業績不振でやむなくリストラ…退職金はどう計上するのがベスト?
経理・決算

役員や従業員の退職に伴い退職金が発生する場合、企業にとっては多額のキャッシュアウトとなるため、どのように計上するかが重要だ。役員退職金はイレギュラーな損失と見なされるため、原則「特別損失」として計上できるが、従業員の退職金に関しては通常「販売費及び一般管理費」で計上する。
ただし、臨時発生した従業員の退職金に関しては、企業によって計上の仕方が異なるようだ。
2023年6月に人員削減を発表したクックパッドは、対象者には特別退職金を支給し、2023年12月期第2四半期の決算で、営業損失を3億5000万円計上する見込みだという。
一方、男性化粧品大手のマンダムは、早期退職制度の利用者への割増退職金などの費用として、2023年3月期の連結決算で特別損失約6億円を計上。2022年にフジテレビが早期退職者を募った際には、特別損失として約90億円を計上している。
業績不振でやむなく人員削減を行う際に、退職金はどのように計上するべきなのだろうか。蝦名和広税理士に聞いた。
●臨時で発生する退職金は原則「特別損失」で計上
まず従業員の退職金は企業会計上、一般的には「販売費及び一般管理費」に計上されますので、「営業損益及び経常損益」に反映することになります。
しかしながら、業績不振による解雇・勧奨退職に伴う特別退職金や割増退職金は、臨時・多額なものとなりますから、これを「販売費及び一般管理費」に計上しますと、「営業損益及び経常損益」が著しく悪化してしまいます。
これにより損益計算書の期間比較が損なわれ、ステークホルダーの判断を誤らせてしまう可能性がありますので、企業会計上「特別損失」として計上し、「営業損益及び経常損益」に影響させないのが望ましいものと考えられます。
●「営業損失」で計上すると融資に不利になる場合も
たとえば金融機関が財務諸表を融資審査に利用する場合は、「営業損益及び経常損益」を重視しますので、これが外形上著しく悪化すると審査に影響を与える可能性があります。
退職金を「特別損失」に計上することで、「営業損益及び経常損益」を悪化させず、融資審査が有利に働く可能性をもたせることができます。
このような観点からも、臨時的に発生する退職金は「特別損失」として計上するのが望ましいものと考えられます。
【取材協力税理士】
蝦名 和広(えびな かずひろ)税理士
特定社会保険労務士・海事代理士・行政書士。北海学園大学経済学部卒業。札幌市西区で開業、税務、労務、新設法人支援まで、幅広くクライアントをサポート。趣味はジョギング、一児のパパ。
事務所名 :Aimパートナーズ総合会計事務所
事務所URL:https://office-ebina.com