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未婚ひとり親にも寡婦控除「家族観めぐる法制度が変わるきっかけに」 積み重ねた活動の軌跡

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未婚ひとり親にも寡婦控除「家族観めぐる法制度が変わるきっかけに」 積み重ねた活動の軌跡
「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長

2020年度の税制改正大綱には、未婚のひとり親にも「寡婦(寡夫)控除」が適用されることが盛り込まれました。年間所得500万円以下なら未婚のひとり親も、配偶者と離婚、死別した人と同等に所得控除が受けられる内容です。

適用を訴えてきた認定NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の赤石千衣子理事長は、「これまで変えることが非常に難しかった家族観に関した制度を、国会の中で議論できたことは日本社会にとって良いこと。家族観に関する法律や制度が変わるきっかけになれば」と語ります。税制改正大綱が決まるまでの活動を聞きました。(ライター・国分瑠衣子)

●たった1人で自治体に適用を求めたお母さんもいた

――19年度の税制改正では、未婚のひとり親に寡婦控除を適用することについて、自民党内から「(伝統的な家族観を崩すことにつながるため)未婚のままの出産を助長する」という反対論が根強く、寡婦控除の見直しまでに至りませんでした。配偶者と死別したり、離婚したひとり親と同じ内容の軽減策になった20年度の改正内容をどう評価されますか。

「検討の過程では、未婚のひとり親の寡婦控除の適用対象を『児童扶養手当受給者のレベルにすべき』という議論があったと聞いていますので、今回の改正で、年間所得500万円以下(年収678万円以下)の未婚のひとり親に一律に所得控除が適用されることは非常に良かったと思っています。

ただ、詳細に言うと、税制において完全に同等になったというわけではありません。寡婦控除は、扶養する人数が1人以上であれば、子どもの扶養に限らず、老親の扶養にも適用されます。今回、未婚のひとり親に適用される控除は、子どもの扶養のみで、老親の扶養は含まれません。また、収入が多い人は対象になりません。

20年度の税制改正で、もう一つ評価する点があります。これまで家族観に関する制度が変わることは非常に難しかったと思いますが、今回は伝統的な家族観を重んじると言われる自民党の中の議論で、『改正しよう』という意見が出て、制度が変わったということは、日本社会の中で良いことではないかと思います」

――国会で議論されるようになるまでの道のりが長かったと伺っています。

「未婚のひとり親への寡婦控除適用については、2009年11月に3人の未婚の母が日本弁護士連合会(日弁連)に人権救済を申し立てました。2013年に日弁連が、法の下の平等に反するという調査報告書をまとめ関係自治体に要望を出しました。それを受け私たちは自治体の議会に陳情を出しました。日弁連が要望書を出す前にも、岡山市、千葉市などに加え沖縄県宜野湾市や沖縄市などは、未婚のひとり親への保育料のみなし適用を始めていました。

私たちが寡婦控除適用を全国に広げようと、議会に働きかけた時に、議員の方が会派を超えて自治体に働きかけてくれました。また、川崎市と大阪市では、たった1人で自治体と交渉して、みなし適用を勝ち取ったシングルマザーもいます。数年で100を超える自治体が、保育料などで寡婦控除をみなし適用するようになりました。2016年に国土交通省が公営住宅法施行令を改正し、家賃に寡婦控除をみなし適用するようになり、2018年に厚生労働省が未婚のひとり親に対し、保育料など25施策について寡婦控除のみなし適用を始めました。今回の改正は、各党、さまざまな関係者が頑張られた結果だと思っています」

●大きなインパクトあった「高等教育無償化による54万円の差」

――20年度の税制改正大綱が決定する前の2019年9月、ヤフーニュース個人に「高等教育の無償化では、寡婦控除があるのとないのでは給付額に最大54万円の差が出る」という内容の記事を書かれました。説得力がある内容で、未婚のひとり親を寡婦控除の適用対象にする大きなインパクトがあったと思います。

