「所持金100万円」身元不明の2遺体 最期の地をたどる
税金・お金

100万円もの大金を持ったまま、男性2人が謎の死をとげた。遺体は身元がわからない「行旅死亡人」として火葬され、2018年の官報に掲載されたが、有力な手がかりは寄せられていないという。
1人は昔ながらの雰囲気を感じられる東京都台東区の住宅街、もう1人は異国情緒あふれる横浜市中区のアパートで見つかった。記者は官報に掲載された情報をたよりに、この2人が最期に過ごした地に足を運んだ。
●ゆったりと時間が流れる街
はじめに訪れたのは東京都台東区。東京メトロ日比谷線の入谷駅で下車し、しばらく歩くと、下町の雰囲気を感じる街並みが広がっている。昔ながらの店舗が並び、真昼間だというのに閉まっている店も少なくない。道路にだれもいない時間もあった。
都会の喧騒を忘れさせてくれるような静けさを感じるこの地で、いったい何があったのか。1月31日付の官報によると、ここの住宅街で40歳〜60歳とみられる男性が現金107万5810円を所持したまま亡くなった。
2017年11月7日午前3時ごろに飛び降り自殺をはかり、自ら命を絶ったものと推定されているが、他にめぼしい情報はないという。
台東区福祉課の担当者は「警察においても有力な手がかりは見つかっていないと聞いています」と取材に答えた。
●高級感漂う街の行旅死亡人
つぎに足を運んだのは、横浜市中区。元町・中華街駅で降りてすこし歩けば、観光スポットとして知られる山下公園にたどり着く。ベンチに座ると、青い海を一望できる。
付近に立ち並ぶマンションはどれも品があり、高級感が漂う。道路を走る高級外車も少なくない。丘の上に足を運べば、洋風な高級住宅街。異国情緒あふれる街だ。
3月26日付の官報に掲載されたのは、110万5587円を持った70歳前後とみられる男性の遺体が、2017年9月1日に横浜市中区のアパートで見つかったということ。死因は肝硬変だとわかったが、残された保険証などをもとに照らし合わせても身元特定には至らなかったという。
●100万円以上の所持金、火葬費用などに
2人が残した100万円をこえる所持金は、その後どうなったのか。
行旅死亡人の取り扱いについて規定する「行旅病人及行旅死亡人取扱法」11条によると、所持金は葬祭費などの費用にあててよいことになっている。
台東区では火葬にかかった費用は20万6000円で、この費用には残った所持金をあてた。
横浜市中区生活支援課は取材に、「このケースでは、遺留金(所持金)の範囲内で葬祭費などを充当できました。残金は規定にもとづいて保管しています。相続人があらわれた場合はお返ししますが、あらわれなければ基本的に永久保管となります」とした。