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「単一税率が世界の潮流、なぜ日本は逆行するのか」青学・三木学長、軽減税率を斬る

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「単一税率が世界の潮流、なぜ日本は逆行するのか」青学・三木学長、軽減税率を斬る
青山学院大学の三木義一学長

10月1日の消費増税に合わせて、軽減税率制度が導入されます。飲食料品と新聞の税率を8%に据え置くという内容ですが、「外食は10%だけど、テイクアウトは8%」など複雑すぎる線引きに混乱が予想されます。租税法の専門家で、民間税制調査会のメンバーも務める、青山学院大学の三木義一学長は、「最近消費税を導入する国々の潮流が単一税率になっている今、複数税率にするのは時代に逆行している。新聞と食品だけ軽減税率が適用されることもおかしい」と指摘します。軽減税率制度は何が問題なのか聞きました。(ライター・国分瑠衣子)

●軽減税率で逆進性を緩和するのは無理

――「軽減税率は、線引きが分かりにくい」という声が多く上がっています。

恐らく10月は、大混乱になるでしょう。大きなトラブルが起こった場合は、訴訟になるリスクもあります。これまでずっと主張してきましたが、一体何のために軽減税率を入れるのですか。公明党は「逆進性の緩和のため」と主張します。ですが、逆進性は軽減税率では緩和されません。気持ち程度の緩和はあるかもしれませんが、根本的な解決方法にはならない。世界でも「軽減税率で逆進性を緩和するのは無理」ということで一致しています。

ヨーロッパがなぜ複数税率を取っているかというと、消費税導入以前に売上税等の間接税があり、それが不合理な負担を生み出していたので、その代替として付加価値税が導入されました。ただ、導入時の税率の引き上げなどの政治的な駆け引きの結果、軽減税率が導入されただけで、合理性があるわけではありません。現在では、どの国もこの制度をできるだけ簡素化したいのです。

近年消費税を導入している国々は「単一税率にしよう」というのが常識です。区別をめぐる不合理なトラブルを避けられるからです。日本はここまで単一税率で頑張ってきたのに、なぜここにきて軽減税率を導入してしまうのか非常に残念です。軽減税率という税制ではなく、税収の配分や使い道、低所得者に配慮する仕組みを作るほうが効率的です。

――複数税率はなぜダメなのですか。

区分が不透明だからです。世の中にはさまざまなモノやサービスがあるので、複雑になってしまいます。日本には昔、ぜいたく品に課税する「物品税」という税金がありました。なぜなくなったか分かりますか。物品税では、コーヒーは課税対象で、紅茶は対象外でした。サーフボードは課税されましたが、スキー用品はされなかった。でも、どちらがぜいたく品なのかという判断は、個人によって異なるので、一概には言えません。そこで「もっと分かりやすくしよう」ということで、全ての資産譲渡が課税対象になったのです。

ぜいたく品の線引きが難しいから消費税に変えたのに、今回の軽減税率は、また「大衆品を安くします」という発想でしょう。人間社会は2、30年ごとに同じことを繰り返すなぁ、とむなしくなります。

●「税で票を買う政治」にならないか

――なぜ飲食料品と新聞だけが適用されたのか、と疑問の声もあります。

最初、軽減税率は導入しないとされていたので、業界団体が陳情しても税が安くなる見込みはありませんでした。ところが、飲食料品と新聞が入った。

新聞は、軽減税率の導入が決まるまで、問題点を積極的に報道しませんでした。新聞が(軽減税率の適用対象に)こっそり入った、という印象を受けます。私は、これは日本のマスコミとして恥ずべきことだ、と今でも思っています。自分たちがそのようなことをやっていて、政府に正義を求めるなどおかしいと思いませんか。

新聞購読料が上がれば、読者が減るのではと心配だったのかもしれませんが、そもそも紙の新聞を読む人が減っているのに紙は8%、デジタル版は10%。どう考えてもおかしいですよね。

飲食料品の他にも、医療や公共交通機関など、生活に必要なモノやサービスがあります。軽減税率の適用を受けるために、業界団体が与党に陳情して、政治献金し最後は票と引き換えに適用を受ける。戦後日本で繰り返されてきた、「税で票を買う」という、あさましい政治が復活してしまうのではないかと危惧しています。人間は進歩しないなあ、と思います。

消費増税後のキャッシュレス・ポイント還元も、どう買えば得かという話になってしまっています。消費者の負担感を減らすためなのかもしれませんが、コストだけがかかり、何のために税率を引き上げたのか分かりません。

●人間がつくった制度は変えられる

――2023年から複数税率に対応するため導入される「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)では、消費者が払った消費税が、納税されないまま中小・零細事業者の手元に残る「益税問題」を解決するためには有効だと言われています。

益税は制度上の矛盾点はありますが、負担を軽くするための特例があったからこそ中小・零細企業でも消費税に耐えて経営を続けることができました。インボイス制度が導入されると、支払いに窮する業者がたくさん出てくるのではないでしょうか。

――軽減税率について財務省は「恒久的な措置」と説明しています。見直すことはできますか。

人間がつくった制度なので、変えられないということはありません。ただ、これまでかけたコストが全て無駄になります。消費税をどうしていくかは、政治の問題です。2020年のアメリカの大統領選挙で、民主党候補指名を目指す、エリザベス・ウォーレン上院議員が富裕税導入を提案しています。日本でもこのような政治家や政党が現れ、政権を取れば、消費税は抑えられると思います。

それと日本はもっと、税率を引き上げた効果が目に見えるようにしたほうがいい。北欧は税率が高いですが、医療費が無料など恩恵も分かりやすくなっています。日本は、生活のどの部分に役立っているのかが分かりにくく、「低所得者だけが優遇されている」という錯覚に陥りやすい。誤解した人が弱い者いじめをする社会になってしまっています。

そもそも、日本は国民への税教育が不十分です。歳出が100兆円を超えているのに、税収が60兆円しかないという状態がいつまでも続くとは思えません。国民がおかしいと思った制度は、選挙に行き、変えていかなければなりません。政策を考える議員も、投票する国民も税についてもっと勉強が必要です。国民一人一人が政治家になったつもりで、税金の使い道を考えてほしいと思います。

【プロフィール】三木義一(みき・よしかず)青山学院大学長、弁護士、専門は税法等。

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