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自動車「走行税」は本当に導入されるのか…警察が「課税逃れ」を確認する国も

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自動車「走行税」は本当に導入されるのか…警察が「課税逃れ」を確認する国も
写真はイメージ(YsPhoto / PIXTA)

2018年の年末に議論が急浮上した「走行税」ですが、2019(平成31)年度の税制改正大綱では見送られました。そのため、2020(令和2)年度の税制改正大綱での動向が注目されましたが、結局、今回も見送られ、前回と同様「課税のあり方について中長期的な視点に立って検討を行う」との表現にとどまりました。

しかし、ハイブリッド車、電気自動車、燃料電池自動車などの普及により、石油にかかる税収は、今後益々減少するものと思われます。そのことから、走行税については再び議論がなされることでしょう。果たして、近い将来、走行税は導入されるのでしょうか。(ライター・メタルスライム)

●自動車にかかる税金はこんなにも

自動車には、様々なタイミングで税金が課されています。現在の自動車(軽自動車以外の自家用乗用車)にかかる課税の状況については次のとおりです。

【購入時に支払う税金】
 ・消費税(10%)
 ・環境性能割(環境性能に応じて定められた0〜3%)
 ・自動車重量税(環境性能や重量の区分に応じて定められた0円〜73,800円の額)

【毎年支払う税金】
 ・自動車税(排気量の区分に応じて定められた25,000円〜110,000円の額)

【燃料購入時に支払う税金】
 ①ガソリンの場合
  石油石炭税(2.8円/l)
  揮発油税(本則税率:24.3円/l + 特例税率:24.3円/l = 48.6円/l)
  地方揮発油税(本則税率:4.4円/l + 特例税率:0.8円/l = 5.2円/l)
  消費税(10%)税金に対しても課税
  例:150円/l の場合、80円位がガソリン本体の値段で70円は税金

 ②ディーゼルの場合
  石油石炭税(2.8円/l)
  軽油取引税(本則税率:15円/l+ 特例税率:17.1円/l=32.1円/l)
  消費税(10%)
  例:120円/l の場合、77円位が軽油本体の値段で43円は税金

【車検時に支払う税金】
 ・自動車重量税(環境性能や重量の区分に応じて定められた0円〜75,600円の額)

以上のとおり、いかに多くの税金が自動車の所有者に課されているかがわかると思います。

●自動車業界の大変革期、税収減が避けられない状況に

自動車にかかる税金は、前述のとおり、自動車の購入時、保有時、燃料購入時、車検時に発生します。ところが、都心部では駐車場代が高く、鉄道などの交通網が整備されているため、最近は、カーシェアリングが広がりを見せています。

カーシェアリングは、車一台を複数人で共有することになるため、車の登録台数が減少することになります。車の数が減れば、購入時の税収(消費税、環境性能割、自動車重量税)が減り、また、保有している間の税収(自動車税)も減ります。

さらに、低燃費車やハイブリッド車の普及により、石油からの税収も減少してきています。電気自動車(EV車)に至っては、石油からの税収は0になっています。

100年に1度の変革期と言われる自動車業界において、利用者が車を取得し、ガソリンで動く車を基準に制度設計がされている現在の税体系では、大幅な税収減が避けられない状況になっています。そのため、政府は走行距離に応じて課税する「走行税」を導入できないか検討をはじめているわけです。

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●走行税推進派の見解「電気自動車の普及などで不公平になる」

石油連盟は、石油関連税制を廃止して、走行税を導入することを経済産業省に要請しています。その理由としては、電気自動車などが普及することが見込まれる中、内燃機関で走る車と課税の公平性を欠くからとしています。

本音としては、走行税の導入によってガソリンにかかる税金を廃止できればガソリンの販売価格を下げることができ、消費量の減少に歯止めを掛けることができると考えているのでしょう。

政府も自動車関連の税収の落ち込みは何とかして解消したいと考えており、車に関する社会状況の変化に伴い、税制のあり方も変えていく必要があるとしています。

●諸外国の状況:ドイツではGPSと車載センサーで計測

欧州では、2001年のスイスを皮切りに、オーストリア、ドイツ、チェコ、ポルトガル、スロバキア、ポーランド、ハンガリー、フランス、ベルギーで重量貨物車を対象に走行距離等に応じた課税がなされています。アメリカではオレゴン州、カリフォルニア州、デラウエア州、ワシントン州などで実証実験が行われています。なお、ニュージーランドは走行税を既に導入しています。

スイスの場合、車にレコーダーを設置して、事後的に申告させる方法をとっています。虚偽申告した場合、罰金が課されます。ドイツも車載器を設置して、GPSと車載センサーで計測する仕組みとなっています。無線通信で走行距離情報が収集され、納税通知書が送られてきます。

