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持続化給付金と持続化補助金…乱立する経済対策「ワンストップの支援が必要」、酒井克彦教授が指摘

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持続化給付金と持続化補助金…乱立する経済対策「ワンストップの支援が必要」、酒井克彦教授が指摘
酒井克彦教授(提供写真)

非常に分かりづらい補助金・支援金・給付金問題。税理士などの専門家からは「申請は割と楽」という声も聞こえますが、どうやって情報をとればいいのか、どうやって申請をすればいいのか、知識がない人間にとっては容易ではありません。スムーズな問題解決につなげるため、「専門士業が連携して、どの専門家に相談しても問題が解決できるようにしてほしい」と中央大学法科大学院の酒井克彦教授は強調します。コロナをめぐる経済対策のあり方について聞きました。(ライター・拝田梓)

●持続化「給付金」と持続化「補助金」、何がなんだかわからない

ーー行政が出している助成金については、数が多くて非常に混乱します。

各省庁や自治体任せになっていて、政府として大きな施策、「幹」を示しての交通整理ができていないように感じます。政府も暗中模索の状態で施策を打っていかないといけないので同情するところも多々ありますが、施策が逐次的であることは否めません。

例えば、経済産業省の支援策には「持続化給付金」があります。そして、「生産性革命推進事業」という平時からある補助金がコロナにも使える形になっています。この事業の中に、制度変更等に対応するための「ものづくり・商業・サービス補助金」、販路拡大などに対応するための「持続化補助金」、テレワークの導入などに使える「IT導入補助金」があります。

さらに、ITやテレワーク導入については、経済産業省のほかに、厚生労働省管轄の制度として「働き方改革推進支援助成金」というものもあります。その上、都道府県ごとの補助金があって、例えば香川県丸亀市には「うどん店」に対する補助金があったりもします。

これだけ混在していると、整理の必要性があることはいうまでもありませんよね。本来もらえるはずの補助金や給付金をもらい損ねているのではないか、自分がどのチャンスを見逃しているのか、気が付かない可能性があります。

ーー省庁の縦割り行政でこんなに補助金・助成金がややこしくなっているんでしょうか。

セクショナリズムの問題はあるでしょう。

政府の情報に対するリテラシーというものを国民全員が等しく持っているわけではありません。これから先は、制度の申込み期限が切れる給付金も出てきますし、名前が変わった類似の助成金なども出てくるかもしれません。時間が経つにつれて運営が外郭団体に降りたりすることもあるでしょうし、さらにややこしくなると思われます。

すでに、「持続化給付金」の給付を、大手広告会社に関係のある一般社団法人が受託しているなどと報じられて、話題になっていますよね。再委託の問題も注目されています。

ややこしくなればなるほど、不安に乗じて、詐欺などの悪さをする人たちも出てきます。

今、人と会って話ができないことから、「あれは嘘、詐欺だ」という情報が伝わりにくくなっている一方で、SNSが発達した中で、デマ情報が急速に広がる恐れもあります。東日本大震災の時以上に情報の出し方を考えなければいけないかもしれません。

●各士業の専門家が連携して、ワンストップで支援を

ーー利用しやすい補助金にするには何が必要でしょうか。

東日本大震災の時に行ったように、まずは行政の方で受付窓口を一つにして、そこから個々の担当に振り分けるということが必要ではないでしょうか。ワンストップサービスの行政窓口を早急に立ち上げるべきだと思います。これは今からでも遅くはありません。

それに加えて、各士業の専門家がそこに連携することを提案したいですね。士業全体として総合病院になるようなイメージです。

ーーそれは、業界として互いに案件を繋ぐということですか。

例えば、税理士の場合、連携する社会保険労務士がいないときは、所属する税理士会に相談したら繋いでもらえるルートを作るとかは、行政が関わらなくてもできるのではないでしょうか。

もちろん、既にそういった連絡網みたいなものは個々の現場レベルで出来上がっていると思いますが、もっと本質的に士業の世界が全体として取り組んではどうでしょうか。

行政も必死で取り組んでいるとは思いますが、政府の手が回らないところは専門家に期待せざるを得ないと思うのです。その時に、専門家同士でぜひ協調しながらやってほしいですね。どの専門家がどの領域を担うかという、それぞれの業際問題があるかと思いますが、非常時に自分の庭先だけ整理していては話が進みません。

専門家は情報を持っており、情報処理能力に長けているので、この混乱の中で主導的役割を果たしてもらいたいのです。

確かに、業際の議論は大事です。自分の領域に責任を持つというのは専門家の専門家たるゆえんです。先ほど行政の窓口を1つとしてワンストップサービスを図るべきと申し上げましたが、専門家も共同歩調をとって、士業のワンストップ支援をできるようになってほしいですね。

●持続化給付金をめぐる士業の「業際問題」

ーー業際問題って具体的にどういうものですか。

例えば、「持続化給付金」の申請自体は行政書士に限定されています。日税連がホームページで示していますが、税理士は有償で申請手続きをしてはいけません。ですが、書類の確認等を行うことは有償でできるとされています。

