パナソニック、三菱電機など早期退職を募集。退職金にかかる税金と会計処理のポイントを税理士が解説
税金・お金

パナソニック ホールディングス(HD)株式会社は、構造改革の一環として計画している1万人規模の人員削減のうち、2025年10月に、グループ傘下の事業会社「パナソニック株式会社」で早期退職の募集を行うことが報道によりわかった。
対象となるのは勤続5年以上の40〜59歳の社員や再雇用の社員などで、応じる社員には退職金を最大で数千万円、割り増しするという。募集人数は非公開となっている。
三菱電機株式会社は、53歳以上の正社員らを対象に早期退職者を募集すると発表。期間は12月15日から2026年1月9日までの予定で、こちらも通常の退職金に加えて、特別一時金を上積みして支給するという。また三菱ケミカルグループ株式会社も同様に、グループ傘下の三菱ケミカル株式会社において国内の満50歳以上かつ勤続3年以上の社員を対象に、2025年11月から希望退職者を募ると発表した。構造改革費用として、2026年3月期に約300億円を非経常損失として計上する予定だ。
東京商工リサーチによると、2025年1〜8月までの上場企業の「早期・希望退職」の募集人数が1万人を超え、2024年の年間募集人数をすでに上回っている。募集企業の6割は黒字であり、どんな企業でも早期退職を募集する可能性があると言える。その際に注目したいのは割増退職金である。
割増退職金などが提示されると、早期退職に応じるべきか悩む方もいるだろう。将来設計のため、退職金が提示された額面からどのくらい税金が引かれるかを把握しておくのが良いだろう。
また、企業側にとって退職金は多額の出費となるが、どのように会計処理を行うのが適切なのだろうか。米世毅税理士に聞いた。
●5,000万円支給の場合、退職金と給与で手取り額の差は1,600万円以上に
ーー給与と退職金での手取り額はどのくらい違うものなのでしょうか。退職金5,000万円(勤続30年)として、仮に同額を給与として支給された場合での違いを教えてください。
同じ5,000万円でも、退職金と給与では手取り額が大きく異なります。なぜなら退職金は、退職所得控除があるほか、所得税の課税対象額が半分になるなど、税制上、大変優遇されているからです。
【退職所得控除】
・勤続年数20年以下…40万円✕勤続年数(最低80万円)
・勤続年数20年超…800万円+70万円 ✕ (勤続年数ー20年)
まず、勤続30年の方が退職金5,000万円を受け取った場合、手取り額は約4,392万円です。
一方、給与の場合は、社会保険料なども引かれ、概算で手取り額は約2,784万円となり、その差は1,600万円以上にもなります。早期退職を検討する際には、将来設計のために、手取り額を把握することが重要となります。
●早期退職金は「特別損失」として処理するのが適切
ーー企業側は、早期退職金を支給した際に、どのように会計処理を行うのが適切でしょうか。
企業が支払う早期退職金は、会計上「特別損失」として処理するのが適切です。これは、構造改革などの臨時的で多額な支出であり、企業の経常的な活動で生じる「販売費及び一般管理費」とは区別するためです。
これにより、投資家などが企業の本来の収益力を正しく判断できます。また、特別損失に計上した金額は、税務上も損金として認められるため、法人税の負担を軽減する効果もあります。
【取材協力税理士】
米世 毅(よねせ たけし)税理士
資生堂本社、資生堂パーラーの経理部門に勤務後、税理士米世毅事務所を開業。会計・税務の専門知識に加え、事業会社で培った視点と現場対応力を駆使し、税務や財務の複雑な課題に対して実践的な解決策を提案。企業経営者であるクライアントの視点を理解しつつ、よりよい未来のための戦略を共に考えることを使命としている。
事務所名 :税理士米世毅事務所
事務所URL:https://tax-yonese.jp/