米アップル株の売却益無申告で「9100万円脱税」 ペナルティはどうなる?
確定申告

関東信越国税局は6月27日、栃木県小山市の無職男性(58歳)が、2021年に米アップル株を売却して得た利益6億900万円を申告せず、所得税約9100万円を脱税したとして、所得税法違反の疑いで刑事告発した。
男性が米アップル株を購入したのは20年以上前で、得た利益は新たな株の購入資金にあてたという。購入時期が2003年である場合、売却時の株価は実に450倍以上も上昇したとみられている。
申告せず税金を納めなかったことはさておき、ネット上では「20年に渡ってガチホ(ガチでホールド)は凄い」「長期投資の破壊力」などの反応があがっている。
売却益が6億円もあるならば、9000万円の税金を支払えば済む話と思うのが心情だが、そもそも株の売却益があった際に確定申告が必要になるのはどのようなケースなのか、またペナルティはどうなるのだろうか。田邊美佳税理士に聞いた。
●「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」は自身で申告・納税が必要
ーー株の売却益があった際、所得税15.315%+住民税5%がかかりますが、確定申告が必要になるのはどのようなケースでしょうか。
株式投資を行う際、証券会社で口座開設を行いますが、この時、「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」のいずれかを選択することになります。
「特定口座(源泉徴収あり)」を選択すると、株式を売却して利益が出た場合、証券会社が税金を徴収し、代わりに納付してくれるため、自分で確定申告を行う必要はありません。
しかし同じ特定口座でも源泉徴収なしの口座を選んでしまうと、証券会社が売買取引の損益計算を行ってくれるものの、利益が出ても税金を差し引いてくれないため、自分で確定申告を行う必要があります。
また、一般口座を選んだ場合、自分自身で売買取引について損益計算を行い、確定申告を行わなくてはなりません。
複数の証券口座を保有している場合、一般口座と特定口座のどちらも利用していることがありますが、これらの口座の違いが分からないまま取引をしてしまった方や、特定口座だと勘違いしてうっかり一般口座で取引をしてしまい確定申告を忘れてしまった方は一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
私自身、源泉徴収ありの特定口座だと思っていたら、実は一般口座であったということに気付いて、慌てて確定申告をしたという苦い経験があります。
●無申告課税・延滞税、場合によっては40%の重加算税が課せられる可能性が
ーー無申告の場合、どのようなペナルティが科せられるのでしょうか。
無申告の場合は、ペナルティとして無申告加算税と延滞税が課されることになります。無申告加算税は税額50万円までが15%、50万円超の部分が20%のため、約1817万円となります。延滞税は令和4年以降は2.4%〜となっており、納税のタイミングにもよりますが、少なくとも300万円弱の納税が必要になるかと思います。
なお、刑事告発につながる悪質な脱税の場合で、仮装・隠蔽したと認められる場合には、無申告加算税に代えて、重加算税40%が課税されるため、ペナルティの額が更に増えることになります。
株式取引は必ず源泉徴収されると思い込んでいる方もいらっしゃるかと思いますので、取引を行う際はご自身の口座の種類を確かめるようにして下さい。
【取材協力税理士】
田邊美佳(たなべ・みか)税理士
オネスタ税務会計事務所所長。公認会計士・税理士・行政書士・ファイナンシャルプランナー。相続税申告、生前対策業務に特化。国際相続案件にも対応可能。
事務所名 : オネスタ税務会計事務所
事務所URL:https://onesta-tax.com/