電車の音も線路の石も販売 銚子電鉄の「自虐ネタ商法」、コロナ禍でますます加速
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千葉県銚子市を走るローカル鉄道「銚子電鉄」が、新型コロナウイルスの影響で観光客が激減、「かつてないほどの経営危機」(竹本勝紀社長)に陥っている。6月24日現在も電車は間引き運転を余儀なくされているが、副業では得意の自虐ネタを駆使して、笑いを誘う新商品を連発している。(ライター・国分瑠衣子)
前編:『「お先真っ暗」自虐ネタ満載の銚子電鉄が潰れないワケ 顧問税理士から転身、竹本社長が描いた「弱者戦略」』はこちら
●賞味期限切れ間近の「まずい棒」3日で完売
「【賞味期限迫る! 1700袋早いもの勝ち】『まずい棒』が在庫の山…。本当にまずい。ポチっと一袋お願いします」。政府の緊急事態宣言が出され観光客が減った4月14日、銚子電鉄の公式ツイッターにこんなつぶやきが上がった。
【賞味期限迫る!!1,700袋!早いもの勝ち】天災、疫病・・・想定外の出来事で『まずい棒』が在庫の山・・・本当にまずい。ポチっと一袋お願いします(涙)takemoto →https://t.co/GS3rwlefOz #銚子電鉄 #銚電 #まずい棒 #コーンポタージュ味 #チーズ味 #ぬれ煎餅味 pic.twitter.com/0eKfF4z6lG
— 銚子電鉄(公式) (@choden_inubou) April 14, 2020
まずい棒とはスナック菓子で、経営状況が「まずい」という自虐ネタを絡め、2018年8月3日(破産の日)に発売した。これまでに約200万本を売り上げた銚電のヒット商品の一つだ。しかし、新型コロナウイルスの影響で客足が途絶え、まずい棒は大量の在庫が残り、賞味期限が近づいてきていた。従業員が何とかしようとツイッターで発信したところ、多くの人から応援メッセージが寄せられ、1袋15本入りのまずい棒は3日で完売した。
同社はまずい棒をぬれ煎餅に次ぐヒット商品に育てようとしている。発売当初は「コーンポタージュ味」のみだったが、「チーズ味」や「ぬれ煎餅味」「スーパーまずい棒(炭火地鶏味)」と種類も増えた。
さらに今年10月からは新たに「わさび味」も発売する予定だ。新商品投入の経緯について、同社のホームページには「車両の老朽化も激しく、サビついた車体を見て思わず『わ、、錆(さび)・・・!』と声をあげたことをきっかけに『わさび味』の販売に踏み切ることにいたしました」とお約束の自虐ネタを忘れない。
「まずい棒」は10月にわさび味が加わる。写真はコーンポタージュ味
●春なのにストール投入 「人間関係に『穴』があきます」
コロナ禍でも銚子電鉄は自虐商品を開発した。4月、竹本社長はオンライショップの動画で「われわれはアパレル業界に進出します」と発表した。投入したアイテムは、なぜか春なのにアクリル100%のストール(3,000円、税込み)。タータンチェックのストールを広げるとハート形の穴が5つあいている。
穴あきストール(銚子電鉄HPより)をアピールする銚子電鉄の竹本勝紀社長
商品説明には「経営に穴があいている、というわけではございませんが…」、「穴あき(アナーキー)な一枚です」などとまたも自虐ネタだ。ストールの巻き方を説明した動画を見ると、ハート形の穴に両手を入れて羽織れるようだ。販売ページには「大切な方には決してプレゼントしないでください。人間関係に穴が開く恐れがあります」と書かれている。
竹本社長は「とにかく失敗や批判を恐れずに商品開発しています。春は地元企業の落花生やイワシの銚子煮などを詰め合わせた『家呑みセット』などが売れました」と話す。ツイッターをきっかけに、まずい棒も順調に売れるようになり、6月のネット販売の売上高は約3週間で1000万円を突破した。コロナ禍以前は1カ月の売り上げは50~100万円程度だったので、大きく伸びた。
●めがね拭きから線路の石まで「売れるものはなんでも売ろう」
さらに「売れるものはなんでも売ろう」と、コロナ禍に出した「お先真っ暗セット」(完売)は、サングラスやめがね拭き、キーホルダーを組み合わせた。セットはイベントなどで販売を予定していたが、新型コロナの影響でイベントが中止になったために、インターネットでセット販売したという。ローカル線のえちごトキめき鉄道と天竜浜名湖鉄道とコラボし、線路の石まで缶詰にして売り出した。
サングラスなどが入った「お先真っ暗セット」(銚子電鉄HPより)
線路の石まで販売したことも(銚子電鉄HPより)
そして驚くことに銚子電鉄は「音」まで売っている。電車の走行音や「プシュー」というドアの開閉音、発車ベルに警笛、車内放送などなど、それぞれ110円でダウンロードすれば、いつでも銚子電鉄を身近に感じることができる。車内の中づり広告でも「売るものがなくなってきたので 音売ります」とPRしている。
コロナ禍による経営危機をも自虐パワーで乗り越えようとする銚子電鉄。これからどんな商品が出てくるのか待ち遠しい。