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賃上げに必要なのは「雇用流動化と所得補償だ」森信茂樹氏が「新しい資本主義」の政策提言

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賃上げに必要なのは「雇用流動化と所得補償だ」森信茂樹氏が「新しい資本主義」の政策提言
森信茂樹氏

岸田文雄政権が誕生し「新しい資本主義実現会議」を立ち上げた。これまでの新自由主義の経済政策から転換し、成長と分配の好循環をもたらすことを掲げている。

大蔵省(現・財務省)主税局総務課長を務めた、東京財団政策研究所の森信茂樹研究主幹は「新しい資本主義に必要なのは、①雇用の流動化②職業訓練③所得補償の3点セットで人的資本を向上させること。そうすれば持続的な賃金アップにつなげることができる」と言う。中間所得層の変化や海外の例を聞きながら考えた。(ライター・国分瑠衣子)

●「新しい資本主義」は「規模ありきで目新しさが感じられない」

11月に政府が発表した「新しい資本主義」の緊急提言では、1980年代以降の新自由主義からの転換を目指し「令和時代の中間層復活」を掲げ、持続可能な資本主義を構築する必要があるとしている。分配なくして消費は盛り上がらない、消費は経済成長を支える重要な基盤という考え方だ。成長と分配の好循環と、コロナ後の新しい社会の開拓を柱にしている。

この岸田政権のスタンスについて、森信氏は「大きな理念を掲げて政策を組み立てる姿勢には賛同できる。でも具体的な内容や政策が乏しく、規模ありきの従来型の手法で目新しさが感じられない」と話す。

森信氏が提唱するのが①雇用の流動化②職業訓練③所得補償の3点セットで、人的資本を向上させることだ。日本的経営「三種の神器」と呼ばれる「終身雇用」のように、特定の企業に、長期にわたって勤め上げることが前提の社会から、雇用を流動化させる方向に転換し、成長産業を活性化しなければ、賃金アップや経済成長はあり得ないという考え方だ。

画像タイトル 全労連資料(https://www.zenroren.gr.jp/jp/housei/data/2018/180221_02.pdf)より

全労連「実質賃金指数の推移の国際比較」によると、日本は先進国の中でも実質賃金が下がり続けている数少ない国だ。森信氏は「賃金が上がらないのは雇用流動性が低く、特定の企業に長期にわたり勤め上げることを守りすぎているからだ」と指摘する。

雇用の流動化を進める具体策については「企業の解雇規制を緩和していくともに、勤労者の方も会社にしがみつくというメンタリティーを変え、不断にスキルアップを目指しながら自分に合った仕事を探す覚悟が必要だ」と話す。

●「雇用を流動化して、職業訓練の公的支援を強化すべき」

イギリスやスウェーデンなど欧州では、衰退産業から成長産業に労働者がシフトする時に、国が労働者の所得を補償しながら職業訓練を行っている。労働者がスキルアップして成長産業の仕事に就けるようにサポートする積極的労働政策と呼ばれるものだ。「国民が市場の圧力になすがままにされるのではなく、自立的に活動できることを目指している」(森信氏)。

似たような制度は日本にもある。1カ月10万円の給付金を受給しながら職業訓練を受ける「求職者支援制度」だ。離職して雇用保険を適用されない人などが対象で、無料でIT関連や医療事務、介護福祉といった分野の講座を受けて転職を目指す。しかし、制度利用のハードルが高く、活用している人は限定的だ。国の機関であるハローワークが所管しているため民間のような工夫がないという指摘もある。

森信氏は求職者支援制度の対象を、雇用保険を受け取っている人や自営業者などにも広げ、公的な下支えをしっかり行うべきとの立場だ。また民間に委託したほうがきめ細かな支援ができるとし「イギリスの場合は、国が民間企業に委託してしっかり職業訓練を行う。仕事をマッチングさせると、国から企業に補助金が支給されるため、企業も真剣に取り組む」。

財源はどうするのか。森信氏は「本気で社会保障について議論すれば、必ず負担の問題が出てきて消費増税の議論は避けられない。今はその問題から逃げている状態」と指摘する。

●「増税したからといって、支持率が下がるわけではない」

増税について、森信氏は興味深い例として、安倍晋三政権を挙げる。安倍・元首相は消費増税に消極的だったが、結局2回引き上げた。2014年4月と2019年10月の2回、それぞれ税率は8%、10%に引き上げられた。

森信氏は「1つの政権下で消費税率が計5%も上げられたのは前代未聞の画期的なことだ。消費税はこれまでにも年金や医療、介護、子育てなど社会保障に充てられてきたが、安倍政権は10%の引き上げの使途を教育にも広げた。代表的な例が幼児教育や低所得者世帯への高等教育の授業料免除だ」と話す。

大蔵省で消費税担当課長を務めた経験もある森信氏は「特に幼児教育の無償化はインパクトがあり、子育て世代は大きな恩恵を受けた。その結果、自民党は子育て世代からの支持率が上がった。30代の支持率は大変高い」と説明する。

●「看護師や保育士の賃上げは評価できるが、負担の議論も必要」

政府が11月19日に閣議決定した経済対策では、18歳以下への10万円の給付や、マイナンバーカードを持っている人には最大2万円分のポイント付与など、給付を重視した。財政支出は過去最大の55.7兆円になる。看護師や介護士、保育士の賃上げなど公的価格を見直しも盛り込んだ。

「看護師や保育士の賃上げは評価できる。ただしこれを持続可能にするには受益だけではなく、負担のほうも議論しなければならない」(森信氏)

このほか、政府は賃上げした企業に法人税を優遇する「賃上げ税制」の拡充も打ち出している。政府・与党は2022年度税制改正で、継続的に賃金が上がるように制度を変える方針だ。

森信氏は「現状の賃上げ税制は、適用要件が複雑でほとんど使われていない。そもそも赤字法人が3分の1が占める中で、効果は限定的だろう。財源があるのなら、勤労者には給付付き税額控除など直接所得補償したほうがいい」と話している。

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