不動産節税の終焉で「一時払い終身保険」へ回帰か。非課税枠を最大化する活用法と契約時の注意点を解説
相続税
2024年に区分所有不動産、2026年に貸付用不動産の相続税評価方法の見直しが図られ、マンション等を活用した節税スキームは、その効果が大きく抑制されることとなった。かつての「節税の王道」が封じられるなか、資産防衛に敏感な富裕層の間で、「一時払い終身保険」への回帰が見られる。
毎日新聞の報道によると、日本生命の一時払い終身保険「マイステージ」は、25年度上期(4〜9月)の販売件数は約9万8700件と、20年度上期比で50倍に増加したという。
一時払い終身保険とは、契約時に保険料を一括で支払い、被保険者が亡くなった際に死亡保険金を受け取れる仕組みだ。
長らく続いた低金利環境下では「利回りの低さ」がネックとなっていたが、昨今の金利上昇を受け、大手生保各社は予定利率を相次いで引き上げている。以下は直近の改定例だ。
・朝日生命…予定利率1.25%→1.75%(2026年1月2日改定)
・かんぽ生命…予定利率1.25%→1.75%(2026年1月2日改定)
・住友生命…予定利率1.30%→1.75%(2025 年7月1日改定)
・日本生命……予定利率1.00%→1.50%(2025 年9月1日改定)
例えば住友生命の試算では、60歳男性・保険金額1,000万円の場合、保険料は731万3,100円(改定前803万3,400円)となり、以前より約9%も低く抑えられている。予定利率の引上げにより、保険としての「貯蓄性」が目に見えて向上しているのだ。
また、税務面でのメリットも無視できない。死亡保険金には「500万円✕法定相続人の数」の非課税枠が認められており、相続財産に算入しなくてよい。つまり、現預金を保険へ組み替えるだけで、相続税の課税対象となる遺産総額をダイレクトに圧縮できる。
不動産節税が厳格化し、金利が動く今、一時払い終身保険をどう戦略的に活用すべきか。その基本と注意点について、田邊美佳税理士に聞いた。
●相続税対策として活用する際には契約形態に注意が必要
ーー相続税対策として一時払い終身保険を活用する際に、どのように契約(契約者・被保険者・受取人)をすればいいのでしょうか。
相続税対策として保険を活用する場合には、非課税枠を使える状態にする必要があります。そのため、「契約者(保険料負担者)=被相続人、被保険者=被相続人、受取人=法定相続人」という契約形態で加入することが重要です。
●生命保険金の非課税枠は、受取人ではなく「法定相続人の数」で計算される
ーーもし法定相続人が妻・子ども2人の3名の場合、生命保険金の非課税枠は1500万円ですが、二次相続を考え、受取人をそれぞれ子どもにした保険に加入した場合、非課税枠に変化はあるのでしょうか。
非課税枠は「500万円✕法定相続人の数」で計算され、受取人ごとではなく保険金全体で判定されます。したがって、受取人を子ども2人にした場合でも、法定相続人が3人であれば非課税枠は1,500万円のままで変わりません。
仮に子ども2人が750万円ずつ保険金を受け取った場合には、受け取った割合に応じて非課税枠が適用されるため、それぞれ750万円が非課税となり、結果として全額が非課税となります。
なお、受取人を配偶者としているケースも多く見られます。配偶者には「税額軽減の特例(※)」がある一方で、財産が集中すると二次相続時の税負担が重くなる場合があります。そのため、相続税対策という観点では死亡保険金の受取人を子どもとすることも有効です。
※配偶者が相続した財産額について、「1億6,000万円」「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までは相続税はかからない制度
●生命保険金の非課税枠は相続人以外を受取人にすると適用できない
ーーその他、生命保険金の非課税枠を活用する際の注意点などがあればお教えください。
生命保険金の非課税枠は相続人に限られるため、相続人以外を受取人にすると適用できません。
例えば孫を受取人とするケースもありますが、孫は原則として相続人ではないため非課税枠は使えず、さらに「相続税の2割加算」の対象となる点に注意が必要です。
また、相続放棄をした場合、死亡保険金を受け取ることはできますが、非課税枠の適用対象とはならないため、全額が課税対象となります。
さらに注意が必要なのが個人年金保険です。年金受取開始前に亡くなれば死亡給付金として非課税枠の対象となります。ただし、一度でも年金を受け取ると「年金受給権の相続」となり、非課税枠は使えず全額課税対象となります。
個人年金を非課税枠が使える死亡保険金として説明を受けて契約されているケースも見られますが、受取開始のタイミング次第で課税関係が大きく変わるため、特に注意が必要です。
【取材協力税理士】
田邊美佳(たなべ・みか)税理士
オネスタ税務会計事務所所長。公認会計士・税理士・行政書士・ファイナンシャルプランナー。相続税申告、生前対策業務に特化。国際相続案件にも対応可能。
事務所名 : オネスタ税務会計事務所
事務所URL:https://onesta-tax.com/