「しんぐるまざあず・ふぉーらむでは毎年、子どもの教育費や支援制度についてまとめた『教育費サポートブック』を出しています。2020年4月から始まる高等教育の無償化では、対象になる学生には家計基準があり、住民税非課税世帯など三つに区分されます。同じ家族構成で、同じ世帯年収でも、寡婦控除が適用されるのと適用されない世帯では(授業料減免と給付型奨学金の合計額は)最大54万円の差が出てしまうことを指摘しました。教育費サポートブックを作っているからこそ詳細を書けたと思います。

所得に基づく制度は、全て差別が出るのです。しかし、年収200万円の世帯で給付に54万円の差がつくというインパクトは非常に大きかったと思います。親が婚姻して子どもを産んだか、婚姻せずに子どもを産んだかによって、子どもの高等教育の援助に影響してしまうというのは、あってはならないことです。国会議員の方にも説明して回りましたが、皆さん『理不尽なことは良くない』と理解してくださり、国会内で働きかけてくれた方は多かったと思います。説得力がある数字でした」

――19年度税制改正では、自民党内での反対意見が根強かったという報道もありました。20年度の税制改正の論議をどう見ていましたか。

「自民党の木村弥生議員、そして稲田朋美議員など女性議員のみなさんがほんとうに丁寧にひとりずつ税調のコアメンバーや党の重鎮に働きかけてくださいました。頭が下がります。『児童扶養手当の受給者のみに認める』という案が強く2019年12月10日の与党税制協議会の前日までどちらに転ぶか分かりませんでした。9日に自民党の女性議員が中心になり、未婚のひとり親の寡婦控除の差別なく適用するよう賛同署名を募り、140人分の署名を一日で集められました。そのパワーが税調を動かしたと思います」

●自分の意志で結婚を拒否したという人はほとんどいない

――決定した後に「自分の意志で未婚の母になった女性まで、税制で保護してあげる必要はあるのか」という評論家の方の意見もありました。

「未婚のひとり親は、誰かに生活の面倒をみてもらっている『お妾さん』と言われたことがありました。でも、扶養する財力がある男性は減っていますし、現実にはあまりいらっしゃいません。今回はさらに『自分の意志で結婚を拒否しているような女性を税制上保護する必要はない』という意見です。しんぐるまざあず・ふぉーらむでは昨年、シングルマザーの100人調査を行いましたが、未婚でひとり親になったのは『妊娠を告げると男性が去って行った』などの経緯が多く、自分の意志で結婚を拒否したという人は数人でした」

――今後、ひとり親の支援策として、国にどのようなことを求めていきますか。

「たくさんあります。昨年『シングルマザーサポート団体全国協議会』を立ち上げましたが、キックオフミーティングで政策提言と行動計画をまとめました。内容としては、今回の未婚のひとり親への寡婦控除適用をはじめ、児童扶養手当制度などの拡充と改善や、離婚調停裁判中などで別居中の母子に支援施策を講じること、仕事と育児の両立ができる支援施策などを求めています。児童扶養手当制度は現在、子どもが18歳になった最初の3月31日までですが、これを20歳の誕生日までに延長を求めたいですし、手当額も拡充が必要です。また養育費の支払い確保を進めたいですね。

日本は2019年の『ジェンダー・ギャップ指数』が153カ国中121位と不名誉な結果になっています。そのしわ寄せがシングルマザーの困難を生んでいるように思います。これから、女性の力が発揮できるように法制度が変わっていってほしいと思います」

【プロフィール】赤石千衣子(あかいし・ちえこ) 
NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長。当事者としてシングルマザーと子どもたちが生き生きくらせる社会をめざして活動中。著書に「ひとり親家庭」(岩波新書)がある。社会保障審議会児童部会ひとり親家庭の支援の在り方専門委員会参考人、社会福祉士、国家資格キャリアコンサルタント、東京都ひとり親家庭の自立支援計画策定委員。

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