さらにややこしいのは、税理士法2条《税理士の業務》には、税務代理、税務書類の作成、税務相談などは税理士の無償独占であると定められています。

そのため、行政書士や社会保険労務士は無料であっても税務のアドバイスをしてはいけません。

「持続化給付金」でいえば、例えば、スタジオミュージシャンが、給与ではなく請負で所得を得ているとします。これを雑所得で申告していると、「持続化給付金」はもらえなかったのですね。当初「持続化給付金」を申請できるのは、事業所得で申告している人だけとされていたからです(もっとも、この取扱いは経済産業省において見直されたと報道がありました。)。

少なくとも見直し前には、修正申告を行って雑所得から事業所得に変更する必要があったのですが、所得区分の変更だけでは修正申告をすることはできません。あくまでも所得金額や税額が増えるときしか修正申告を行うことはできないからです。

そのため、雑所得の計算において含めていた経費を自己否認して修正申告を行い、所得区分を事業所得にするという裏技みたいなことができると推奨している専門家もいたそうですね。

でも、このようなことを行政書士がアドバイスすると、税に関する助言なので問題になります。税務相談や税務申告は税理士の無償独占ですから。無償独占というのは、報酬をもらわなくてもその業務をやってはいけない、ということです。

持続化給付金に関していえば、例えば、売上計上をこれまで発送日基準で処理していたところ、これを検収日基準に切り替えることで、短期的には前年に比して売上減少を認識することができますが、このような処理を適法にアドバイスする専門家はいったい誰なのかなどといったことが問われることになるわけです。

しかし、この申請は行政書士の分野、あの申請は社会保険労務士の領域、そしてこの相談は税理士だけといった専門領域があることなど、一般の人は絶対に分かりませんよね。

そのような意味で、繰り返しになりますが、業際問題を乗り越えて、専門家が協力して士業のワンストップサービスをできるようになってほしいと思うのです。

ーー一部では不正受給の問題も取りざたされています。

先ほどの会計処理の変更などの問題等も含めて、不正受給について注意しなければいけないことは間違いないですね。だからこそ、適格な専門家が入らないといけないと考えます。

こういった補助金等は、事後にチェックするのが行政、事前にチェックするのが専門家です。専門家は、問題点を集約して、システマティックにできるようなガイドラインを行政に働きかけ、解決策を講じるべきではないでしょうか。

●回復後、20年、30年かけて続く「増税のシナリオ」

ーー政府の経済対策をどう評価しますか。

やや厳しく言えば、焚火が消えないように小枝をくべているような感じです。単発支援を矢継ぎ早にやっている状況で、骨太な支援がないように思われます。例えば、消費税を5%に減税するなどといった大きな幹となるような思い切った減税が必要ではないかと思っています。

ーーいまこうやってじゃぶじゃぶ予算を使っているわけですが、この後、絶対にやってくる増税のシナリオってどうなるんでしょうか。

リーマンショックの際は、中国という成長のけん引役がいたので数年で復興が実現しましたが、今度は世界中の実体経済に水を掛けてしまった状態なので、火をつけるには相当時間がかかりますね。

今回、経済に打撃を与えたものは2つあります。1つは新型コロナウイルスの感染拡大そのもので、インバウンドがなくなって需要が減りました。

もう一つは新型コロナウイルスが流行らないようにするための自粛政策で、デマンドサイドのみならずサプライサイドがやられました。製造ラインのストップにより、大変なことになっているわけです。

日経平均が上がっているという反論があるかもしれません。ただ、あくまでも個人的見解ですが、このような時期の株価というものはとても不安定なのではないかと思います。日銀が打ち出す政策に株価が敏感に反応している状況にあって、本来の景況を反映したものといえるか否かについては疑問でもあります。多数の企業の業績が軒並み下がっていることは、火を見るより明らかです。

もっとも、IT産業や物流の一部には需要がありますから、そのような分野の株価はしっかりと上がるでしょうけれど、そうでないところは大打撃を受けているのは言わずもがなです。復興には相当時間がかかるとみるのが自然でしょう。

少しずつ、災害復興特別増税みたいなものを何十年かけてやっていくのだと思います。大学の学生には、「死ぬまで復興増税を払い続けることになるよ、社会に出てから20年、30年は払い続けるしかないよ」という話をしていますが、そもそも東日本大震災の復興特別税の負担もありますから、厳しい状況が続くでしょう。

ーーそれはどういうかたちでしょうか。

所得課税、法人課税は労働や生産に対して逆インセンティブとして働きますから、復興期に増税するのは選択肢としては取りづらいですね。それでも、今の復興特別税のような手当をするのか、あるいは、それが可能かどうか不安ではありますが、復興増税とは銘打たずに「見えない化」して既存の優遇的措置を極力削除するとか法人税の留保金課税の適用を広げるなどして溶け込ませる方法でやっていくのか、消費税の増税に手を付けるのか、今後の施策を注視していく必要がありますね。

【プロフィール】
酒井克彦(さかい・かつひこ) 中央大学法科大学院教授。税務大学校等でも教鞭をとる。専門は租税法。近著は『裁判例からみる税務調査』(大蔵財務協会)。

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