考えているか。
「東北新社が適切に交際費として計上し申告したならば、『税務上の観点』からは問題はありません。また、会社が負担する交際費とするかは内規に基づき処理する事が通常でしょう。
もっとも、税法的には適切でも、社会的に許されるかは別問題。このような不祥事は厳しく糾弾されるべきでしょう。
ただ、それを政争の具として政治を停滞させる事も問題です。有権者としては、不祥事に目を光らせつつも、存在アピールのために過剰に囃し立て他では何の貢献もできていない一部の議員にも厳しい目を向けるべきでしょう」
【取材協力税理士】
冨田 建 (とみた・けん)税理士・不動産鑑定士・公認会計士
43都道府県で不動産鑑定業務を経験し各種財務・税務・裁判関連の不動産鑑定に関与。著書「弁護士・公認会計士・税理士のための不動産の法令・評価の実務Q&A」や各種媒体に執筆。公認会計士協会東京会第四回音楽祭で自作曲で優勝。
事務所名 :冨田会計・不動産鑑定㈱/冨田 建 不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所
事務所URL:http://www.tomitacparea.co.jp