会社負担のがん保険、従業員への100万円支給は非課税?知っておきたい税務の基礎知識
税金・お金

賃貸住宅建設・管理大手の大東建託が、2025年8月から、がんと診断された従業員に一律100万円を支給する制度を導入した。
この制度は、会社が保険料を負担し、がんと診断された全従業員(社会保険未加入者を除く)に、保険会社から100万円の保険金が支給されるもので、従業員の自己負担はない。経済的不安を軽減し、治療に専念できる環境を整えることが目的だという。また診断から2年経過後であれば、再発や転移での入院治療に対して、再度100万円が支給されるという。
同社は、この制度に先立ち、2025年4月からがん治療のための有給休暇の新設や、治療のための休職期間を最大24か月に延長している。
がんに罹患すると、治療費の負担が長期にわたり続くことも多いため、従業員にとっては心強い制度と言えるだろう。また、会社側にとっても、魅力的な福利厚生を備えることで、従業員のモチベーション維持や採用力アップにつながるなど、様々なメリットが期待できる。
従業員・会社の双方にメリットがある一方で、保険料や保険金の税務上の扱いはどうなっているのだろうか。田中紳太郎税理士に聞いた。
●全従業員を対象とする掛け捨て型保険なら、福利厚生費として損金算入できる
ーー上記のようなケースの場合、一般的に、会社が保険料を支払う場合は経費(損金)になるのでしょうか。経費となる場合は、どのような勘定科目で計上するのでしょうか。
全従業員を対象とする掛け捨て型保険(返戻金なし)であれば、会社が負担した保険料は「福利厚生費」として損金算入が可能です。
ポイントは「特定の役員・従業員に偏らず、全員が対象」であることです。全従業員共通の福利厚生と認められることで、経費処理が適正となります。
●従業員が受け取る保険金は、条件を満たせば非課税
ーー保険会社から従業員が受け取る保険金について、税務上の扱いはどうなるのでしょうか。
従業員が受け取る保険金については、契約者を会社、被保険者を従業員、受取人を従業員本人とする掛け捨て型保険であれば、保険会社から従業員へ直接支払われた給付金は「所得税法上の非課税所得」に該当するため課税対象とはなりません。
また、会社も課税対象外という扱いとなります。
●福利厚生として保険を導入する際の注意点は?
ーー従業員向けの保険に法人が加入する際の注意点をお教えください。
前述のとおり、法人が従業員向け保険に加入する際は、掛け捨て型で全従業員を対象とすれば、保険料は福利厚生費として損金算入が可能です。
ただし、一部の役員・従業員であるなど、対象が限定されると給与課税のリスクがあります。また、掛け捨て型保険ではなく返戻金がある場合は、法人として資産計上が必要となる点にも注意が必要です。
なお、病気や災害に対して従業員が受け取る給付金は非課税ですが、死亡時や退職時に支払われる給付金は、相続税や退職所得課税の対象となる場合があります。
そのため、契約者・被保険者・受取人を明確に設定し、福利厚生目的として制度設計することが重要です。
【取材協力税理士】
田中 紳太郎税理士
神奈川県川崎市生まれの27歳。慶応義塾大学を卒業後、デロイトトーマツ税理士法人に入社し、大企業の国際税務を担当。その後2024年に独立開業し、小規模法人および個人富裕層向けに経営支援と節税提案を行う。サーフィンや観葉植物が趣味。
事務所名 :田中紳太郎税理士事務所
事務所URL:https://www.gw-tanaka.com/