アメリカのオレゴン州も、ドイツとほぼ同じで専用の装置を設置して、無線通信で情報が収集され、納税通知書が送られてきます。車載器未設置や細工をした場合には罰金が課せられます。

ニュージーランドは、1000キロ単位で事前にお金を支払い、発行されたステッカーを貼るというものです。警察は、ステッカーの数字と走行距離の数字を確認して課税逃れをしていないか確認します。違反した場合には罰金が課せられます。

●走行税を導入する場合の3つの問題点

(1)プライバシー侵害の危険

走行税を課すためには走行距離を把握することが必要になります。GPSにより走行距離を把握する方法が最も正確で課税逃れを防ぐことができますが、この方法の場合、個人の自動車での行動が全て政府に管理されてしまいます。これは、プライバシー保護の観点から反発を招くでしょう。

ドイツでは、GPSにより管理が行われていますが、これは貨物自動車に限定しており、プライバシーはあまり問題になりません。もし日本で導入するとすれば、ニュージーランドのように事前にお金を支払い、ステッカーを貼る方式か、車検時に走行距離を確認して課税する方式になるのではないでしょうか。

(2)地域格差が生まれる

都市部では、土日しか車に乗らないという人も多いので、走行税の実施に伴い自動車税が廃止されるのであれば、税負担が軽減する可能性があります。しかし、地方の場合、公共交通機関が少なく生活に車が欠かせません。地方では車を毎日乗る人も多いので、走行距離も多くなります。そうすると、地方に住む人の税負担が増えることになります。

(3)運送料金の値上げ

タクシーや長距離トラックの場合、一般家庭の自動車と比べて走行距離が多いので、走行税が課せられるようになると、税率にもよりますが納税負担が増える可能性があります。ただでさえ、人手不足により運送料金が値上がりしているのに、走行税まで課せられると運送料金の値上げにつながるかもしれません。

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●思い切って、消費税以外のすべてを廃止してみてはどうか

導入推進派は、ハイブリッド車、電気自動車の普及により、ガソリンをあまり使わなくなり、これらの車は税負担が少なく税の公平が保てないから走行税を導入すべきという論調です。しかし、日本では環境に配慮した車を普及させるべくエコカー減税など、環境に配慮した車の税負担を軽減してきました。そのことからすると、走行税の導入はエコカー推進に逆行するものと言えます。税は同じ条件の下では平等に扱う必要はありますが、条件が違えば課税に差異が生じることはいくらでもあることです。

そもそも、自動車は、購入時、保有時、利用時、車検時と多くの税負担を課されています。その理由は、自動車を利用する者は、道路などを利用するのだから、道路の建設や補修費用を負担すべきだからということです。そのため、かつては受益者負担の原則に基づき「道路特定財源制度」で運用されていました。要するに、車の税金で道路を作ったり、補修したりしてきたわけです。

ところが、高度成長期を終え、道路が整備されるようになると、道路特定財源が余るようになり、無駄な補修工事を行ったり、国交省の職員旅行に利用されたりというような不正が明るみになりました。そのため、道路特定財源制度は廃止になり、一般財源となりました。一般財源になったということは、我々が払っている自動車税やガソリン税はもはや道路を整備するためだけではなく、「桜を見る会」の5,200万円の費用にもなっているわけです。

既に、道路はある程度整備され、もはや自動車の所有者が税負担する意味はなくなっています。道路の受益は、自動車所有者だけでなく、物流も含めた輸送サービスを利用する国民全体で負担すべきものと言えます。国の財政が厳しいとは言え、一度手にした税収は死守するというスタンスではなく、思い切って、自動車に関係する税金は消費税以外すべて廃止するという思い切った政策も有効なのではないでしょうか。

そうすれば、若者の車離れが叫ばれる中、少しは車を買おうという動きに繋がるかもしれません。また、ガソリン価格が安くなれば、レジャーなどに出かける人が増え、地方の経済が活性化します。車に関する税収は下がったとしても、結果的に、社会全体の景気がよくなれば、税収も上がるはずです。財務省には目先の税収ばかり負うのではなく、景気回復による税収増になるためにはどうすべきなのかを考えて欲しいものです。

もっとも、一気に全ての自動車関連税を廃止することは実際には難しいでしょうから、まずは自動車税と燃料にかかる特例税率(暫定税率)を廃止し、走行税に一本化するというのが現実的なところかもしれません。その場合でも、「10,000kmで3万円」程度に抑えるべきだと思います。

<参考資料>
環境省「平成31年度税制改正大綱における車体課税等の見直しについて」
http://www.env.go.jp/policy/%E2%98%86shiryou2.pdf

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